映画評「ボーダーライン」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2016年アメリカ映画 監督ドニ・ヴィルヌーヴ
ネタバレあり

灼熱の魂」「プリズナーズ」を鑑賞年のわがベスト10の上位に入れたように、ドニ・ヴィルヌーヴはもはやご贔屓監督である。

FBI誘拐即応班リーダーの女性捜査官エミリー・ブラントがメキシコ国境での事件の活躍を認められ、その辺りで暗躍するメキシコの麻薬シンジケート“ソノラ・カルテル”を壊滅する任務を麻薬捜査局などと協力して遂行することになる。
 この特別グループを指揮するのはCIA捜査官ジョシュ・ブローリンだが、シンジケートに精通する謎の男ベニチオ・デル・トロの協力が不可欠、こんな陣容で要衝地たるメキシコのフアレスに入る。吊り下げられた死体の数々に驚いた彼女は間もなく、渋滞する道路で麻薬ギャングを躊躇せずに射殺するデル・トロに納得できないものを覚える。
 そこで重要人物を捉え作戦も佳境に入ると、デル・トロはシンジケートとつるむ汚職警官を人質にして再びメキシコに向う。

不法移民や麻薬の流入とそれに伴う犯罪の増加など、トランプが壁を作ると騒いでいる理由の一端が解る内容で、そうした現実の一部をその場に居合わせるかのような臨場感満点のタッチで見せて息をも付かせない。臨場感と言っても、さすがにヴィルヌーヴはカメラを揺らすといった小手先の手法は取らない。安定したカメラできちんと対象に迫り、ムード醸成によりリアル感を打ち出すのである。やはり映画はこうでなくては。

内容については、社会の問題に接近しても、社会派的なアプローチではなく文学的なアプローチで、善と悪を我々はどう理解すべきかという命題を突きつける。
 ヒロインは正義感が強い。対する男性陣はそうではない。CIAは活動を可能にするためにFBIの彼女を利用し、麻薬組織撲滅の名目で最終的にデル・トロの復讐という個人プレイを支援するのである。法律上デル・トロは犯罪者であり、道義的にも認めがたいものがあるが、そう簡単に割り切れないのが人情であろう。中には潔癖症でこうした人情を許さない人もいる。しかし、彼に銃を向けた彼女にしても最終的にこの人情に抗しきれない。そう簡単に善と悪を分けること(善悪のボーダーライン)が出来たら、人生は簡単である。

日本文学伝統の掛詞できめてみました、という邦題。

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