映画評「生きる歓び」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1961年フランス=イタリア合作映画 監督ルネ・クレマン
ネタバレあり

太陽がいっぱい」に続いてルネ・クレマンがアラン・ドロンを主演にこしらえた作品で、前作とは打って変わってブラック・コメディー。前回観たのは40年くらい前で、続いて観るチャンスがあった10年前には事情があって途中で止め、それ以来の鑑賞。フェリーニ風に言えば2・1/4回目である。

1921年ローマ、兵役を終えたドロンが戦友と気の向くままに力をつけ始めたファシストの黒シャツ隊に入隊、敵対するアナーキストのビラを印刷した印刷所を探し出してスパイすることにする。彼は印刷所一家の娘バルバラ・ラスが気に入り、しかも一家自体がアナーキストと判った為、従業員として居つくことを決め、敵ではないかと怪しまれると、屋根裏に住んでいる変人の祖父カルロ・ピザカーネの知恵を拝借してアナーキストの中央が送った幹部の振りをして信頼を得る。
 そんなある時VIPが平和博に訪れるため、危険分子として悪名高い一家はいつも通り予防的に投獄される。若いカップルは刑務所と一体を成す教会にある抜け穴を使って外に出るが、その頃本当のアナーキストが爆弾を仕掛けまわり、今ではバルバラが目的となったドロンは疑われたり無辜の人々が犠牲になったりするのが嫌で爆弾を回収しまわる。

最初から最後まで多重の嘘がかき回すシチュエーション・コメディー的着想だけでもかなり楽しめるが、テロを巡る不穏なドタバタと、ドロンがバルバラをものにする為に行動を続けることとのギャップが可笑しく、ブラック・コメディーぶりが際立つ。悪名高い一家が予防的に投獄されるという着想が愉快で、それも始終行われているのでお馴染みになって官憲となあなあの関係になっているという辺り、泥臭さ寸前のイタリア的可笑し味がある。教会にある穴の使い方もなかなか上手い。

イタリア配役陣のコメディー演技が快調。一方、ドロンのコメディー演技を僕は軽視するものではないが、彼は「太陽がいっぱい」のような影のある役の方が概して実力を発揮できるように思う。

終始軽い調子のドタバタではあるけれど、自由を沈潜させたテーマは案外重い。

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この記事へのコメント

2016年11月23日 20:47
オカピーさん、久しぶりのアラン・ドロンの記事、嬉しかったです。
この作品以降、ルネ・クレマンは、何故か、ルキノ・ヴィスコンティを意識しているように思えて仕方ないんですよ。
この作品に関しては、「若者のすべて」のロッコから家族や故郷のしがらみを解放するとユリスのような明るい青年になるのではないでしょうか(笑)。自由という言葉が頻発されることや、聖人という概念を否定していますし・・・。斜陽の貴族(ヴィスコンティ)とファシズムに勝利した共和主義者(クレマン)の違いが、くっきりと浮かび上がっていると思います。
この後、ヴィスコンティは、「山猫」でアラン・ドロンに共和主義者の若手貴族を演じさせましたけれど、またその後、クレマンは「パリは燃えているか」でアラン・ドロンに共和党レジスタンスの闘士を演じさせた。ルネ・クレマンは、随分とヴィスコンティ&アラン・ドロンに振り回されてしまったという印象です(笑)。
それから、私が強く印象に残ったのはヴィスコンティ一家のリナ・モレリです。こんな素敵なお母さんと『山猫』のサリーナ公爵夫人とが同じ女優だとは思えませんでした。
では、また。

それから、本ブログですが、『高校教師』の記事で久しぶりに更新してます。暇な時にご高覧ください。
オカピー
2016年11月23日 21:51
トムさん、こんにちは。

>久しぶり
本作は、10年前くらいから「今年は見よう」を繰り返して10年経ってしまいました。
記事にしていない、手持ちにある作品は、もう十本はありませんから、丁寧に見ていきましょう。

>ヴィスコンティ&アラン・ドロンに振り回されてしまった
そうなのかもしれません。
そもそもフランス人なのに、イタリア絡みの映画も多く、本作もイタリア人役ですものね。
トムさんのブログを知るまではそういう系統付をしてドロン映画を見てこなかったので、勉強になります。

>リタ・モレリ
それが俳優の凄さですね。
ヴィスコンティは、庶民派でスタートしたシルヴァーナ・マンガーノを貴婦人にしましたね。彼女も腋毛を見せた「にがい米」の頃とは別人のようでした。

>『高校教師』
リアルタイムで映画館で観た作品ですけど、それ以来43年間全く観ていないんですよね。DVDでも買わんと無理ですか。
後でお伺いします。

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