映画評「鏡の中にある如く」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1961年スウェーデン映画 監督イングマル・ベルイマン
ネタバレあり

一時期イングマル・ベルイマンの作品が衛星放送によく出て大半を録画して保存してあるが、本作はNHKやWOWOW、民放には出ていないと思う。そんな予感があったのか、30年以上前に高いビデオを買った。15000円くらいしたが、画質が甚だ良くない。内容が解るだけである。ベルイマンの作品の鑑賞においては画面の美しさも重要なので残念だが、仕方がない。

作家グンナール・ビョルンストランドが、医師マックス・フォン・シドウと結婚している娘ハリエット・アンデルソン、思春期後期の息子ラッシュパースコードを連れて別荘に来ている。ハリエットは精神分裂気味で神を見出したりもするが、父親はそれさえも作品の素材にしようとしている。
 それを記した日記を病気の為か異常な聴力を発揮して眠れない彼女が盗み見し、そのショックで発作を起こす。その間に父親との関係がいま一つうまく行っていない息子が姉と関係を持ってしまう。
 心身耗弱した彼女がヘリコプターで病院へ運ばれた後、父親が「愛は神の存在を証明するものか、若しくは神そのものだ」と言い、それを聞いた息子は父のその言葉に救われる気持ちを抱く。

【神の沈黙】三部作の第一作だが、僕は最後の「沈黙」(1963年)が一番ピンと来る。一番地味な「冬の光」より本作の方が僕には解りにくい。ベルイマンの作品は、キリスト教文化圏のキリスト教徒でないと直観できないところが多く、本作など正にその典型ではないかという気がする。

神の声を聞くなどする人々は時に精神病扱いされたり、場合によって魔女の名目で処刑されたりしてきたわけだが、本作のヒロインの場合、(論理の順番として)精神の病気だから神を見出したのかもしれない。科学的には後者だけが真理であり、見方によって、それに即するベルイマンの神への冷めた感情を感じ取れるところがある。
 その意味で、作家に徹して冷淡至極だった父親が「愛は神の存在を証明するものか云々」と発言することは、(息子は勿論)観客にとって救いになり解りやすくなる同時に、曖昧な印象をもたらす。聞くところによると、ベルイマン本人もこの最後の場面は余分だったと認めているという。

ベルイマンは、随所に登場人物に愛(性)や死に関連する発言をさせているが、彼にあってこれらは常に神の問題に絡む。僕は、本作に限らず、少なからぬ作品を見て、この類稀なる巨匠は神の存在を疑ってもその存在を否定しきったことはないと感じているのだが。

今のところ、本作をきちんと分析できるだけの理解に達していないので、一般論に逃げることにした。悪しからず。僕の趣味として画面分析などをもっとしてみたいのだが、僕の持っているソフトの画質ではそんな気分が起こらない。もう少し綺麗な画質のものが手に入ったら再挑戦しましょう。

ベルイマンはやはり祖国の偉大な劇作家ストリンドベリに非常に近い。

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この記事へのコメント

vivajiji
2018年02月01日 13:50
今でこそkindleなんぞで読む機会を持って
おりますが手軽なそれより単行本への思慕は
捨てがたく以前「オデッサファイル」の古本をば
購入した折、ページがおおよそチョコレート色で
やっと読めるという大古書にぶちあたりましたが、
まず映像ありきの映画で劣化ビデオは辛いことこの上ない。
30年前でしたらそのくらいの価格したんですね。

とっくに退会しましたが有料チャンネルで本作は
観ました。余り印象に残っていないんですよね。

>存在を疑ってもその存在を否定しきったことはないと

まさにその通り、と思います。
その煩悶が根底にあって優れた映像表現と共に
深淵かつ生々しい人間観察のベルイマン世界なのですね。
オカピー
2018年02月01日 19:09
vivajijiさん、こんにちは。

>ページがおおよそチョコレート色で

図書館で、とんでもなく古い本を書庫から出してきてもらうと、そんなことがあります。そうした本は大概、塩抜けして異様に軽く、かつもろく、ちょっとしたことで破れてしまう。いくら誰も読まないだろうとは言え、借りたものですから、ヒヤヒヤするなんてことも。

