映画評「ラスト・ショー」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1971年アメリカ映画 監督ピーター・ボグダノヴィッチ
ネタバレあり

僕が新米映画ファンだった頃、日本の映画ファンの間でかなり話題になったと記憶する。そして、「スクリーン」でも「キネマ旬報」でも1972年度批評家選出第1位の栄冠に輝く。当時観られなかったが、数年後実物に接して非常に感動した。
 この後「ペーパー・ムーン」(1973年)を作る俊英ピーター・ボグダノヴィッチの出世作で、この後数年間全盛期が続くものの、ニューシネマ時代が終わると彼の作りたい映画を作る土壌がなくなり、恵まれない日々を送ることになる。それは主人公を演じたティモシー・ボトムズも全く同じである。

1951年のテキサスの小さな町、町民から敬愛されているベン・ジョンスンの経営する映画館をデート場所にしているボトムズは、同級生の恋人に相手にしてもらえず、孤独な体育教師の妻クロリス・リーチマンと懇ろになる一方で、同級生ジェフ・ブリッジスと念願の性的交渉を果たしたもののへたくそさに気まずくなった気の多い同級生シビル・シェパードと結婚ごっこのようなことをしたため親友のブリッジスと仲違いし、クロリスに悲しい思いをさせたことを認識する。その間に慕っていたジョンスンがぽっくりと死に、弟のように可愛がっていたサム・ボトムズ(ティモシーの実弟)も交通事故死してしまう。閉館されることになった映画館の最後の日に一緒に「赤い河」を見たブリッジスは朝鮮戦争へ出征する。

僕は自分の青春がいつ終わったかなどと意識したことはないが、小説や映画の中の登場人物は早く青春時代を終えてしまう。高校を卒業して僅か1年というのに、すっかり周囲の風景が変わった環境にあって、「草原の輝き」(1961年)や「祭りの準備」(1975年)の主人公たち同様、彼らは青春の終焉を意識せざるを得ない。というより、僕らが勝手に彼らの青春は終わったと意識する。

同時に、良き西部男を象徴するジョンスンの死は古き良きテキサスの終焉を意味する。風がタンブルウィード(草玉)を転がす西部を捉えたモノクロ映像が示すように、ドライで厳しささえ漂わす内容だが、それでもこの作品が醸成するノスタルジーにじーんとせずにはいられない。

今回は日本劇場公開時より9分ほど長いディレクターズ・カット版にて鑑賞。

ノスタルジーに国境はない。

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この記事へのコメント

2017年09月14日 17:29
『ラスト・ショー』・・・・・公開当時劇場で鑑賞感激しました。
パンフレットも買いました。
今も持ってます。
ジェフ・ブリジス・・・・無冠の名優と言われてましたね。
この作品でアカデミー賞をもらってもおかしくはなかったんですがね。
オカピー
2017年09月14日 20:14
ねこのひげさん、こんにちは。

>無冠の名優
僕も忘れていましたが、調べてみたら、2009年の「クレイジー・ハート」で主演賞を受賞していました。

>この作品でアカデミー賞を
そうでしたね。

僕は、本作と「ジョニーは戦場へ行った」「ペーパー・チェイス」と立て続けに秀作に出たティモシー・ボトムズが凄い俳優になっていくだろうと予想しましたが、結局ニュー・シネマが終わると、地味な脇役俳優になってしまいました。出演作は多いのですけど、ブリッジスに比べると余りに対照的で、個人的に非常に残念な思いがしています。
十瑠
2017年09月14日 21:54
公開時、その頃珍しいモノクロ画面に見入って、ノスタルジックなメランコリックな気分に浸ってしまった記憶があったんですが、11年前に再見した時には、そんな気分は戻ってこなかったですね。何故だかは分かりませんが。
ベン・ジョンソン扮するサムの心持ちがより分かるかとも期待したのに、そちらも全然。マクマートリー作品らしい下半身事情のオンパレードが鼻につきました。
お薦め度★四つは、初見時の印象を加味しております。それと、ラストシーンのリーチマンの演技も加味しております。

>スクリーン」・・・1972年度批評家選出第1位の栄冠に輝く。

双葉さんは2位に挙げてましたね。
オカピー
2017年09月14日 23:29
十瑠さん、こんにちは。

>11年前に再見した時には
その差は年齢でしょうかねえ。
初鑑賞時、十瑠さんは十代後半で主人公たちに感情移入できたのでしょうかねえ。
ノスタルジーという意味では、年齢を重ねたほうが良いような気もしますが。
僕は変わらず、感銘しました。

>下半身事情
4年後に作られる邦画「祭りの準備」は似た構図のお話ですが、やはり終始下半身事情でした。60年代後半から映画は性的に解放され、70年代前半はその解放感がピークになった頃ということでしょうか。
 ただ、下ネタの程度の低い昨今の作品を大量に観ておる身としては、昔の作品は相対的に品良く感じられますです^^

>リーチマン
幕切れの演技が絶品でしたね。

>双葉さん
1位は「ジュニア・ボナー」。本作にも西部劇へのレクイエム的な部分もあり、高評価には西部劇へのノスタルジーも手伝いましたか。
2017年09月16日 17:06
この映画のシビル・シェパードはよかったですよね。
なぜかその後あまりうまくいかなかったようですけれども、きれいなんだけれども主役ではなくて脇役向きかなあというのはありました。ちょっと嫌なところがある美人みたいな、悪役、憎まれ役ができそうなかんじだったんですね。
日本でも放映されたテレビドラマの「こちらブルームーン探偵社」はすごくはまってて、美人だけど笑いもとれるいい役者じゃないかと思ってましたが、なぜか相手役を務めたブルース・ウィルスのほうが大出世してしまいましたね。
オカピー
2017年09月16日 22:40
nesskoさん、こんにちは。

>シビル・シェパード
デビュー作でしたね。
演技者として堂々たるデビューと思います。監督のピーター・ボグダノヴィッチと仲良くなってヘンリー・ジェームズを映画化した「デイジー・ミラー」にも主演しましたが、助演した「タクシー・ドライバー」くらいから目立たなくなりました。

性格的には正にそんな感じ。嫌みのある美人で、男性にはもてるが女性には嫌われるタイプを演じられそうでしたね。

>「こちらブルームーン探偵社」
評判は知っていましたが、たぶん動いているのは観たことがないですね。今となると惜しいことをした感じ。

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  • ラスト・ショー

    Excerpt: (1971/監督・共同脚本:ピーター・ボグダノヴィッチ/ティモシー・ボトムズ、ジェフ・ブリッジス、ベン・ジョンソン、クロリス・リーチマン、エレン・バースティン、アイリーン・ブレナン、シビル・シェパード.. Weblog: テアトル十瑠 racked: 2017-09-14 21:40