映画評「本能寺ホテル」

☆☆(4点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・鈴木雅之
ネタバレあり

信長協奏曲」というのが作られたばかりなのに、また似たようなものが作られる。【どんぐりの背くらべ】の出来栄えと言うしかないが、大騒ぎしすぎないこちらのほうが好感は持てる。

会社の倒産で失業したのに付け込まれて平山浩行と結婚することになった無職・綾瀬はるかが、彼の父親の金婚式に参列する為に京都に行き、レトロな本能寺ホテルに投宿することになるが、店頭で買った金平糖をかみエレベーターに乗って降りると、何とそこは何故か“本能寺の変”前日の本能寺である。
 信長(堤真一)が平和を求める理想的な為政者であると知った彼女は、現在と過去とを往復しながら、彼に明智光秀が謀反を起こすことを告げ、歴史を変えたと悩むが、信長はそのまま討たれる道を選ぶ。それが歴史力学と判断するのである。
 過去から帰ってきた彼女は、彼から「自分は失業に付け込んで結婚しようとした」と結婚撤回を申し込まれ、歴史の教師になることを決める。

思うに、彼女は歴史の教師になる資格がない。信長に「江戸から来た」と言ったり「戦国時代は怖い」と言ったりするのは歴史教師失格である。
 何故なら、家康が幕府を作る前の江戸は武蔵国の人口数万の小都市であった。京都にいる信長にピンと来るとも思えない。「武蔵から来た」と言うべきである。また、半ば独り言とは言え、「戦国時代」はその時代に生きている人には通じない。明治以前の「~時代」は明治以降の学者が作った概念であるから、信長が自分たちが「戦国時代」もしくは「安土時代」に生きている観念などない。
 「大奥」(2010年)における人間学の観念を全く欠いた出鱈目な設定より大分マシとは言え、現在の常識と過去の常識とのずれで可笑し味を生む本作のようなジャンルにおいて、その常識自体に歪みがあっては可笑し味が出て来ない。本作で言えば、信長が「江戸? それはどこであるか?」などと言わせなければ面白くならないのである。

この手の作品で一番疑問に思われるのは、言葉が問題なく通じてしまうことである。現代人は彼等の言葉をある程度理解できるにしても、過去の人が現代人の言葉をすらすら解するとは思われない。
 ギミックを駆使する軽量級作品でそれを指摘するのは一見野暮だが、常識のバッティングもしくは常識のずれをメイン・ディッシュとして味わわせる作品だからこそ敢えて言うのである。

映画論的にそんなことを考えているとバカバカしくて見る気も失せるが、それは措いておいて、騒ぎの末に出て来る結婚の破談も首を傾げさせる。「やりたいことを探す」が主題なので破談は良いにしても、“彼”から破談させてしまうのは平仄が合わない。彼女から言わせるべきである。

高校生の頃TVの映画を観ていて色々と批判していたら、兄貴に「娯楽映画にそんな理屈は必要ない」と言われた。実際には逆で、作者の感性を見せる芸術映画に理屈は必要でなく、観客が楽しむ為にお金を払う娯楽映画こそ理屈・理論は必要なのである。

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  • 『本能寺ホテル』

    Excerpt: □作品オフィシャルサイト 「本能寺ホテル」□監督 鈴木雅之□脚本 相沢友子□キャスト 綾瀬はるか、堤 真一、濱田 岳、平山浩行、田口浩正、風間杜夫■鑑賞日 1月15日(日)■劇 場 TOHOシネマ.. Weblog: 京の昼寝~♪ racked: 2017-11-17 12:29
  • 本能寺ホテル ★★★・5

    Excerpt: 「プリンセス トヨトミ」の鈴木雅之監督と綾瀬はるか、堤真一が再びタッグを組んで贈る歴史エンタテインメント。ひょんなことから戦国時代に迷い込んだ現代人の女性が、織田信長と心を通わせ、“本能寺.. Weblog: パピとママ映画のblog racked: 2017-11-17 23:00
  • 『本能寺ホテル』('17初鑑賞04・劇場)

    Excerpt: ☆☆☆★- (10段階評価で 7) 1月18日(水) OSシネマズ神戸ハーバーランド スクリーン7にて 12:40の回を鑑賞。 Weblog: みはいる・BのB racked: 2017-11-20 12:50