>まず映像ありきの映画で劣化ビデオは辛いことこの上ない。

そうなんです。
ベルイマンの映画は、シャープできちんとハイキーの映像で観ないと、殆ど意味をなしません。

>まさにその通り

有難うございます。
姐さんはクリスチャンだから僕らよりはベルイマンが解ると思いますが、キリスト教との関連は別にしても、ベルイマンの人間観観察・観照の素晴らしさ。

モカ
2021年01月25日 20:48
こんにちは。

>ハリエット・アンデルソン

 どこかで観た顔だと思ったら「不良少女モニカ」さんでした。
 というか、「不良少女モニカ」ってベルイマンだったんですね。大昔に観てすっかり忘れていました。
 もう一人「ムシェット」という少女もいましたね。ヨーロッパ映画における「2大陰気臭い少女」(笑)あ、ロバを飼ってたあの子もええ勝負やったか・・ロゼッタもいた・・陰気な少女は結構たくさんいますね。 すいません、話がそれてしまいました。

 ベルイマンはやっぱり私には無理みたいです。こういうのを鑑賞するインテリジェンスが根本的に欠落しています。
 でももう少し頑張ってみますので励ましてください!

 今回U-NEXTで鑑賞しましたが画像はきれいでしたよ。
 室内からドアの外が見えるような場面は静止画像をプリントしてポスターにしたいなぁ、等と考えてしまいました。
 感想というほどの感想も沸いてこないのですが、「尼僧ヨアンナ」と根本的な部分では似ているのかな? と思った次第です。
 
 
オカピー
2021年01月26日 14:53
モカさん、こんにちは。

>どこかで観た顔だと思ったら「不良少女モニカ」さんでした。

不良少女モカならぬモニカさんなのでした。ある時期のわが母親を思い起こさせたるもするハリエットさんでした。僕はかつてテニス選手のエドベリ(エドバーグ)に似ていると言われたこともあり、実はスウェーデン人という噂も(ありません)。

>もう一人「ムシェット」という少女もいましたね。

ロベール・ブレッソン。この間清水宏監督「小原庄助さん」という戦後すぐの映画を観ていたらロバが単独でとぼとぼ歩く姿があり、「バルタザールどこへ行く」を思い出しました。ムシェットにもロバがいましたか。ロベール・ロバ好き・ブレッソンなのかな(笑)

>ベルイマンはやっぱり私には無理みたいです。

多分これはベルイマンの中でも解りにくい作品のトップ・クラスなので、もう少し解りやすいのもありますのでどうぞ。
 チャンスがあれば初期から中期のコメディー群がお薦め。「夏の夜は三度微笑む」なんてのは、「ゲームの規則」みたいな「真夏の夜の夢」系列のお話で楽しいデス。同工異曲のウディ・アレン「サマーナイト」より面白いデス。
「悪魔の眼」なんてのも嫌いじゃなかったなあ。

>U-NEXT

良いなあ。綺麗な画面で観たいけれど、財政上の都合で、間口を広げるのは暫くお預け。

>「尼僧ヨアンナ」と根本的な部分では似ているのかな?

そうかも。大分前にフィルムセンターかどこか映画館以外の施設で観ましたが、大昔のことで詳細は忘れました。
モカ
2021年01月26日 20:29
こんばんは。

広隆寺の弥勒菩薩に似ているといわれた事のある元不良少女モカです。 昔、美術の時間に隣の席の男子が教科書の弥勒菩薩の写真をみて「モカさんに似てるわ」と言うとりました。(美的センス皆無な奴でした。笑)
個人的には中宮寺の弥勒菩薩のほうが好みですけどね。
冗談はほどほどに致しまして、今結構やる気が出てきましたので(笑)ベルイマンに挑戦し続ける所存でございます。
色々ご教示くださいませ。

U-NEXTはファミリーアカウントといって兄弟や友達4人までとシェアできるので4人なら一人500円の負担でいけますよ。
ポイントがたまってくるシステムなので有料のものもポイント消化でみられるのでお得かと思います。 
うちは子供世帯にシェアしてあげようか?と持ちかけましたがアマゾンだけで手一杯だと断られてしまいました。子育て世帯は忙しいですものね。
オカピー
2021年01月27日 09:27
モカさん、こんにちは。

>広隆寺の弥勒菩薩に似ているといわれた事のある元不良少女モカです。

へえ、それは良いですよ。弥勒菩薩は、確か切手にもなりましたね。
取引先の韓国人社長が、阿修羅像にそっくりだなあと思っていましたよ。阿修羅像は半島の人が作ったのかな?とも。

>U-NEXTはファミリーアカウントといって兄弟や友達4人までとシェアできる

興味深いですが、僕の家族・兄弟や友達に映画好き居らんのでなあ。友達はともかく、同じ血が流れているはずの一族に一人もいないのは何故?

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