映画評「愛・旅立ち」

☆(2点/10点満点中)
1985年日本映画 監督・舛田利雄
ネタバレあり

昨今の映画は突出して優れた作品も余りない代わりに、笑ってしまうくらい変な作品も少ない。本作は当時トップ・アイドルだった近藤真彦と中森明菜が共演した難病映画だが、これが僕が観た邦画の中でも指折りの珍作なので吃驚させられた。

孤児の高校生・中森明菜が心臓病で入院する。手術をしても治らない難病だ。その病院へ、ドラックの運ちゃんとカーチェースをして友を失い自分も軽く負傷をしたメカニックの近藤真彦が入院、彼女を見かける。すぐに退院した彼は、工事現場などで働くが、まじめに働く自分が却って馬鹿にされて面白くなく、ビルの上で黄昏ている。それを、耳なし芳一を愛する余り彼を霊界から呼び寄せて病院を抜け出した明菜嬢が発見し、二人はここでようやく知り合う。

ここまでにおよそ1時間かかる。やれやれ。

耳なし芳一を体内に取り込んで元気の出た彼女は彼のバイクに乗って遠出をするが、芳一が力不足を実感して抜けると途端に倒れてしまい、遂に病院でこと切れる。ところが、彼が彼女を引き留めようとする余り、割れた天界の山が元に戻り、それが地上の大地震を誘発、彼女は甦る。

難病映画だから、死が主題になるのは当たり前だが、ヒロインが天空を飛んでいく場面まで出て来て唖然。序盤近藤君を乗せた救急車を追いかける火の玉は、一体何だったのか未だによく解らないが、彼には明菜嬢の霊魂が付きまとっているようだから、もしかしたら彼女の生霊だったのかもしれない。

出演者に丹波哲郎がいて、彼がアイデアを吹き込んだのではないかと想像したくなる独自の死生観に立脚し、最終的には「愛が生命の根源である」という主張する内容となっている。似た主題の洋画「ファウンテン 永遠につづく愛」(2007年)のように形而上学的に展開させればまだしも、ミーハー映画故にそういう抽象的な展開にはできず、結果的に人々の行動が妙ちきりんになってしまう。これを笑わずに観ることができようか。

何でも屋とは言え、舛田利雄ほどの実績のある監督が演出に当たるのは気の毒に思えて来る作品と言うべし。

何故か、耳なし芳一が子供若しくは子供みたいなのだ。

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この記事へのコメント

2017年08月09日 21:59
未見の作品ですが、この評を読むとあまりに珍作なので興味が湧いてきました。公開当時はマッチと明菜のアイドル映画ということですんでたんでしょうね、あまりこの映画の話は聞かないままです、珍作マニアが珍重してもおかしくない気配がありますのにね……耳なし芳一とか。
もっともっと昔の、映画産業が盛んだった時期だと、予定消化だけが目的みたいな珍作でも、映画界がにぎわってた雰囲気だけは画面から感じられて、出てる人もスターだったりしてそれなりに楽しめたりするのですが、1985年となるとそういうのはなくなってましたよね。映画界自体が、かつては賑やかな盛り場だったのがもうさびれて、みたいな。そこで、耳なし芳一、というのが、ちょっとかんじるものがあります。
オカピー
2017年08月09日 23:33
nesskoさん、こんにちは。

極めてアイドル映画ようなところと、極めてアイドル映画らしくないところが、共存しているという意味でも変な作品で、丹波哲郎扮するごみ拾いの老人が回想する40年前の姿が全く若くない、などといったところなど、突っ込みどころ満載。

>1985年
映画がかなり落ち目になり、かつ、まだTV局が映画に乗り出す前で、多分低予算で作ることが余儀なくされる中、「大霊界」のような作品がこの後作られるのを見ても、世紀末的な気分があったのかもしれませんね。
ねこのひげ
2017年08月10日 02:35
あの頃は、何だこれ?というような作品がありましたね。
低予算というのもあったのでしょうが・・・・
町山さんによれば、アメリカのケーブルテレビ関係のスポンサーを必要としない企業が日本の映画界やアニメ関係にも乗り出してきているそうです。
予算が数億ではなく数十億数百億となるような映画やアニメがこれから日本からでてくるだろうとのことです。
日本のアニメは世界的に人気ですからね。
年収が数十万円だったアニメーターや飢え死にしそうになりながら情熱だけで映画を撮っていた監督が提示された予算やギャラを観て狂喜乱舞しているそうです。
さて、どんな作品が出来てくるんでしょうね。
なんでもありだそうで・・・下半身丸出しの作品も配信されているそうで・・・
オカピー
2017年08月10日 23:24
ねこのひげさん、こんにちは。

1980年代になると、1960年代までのような変な作品は大分減ったと思っていましたが、まだこんな作品がありましたよ。変な作品と言えば、丹波哲郎の絡んだ数作はかなり変でしたが、あれは変なのを売り物にしたところがあり、アイドル映画ではないですからね。

>アメリカのケーブルテレビ関係
こういうのは良し悪しで、プロデュースする側の意向が強く反映されると、無国籍のつまらない作品が増えてしまう可能性が懸念されますね。昔の日本の無国籍映画は、舞台がどこか解らないだけであって極めて日本的でしたが。

マンチェスターから帰ってきた甥は、彼の世代には珍しくコミックやアニメを殆ど知らない若者ですが、英国で色々質問されるうちに興味をもって、非常に苦境にあるその業界を活性化する仕事も面白いと思い始めたようです。
今度会った時に町山さんの話もしてみたいと思います。

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