映画評「FOUJITA」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2015年日本映画 監督・小栗康平
ネタバレあり

藤田嗣治は日本よりフランスで名高い画家であるが、日本で何故人気がない若しくはなかったのか少し解る伝記的映画である。

1920年代、レ・ザネ・フォル(狂乱の時代)と言われた頃のフランスで、藤田(オダギリジョー)は乳白色の裸体画で有名となり、そのモデルを務め3人目の妻となったフランス女性リュシー=ゆき(アナ・ジラルド)らと、時代にふさわしく退廃的な甘い生活を送る。
 戦争が勃発すると帰国して君代(中谷美紀)と結婚し、陸軍美術協会理事長に就任、戦争画に協力し、やがて田舎へ疎開する。

我が群馬出身の小栗康平が監督だから、単なる伝記映画を作るわけはなく、そのため敢えて冒頭で“伝記”ではなく“伝記的”としたのだが、終幕を除けばお話自体は何も難しくない。何を言わんとしているかピンと来にくいところこそ大いにあれ、ここ数作の中ではぐっと解りやすい。

僕の才覚では主題を上手く言い表すことができないが、カラフルな配色が目立つ前半でパリの有頂天時代を、暗い場面が多い後半で日本での暗黒時代を美術的に描いたものと考える。絵面(えづら)的には対照的ながら、僕は共に藤田嗣治という画家の几帳面なテキトーさみたいなものを感じて興味を覚える次第。実際にどうだったのか知らないが、この映画からはそう感じられるわけである。
 戦時下での場面で画面が暗いのは当たり前ながら、それとは別に後に戦争に協力的だったと批判されることになる彼の(後年の)心象風景を反映しているのではないかと勝手に想像する(但し、それは映画単独ではなかなか想像できず、彼の生涯を調べて初めて感じることである)。
 戦時中引きこもった田舎で狐をめぐる幻影が出て来る狙いはよく解らない。

基本的に小栗監督はロング・ショット、固定カメラの監督だから概して冷たい印象を与える反面、構図に腐心したショットには絵画を思わせる優れたものが多くあり、この点を特に買っておきたい。わが【一年遅れのベスト10】の断然の撮影賞候補である。

僕にとって、藤田と言えば、元司。野球ファンだからね。

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  • FOUJITA ★★★

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