映画評「女ガンマン 皆殺しのメロディ」

☆☆★(5点/10点満点中)
1971年イギリス映画 監督バート・ケネディー
ネタバレあり

ラクエル・ウェルチの主演作なら見ていない作品でも大概題名は憶えているが、これは知らなかったので日本劇場未公開作と踏んだ。しかし、監督がご贔屓の西部劇御用達監督バート・ケネディーでは観ないわけにも行かない。

メキシコとの国境からさほど遠くないと思われる地帯で暮らしている若い主婦ラクエルが、牧場主の夫を殺し、自分を輪姦した三人のならず者兄弟アーネスト・ボーグナイン、ジャック・イーラム、ストローザン・マーティンに復讐しようと、通りがかった賞金稼ぎロバート・カルプを付け回してピストルの撃ち方を教えるように仕向け、メキシコで彼の友人であるクリストファー・リーに専用の軽量で大口径のピストルを作ってもらう。
 そこでメキシコの盗賊一味を一致協力して仕留めた後、遂に三人が強盗を企んでいる町で彼らと再会し、一人一人片付けていく。

というお話は、僕などは「怒りの荒野」女性版という印象を覚える。但し、こちらの師匠は弟子と対決する代わりに、ボーグナインの投げナイフにあっさりやられてしまう。

クエンティン・タランティーノがこの作品に影響を受けて「キル・ビル」を作ったらしく、夫を殺された女性が復讐するという点はほぼそのまま。84分しかない本作のように短くしてくれればもっと面白く観られただろうに、タランティーノは欲張りだからどうしても長くなってしまう。

それはともかく、マカロニ・ウェスタン自体の人気が衰えた代わりに1970年代初めはその影響を受けた作品が各国で作られ始め、本作は珍しい英国資本である。
 しかし、一部コメントに見受けられる「英国製だから(なのに)」という表現は、監督がジョン・ウェイン主演の西部劇を幾つか作った本場アメリカのベテランのバート・ケネディーであるし、リーと淫売宿の女将ダイアナ・ドース以外はアメリカ人ばかりなので、僕としては余り気に入らない。ケネディーの親父さんが英国に招聘され、マカロニ・ウェスタンのパロディー感覚で作ったという印象が強い。音楽もそうだが、セルジョ・コルブッチが好んだ垢抜けないズームの使い方などを取り込むなどしてニヤニヤさせてくれるのである。英国は余り関係ない気がする。

しかるに、悪党三人組がケネディーらしくコミカルなのは功罪の罪の方が大きく、復讐されて「ざまあみろ」という感覚になりにくい。結果的に、親父さんの作品としてはそう面白いとも思えず、ちと残念だ。

西部劇くらい世界各地で影響し合ったジャンルはないのではないかと思う。1960年代初め黒沢明や大映が時代劇に西部劇の要素やムードを取り込み、それで生まれた独自のムードをイタリアが模倣し、そのムードを今度は本場アメリカの西部劇や日本のアクション/時代劇が取り込んだ・・・そんな印象を覚えるのである。その他香港のカンフー映画への影響も大。

ラクエル・ウェルチの主演作品は、今となると殆ど珍品じゃったね。古い映画の放映は同じようなものばかりだから、是非こういう作品の放映を増やしてもらいたいものだ。

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この記事へのコメント

2017年04月05日 11:53
劇場未公開だけどテレビで放映されたのかもしれませんね。ラクエル・ウェルチがポンチョ着てポーズきめてる写真を見た記憶はあるので。メキシコにいるクリストファー・リーって、似合ってないなあという気がしますね。でもそういうおかしさも狙ってやってるのかもしれません。
この手の映画は昔はいっぱいあって、テレビではよく放映されていましたね。007でスパイものが流行ると、似たような趣向のB級映画が各国で作られてたり、マカロニウエスタンもそうです。あれはあれでおもしろかった、というか、今となっては何故昔はテレビであんなに映画を放映してたのかなとふしぎに思ったりします。
オカピー
2017年04月05日 22:11
nesskoさん、こんにちは。

>テレビで放映
僕は全く記憶がないのですが、どうもそのようですね。
何回もされているようです。

>クリストファー・リー
英国的情緒の俳優なんでしょう。だから、北米の乾いた空気が似合わない。そんな気がします。

>何故昔はテレビであんなに映画を放映してたのかな
そうでしたねえ。
中学生の頃、土曜日に家に帰ってから、昼間3本、夜1本見たことがありましたよ。同級生にそう言っても信じてもらえませんでしたが。
土日は毎週3本ずつくらいやっていました。それも大半は洋画。今とは大分違いましたよね。

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