映画評「スティーブ・ジョブズ」(2015年版)

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2015年イギリス=アメリカ合作映画 監督ダニー・ボイル
ネタバレあり

2013年に同じ邦題(原題はJobs、本作はSteve Jobs)の作品が作られている。製作年度も近いので後年ややこしくなるが、13年作がスティーヴ・ジョブズ個人の沿革を並べただけの大凡作であったのに対し、ダニー・ボイルが作ったこちらは秀作である。良い映画はこうして作るというような見本と言うべし。

こちらの特徴は1984年、1988年、1998年における発表会の場に限った舞台劇のような構成にし、その全てに彼が長いこと認知してこなかった娘リサを絡め、最終的に普遍的な親子の映画に収斂していくこと。これが実に上手い。ジョブズの業績以上に彼の人間性に迫り、しかも、彼が何故リサを認知してこなかったのかぼんやりと解る仕組みなのである。

人間嫌い的で高慢な性格ぶりは13年作と同じだが、自分が養子であり、それもすんなり決まった養子ではないことがジョブズの性格構築に寄与し、どうもその出自がリサの認知を遠ざけさせたのではないかと思わせるものがある。そこに彼の代名詞でもある“現実歪曲”の理屈を絡ませたのが巧妙で、この言葉と概念をよく理解するマーケティング担当の美人ジョアンナ・ホフマン(ケイト・ウィンスレット)を二人を繋ぐ狂言回しとして上手く機能させている。

そして終盤、彼がそれと知らせず中近東出身の実父と会っていることをCEOを巡って競い合ったジョン・スカリー(ジェフ・ダニエルズ)に明かし、最終的にリサを完全に受け入れる幕切れに至る親子をめぐる二重の“良い話”が波状攻撃的に感動を増幅する。「ソーシャル・ネットワーク」も書いた脚本家アーロン・ソーキンは実に才気煥発であると感心した次第である。

その脚本をダニー・ボイルが実に上手く生かしている。カットを細かく切るかと思えば、複数の人物を切り返しではなく移動撮影で繋ぐ相対的な長回しも使うといった手法で映像にメリハリを付け縦横無尽に処理している感じがある。最後までボイルと知らずに観ていたが、さすが。

ジョブズを演じるマイケル・ファスベンダーも相当気分を出している。

「ヴ」表記が定着(復権と言うべきか?)しているので、スティーよりスティーにしたほうが良いな。

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  • スティーブ・ジョブズ★★★

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