映画評「四月は君の嘘」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2016年日本映画 監督・新城毅彦
ネタバレあり
新川直司という漫画家の作品を実写映画化した青春映画。
今世紀に入って多い、TVでアニメ化された後実写化されるというパターンの作品である。見る気になったのはネットのクイズでこの作品が出てきたから。「〇月は君の嘘」の〇に入る数字は何?という問題で、嘘と結びつく月は四月だろうと思い、正解した。国際題名はYour lie in Aprilで、こちらのほうが解りやすい。一応お話を書いておきましょうかね。
末期的な病状であったピアニストの母親を殺したという罪の意識でピアノの音だけが聞こえなくなる天才少年ピアニスト有馬公生(山崎賢人)が、幼馴染の同級生・澤部椿(石井杏奈)に頼まれ、彼女が二人の共通の親友であるサッカー部員・渡亮太(中川大志)にモーションをかけたいと思っている宮園かをり(広瀬すず)の願いを聞くのに付き合うことになる。
これが実はヴァイオリニストであるかをりと公生の運命的な出会いで、彼女はコンクールでの伴奏を強引に頼む。途中で例の如く音が聞こえなくなった公生の演奏が滅茶苦茶になるが、それでも彼女の奔放な演奏スタイルが評判になって特別にコンサートに出演することになる。
結局再び強引に伴奏する羽目になったコンサートで、かをりは何故か欠席、公生は一人で演奏を終える。実はかをりは難病を発症していたのだ。
難病を発症するまでは、とにかく、天衣無縫なかをりの溌溂さが、この手の少女はお手の物といった広瀬すずの演技を得て非常な魅力を発散、山崎賢人演ずる公生の内攻的(内向的ではない)な性格描写と相まって、面白い効果を上げている。
ところが、ここで突然難病と来るから、相当がっくり来た。元来僕は難病ものには厳しい立場で、最近は安易なお涙頂戴に走らない作りに好感を持つことが多くなったとは言え、明朗な描写が続いた後に突然に難病を出してくるような韓国スタイルの作品は余り買えないからである。
コンサートでトラウマを克服した公生はピアノ・コンクールに出場する。同じ頃かをりは一縷の望みを掛けて手術に挑む。
挑戦する二人が絡み合うようなこのアイデアは良く、演奏終盤には幻想のかをりが現れる。僕はカットバックで進むこの場面にサスペンスを感じて観ていた。彼は上手く演奏できるか、彼女の手術は成功するのか、と。
残念ながら幻想のかをりは消える。ドラマツルギーに従って解釈し、「ああ死んでしまったのか」と再び僕はがっかりさせられた。場面転じて、陽光を浴びる音楽部室で公生はかをりの手紙を読んでいる。これで彼女の死は決定的だが、それでも次々と部室に入って来る椿と亮太を見るうちに、かをりが入ってくるどんでん返しを恋々と期待するに至ったのだが、さすがにそれはなかった。
しかし、彼女の手紙で何故この作品において彼女の難病がそれまで伏せられていたのか納得できるミステリー的解決が待っている。そのアイデア自体は、ややあざといが、それなりに買いたい。
全体としては平均的な韓国難病映画を僅かに上品にした程度ながら、総合的に(本当は広瀬すずの魅力により)悪くない星を進呈しておきます。
すずちゃんを一番可愛く撮ったのは、「海街diary」の是枝裕和監督だ。
2016年日本映画 監督・新城毅彦
ネタバレあり
新川直司という漫画家の作品を実写映画化した青春映画。
今世紀に入って多い、TVでアニメ化された後実写化されるというパターンの作品である。見る気になったのはネットのクイズでこの作品が出てきたから。「〇月は君の嘘」の〇に入る数字は何?という問題で、嘘と結びつく月は四月だろうと思い、正解した。国際題名はYour lie in Aprilで、こちらのほうが解りやすい。一応お話を書いておきましょうかね。
末期的な病状であったピアニストの母親を殺したという罪の意識でピアノの音だけが聞こえなくなる天才少年ピアニスト有馬公生(山崎賢人)が、幼馴染の同級生・澤部椿(石井杏奈)に頼まれ、彼女が二人の共通の親友であるサッカー部員・渡亮太(中川大志)にモーションをかけたいと思っている宮園かをり(広瀬すず)の願いを聞くのに付き合うことになる。
これが実はヴァイオリニストであるかをりと公生の運命的な出会いで、彼女はコンクールでの伴奏を強引に頼む。途中で例の如く音が聞こえなくなった公生の演奏が滅茶苦茶になるが、それでも彼女の奔放な演奏スタイルが評判になって特別にコンサートに出演することになる。
結局再び強引に伴奏する羽目になったコンサートで、かをりは何故か欠席、公生は一人で演奏を終える。実はかをりは難病を発症していたのだ。
難病を発症するまでは、とにかく、天衣無縫なかをりの溌溂さが、この手の少女はお手の物といった広瀬すずの演技を得て非常な魅力を発散、山崎賢人演ずる公生の内攻的(内向的ではない)な性格描写と相まって、面白い効果を上げている。
ところが、ここで突然難病と来るから、相当がっくり来た。元来僕は難病ものには厳しい立場で、最近は安易なお涙頂戴に走らない作りに好感を持つことが多くなったとは言え、明朗な描写が続いた後に突然に難病を出してくるような韓国スタイルの作品は余り買えないからである。
コンサートでトラウマを克服した公生はピアノ・コンクールに出場する。同じ頃かをりは一縷の望みを掛けて手術に挑む。
挑戦する二人が絡み合うようなこのアイデアは良く、演奏終盤には幻想のかをりが現れる。僕はカットバックで進むこの場面にサスペンスを感じて観ていた。彼は上手く演奏できるか、彼女の手術は成功するのか、と。
残念ながら幻想のかをりは消える。ドラマツルギーに従って解釈し、「ああ死んでしまったのか」と再び僕はがっかりさせられた。場面転じて、陽光を浴びる音楽部室で公生はかをりの手紙を読んでいる。これで彼女の死は決定的だが、それでも次々と部室に入って来る椿と亮太を見るうちに、かをりが入ってくるどんでん返しを恋々と期待するに至ったのだが、さすがにそれはなかった。
しかし、彼女の手紙で何故この作品において彼女の難病がそれまで伏せられていたのか納得できるミステリー的解決が待っている。そのアイデア自体は、ややあざといが、それなりに買いたい。
全体としては平均的な韓国難病映画を僅かに上品にした程度ながら、総合的に(本当は広瀬すずの魅力により)悪くない星を進呈しておきます。
すずちゃんを一番可愛く撮ったのは、「海街diary」の是枝裕和監督だ。
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