映画評「鷲は舞いおりた」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1976年イギリス映画 監督ジョン・スタージェス
ネタバレあり

映画が映画らしかった時代の戦争サスペンスである。

ムッソリーニの救出に気を良くしたヒトラー(ここまでは実話)が今度は敵国首相チャーチルを誘拐しようと企む。
 作戦を主導するのはヒムラー(ドナルド・ブレズンス)だが、半ば空想物語だったのに勝手に具現化するのはラードル大佐(ロバート・デュヴォール)で、ユダヤ人女性を助けたかどで死刑判決を受けたシュタイナー大佐(マイケル・ケイン)とその小隊に白羽の矢を立て、英国を敵とするIRA闘士デブリン(ドナルド・サザーランド)を南ア出身の女性スパイ(ジーン・マーシュ)と組ませて、チャーチルが訪れる村に待機させる。
 やがてシュタイナー隊がポーランド兵に成りすまして連合軍として村に落ち着くが、兵隊の一人が運河に落ちた幼女を助けた際に下に忍ばせていたドイツの軍服が表れた為に計画に支障が生じ、教会に人質をとって立てこもる。これにデブリンと恋仲となる村娘(ジェニー・アガター)などが絡んで、サスペンスを盛り上げていく。

なかなか評判だったジャック・ヒギンズの小説をベテランのジョン・スタージェスが映画化していて、幾つか気に入らない点があるが、Allcinemaの総評よりは遥かに良い作品と思う。
 気に入らないのは、言語の問題である。映画の中でドイツ人が英語を話しても良いとは思っているが、「バルジ大作戦」(1965年)でも指摘したように、複数の国民がまたがる映画まして言語自体が話の要素となる国際スパイ映画ではどうもしっくり来ない。潜在力ほどスリルを感じにくくなる。
 また、彼らの正体がばれるのが自ら着込んだドイツ軍服というのも気に入らない(原作ではヒムラーに強要されるらしく、それならば序盤で示された反権力者的な立場において皮肉な意味が出てくる)。ケインの大佐が序盤で示した騎士道精神の一環として考えることができないこともないが、これではそれより先に間抜けな印象が醸成されてしまう。

しかし、全体としてはこの騎士道精神がなかなか魅力的で、彼らは決してヒトラーの野望の為に戦っているのではなく、ひたすら愛国的であり、敵国人と言えどもプロの軍人以外は決して巻き込まないよう尽力するのが気持ち良い。
 そう考えれば、「荒野の七人」(1960年)とまでは行かないにしても、講談調西部劇の気分があり、かなり楽しめる。気持ちの良い快作の多いスタージェスの作品群の中にあって決して凡打にあらず。

昔の映画はアクション場面でカメラが動かず、じっくり被写体に迫るので、落ち着いて観られる。やはり昔の人間にはこれが良い。

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この記事へのコメント

2017年09月17日 20:16
>ヒムラー(ドナルド・ブレズンス)

これ、よかったですよね! 
ドナルド・プレザンスは、脇役でいろんな映画に出ていて、悪役や変質者のような役が多いので記憶に残りやすいのと、怪奇映画にもよく出ていたせいで、子供のころからごひいきでした。ああ、また出てる! みたいなね。それで、英国の舞台出身なんでしょうけれど、うまいのですよ。「悪魔の植物人間」ではマッドサイエンティストでしたが、彼の講義を聞いた若い女性が「彼、セクシーじゃない」という台詞を言ったのを覚えています。それが違和感ない外見でもあったんですが、役はマッドサイエンティストでした。
オカピー
2017年09月17日 22:11
nesskoさん、こんにちは。

>ドナルド・ブレザンス
>怪奇映画にも

そうなんです。あの風貌で、“つるりんぱ”ですからね(笑)
「悪魔の植物人間」は、彼を意識して観た初めての作品かもしれないです。ゲテモノですが、こういうのはたまに見たくなりますね。
とにかく、ご指摘のように脇役として出演本数が多く、「テレフォン」辺りもなかなかソ連のタカ派官僚(?)を演じて印象的な作品でした。

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    Excerpt: チャーチル暗殺計画、というのが面白い。 Weblog: 或る日の出来事 racked: 2018-01-29 22:56