映画評「エール!」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年フランス映画 監督エリック・ラルティゴー
ネタバレあり

フランスの田園地帯。
 元気に高校に通うルアンヌ・エメラは、酪農業を営む家に帰れば、いずれも聾唖の父親フランソワ・ダミアンや母親カリン・ヴィアール、そして弟リュカ・ゲルベルグの通訳として活躍しなければならない。そんなある日気になる少年イリアン・ベルガラ目当てに応募したコーラス部のオーディションに合格・・・どころか才能を見込まれて先生エリック・エルモスニーノにパリの音楽学校行きを勧められる。
 が、彼女なしには酪農の経営を成すこともままならないと決め込んでいる両親は首を縦に振らない。進学を諦めると、折しも学校の発表会があって、コーラスの後ベルガラ少年とのデュオを披露すると万雷の拍手。勿論家族には何の音も聞こえないのだが、感じるところのあった父親は家に帰り彼女の喉に手を当て歌を“聴く”と君子豹変、音楽学校のオーディション参加を当日朝に決め、一家を挙げてパリの学校へ車を走らせる。

家族の為に夢を諦めるか悩んだ末のサクセス・ストーリーの中に家族の絆を浮かび上がらせる、いかにも昨今らしい構成。露骨な差別がある一方、弱者と見なされる人々に対して腫れ物に触れるような態度を取る現在の日本では絶対作られないタイプの作品である。
 単なるハートウォーミングの作品なら日本でも作ることができるが、こうしたお話を単なる感動的なお話にしても現在の人間の胸を強く打つことが難しい時代になっているわけで、露骨な性愛絡みの言動を見せて差別しない態度が、強調された可笑し味と相まって、映画として楽しく観られる所以になっている。一家を可哀想な人々ではなく、耳が聞こえないだけの個性を持った普通の人々であるという態度は貴重なのではあるまいか。

細部では、オーディションで歌うのがミシェル・サルドゥの「青春の翼」で、彼女と家族の立場とオーヴァーラップする内容が感銘を呼ぶ。

ヒロインを演ずるルアンヌ嬢は現実にTVのオーディションで歌手になった新星だそうで、本作が映画デビュー作。日本人には些か線が太すぎるが、歌に加えて演技もなかなか達者であります。

わが邦の「名もなく貧しく美しく」(1961年)は良い作品ながら、最後に悲劇にしてしまったのが気に入らなかった。

この記事へのコメント

2016年11月05日 11:53
いつもTBありがとうございます!
うっかりTBを間違えてしまったので、コードネームのほうを消してくださいませ。
これからもどうぞよろしくお願いいたします☆
オカピー
2016年11月05日 22:07
ノルウェーまだ~むさん、こんにちは。

いつも貼り逃げですみませんm(__)m
記事を書くので精一杯なので…

>コードネーム
了解しました。消しておきます。

いずれ書き込みに参りますので、宜しくお願いいたします。
ねこのひげ
2016年11月07日 23:54
日本人は悲劇にしてしまう傾向がありますね。
判官びいきなんてのもありますが・・・
やっぱり、最後はホッとさせてほしいです。
オカピー
2016年11月08日 17:59
ねこのひげさん、こんにちは。

>悲劇
一つの個性と見るのは簡単でも、やはり彼らの苦労を見れば気の毒に思うのも人情。だから、やっと幸福を掴んだところで、ヒロインが交通事故死するなんて、けしからん作劇と思いましたよ。それまで本当に良い映画だったのに。

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