映画評「ぼくたちの家族」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年日本映画 監督・石井裕也
ネタバレあり

昨日上げた「アリスのままで」に続いてまた50代女性の若年性アルツハイマーかと思ったら、脳腫瘍でした・・・というのがお話の始まり。

その腫瘍を患うのが東京郊外に住む主婦・原田美枝子で、脱サラしたものの成功しているとは言えない夫・長塚京三はその余命が一週間内外と知って気が動転してしまう。
 そこで頼られるのが、かつて引きこもった経験のある長男・妻夫木聡。家計が火の車であることは薄々知っている長男は、入院費捻出のために色々と調べていくうちに両親夫々の少なからぬ借金を確認、妊娠三か月の妻・黒川芽以に頭が上がらない為に袋小路に追い込まれる。すべてを正面から受け止めてしまう彼には、ノンシャランな次男・池松壮亮が実は羨ましい。
 しかし、病院側が治療の見込みのない母親を体よく追い出そうとしていることに気づき、抗うことを決意、弟と手分けして新たな見立てをする病院を探すうち、空いているベッドのない病院の医師・鶴見慎吾から脳外科医・板谷由夏を紹介され、悪性ではあるが治療の余地のあるリンパ腫であることと告げられる。

早見和真の同名小説を石井裕也が映画化した難病ホーム・ドラマである。
 テーマは明確で、心の離れていた家族四人が、母親の難病発覚により家庭の問題をはっきりと示されたことから、却って絆を深めていく様子を描く。絆が深まって行くだけでなく、家族全員が新しい人生を切り開いていく力まで湧いてくる、という終幕によりすこぶる後味の良さを覚えさせる。

逆境が各々の隠れていた素性を明らかにしていくというところが面白く、権威的に見えた父親がみっともないばかりにおろおろとし、恐妻家の長男は細君に気を遣いながらもやがて男気を発揮していき、楽天的に見えた次男がそんな長男をその楽天さで長男をバックアップした後実は母親の手術に立ち会えない弱気を見せたり、等々と人間観察的見地から楽しめる作品になっている。

また、母親が脳の病気の為に時に人物が識別できず(本人の前で)本音を吐いてしまう部分がユーモラスで、この辺りは仮に原作由来であったとしても、石井監督らしさが大いに発揮されている。台頭した頃個人的に感じた力味みたいな印象が殆どなく大変素直に見ることができるのも良い。

“ぼくたち”は長男夫婦のことかもしれないが、ぼくたち=家族という同格関係と思っても問題ない。日本語の「の」は同格(~という)を示すことも多い。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2016年06月26日 18:46
うちのオフクロも大腸がんの手術をしたら、痴呆の症状が改善されたときは驚きましたね。
その後、年齢ととも痴呆は進行していきましたけどね。
オカピー
2016年06月26日 21:11
ねこのひげさん、こんにちは。

そういうことはあるようですね。
内臓と脳とは関係あるとか聞きますし。

「アリスのままで」のヒロインが「ガンのほうが良かった」と言うように、認知症は嫌な病気ですね。
わが母はボケるどころか、どんどん頭がクリアになっていく感がありましたよ。僕より記憶が良かったくらい。

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