映画評「ちょんまげぷりん」

☆☆★(5点/10点満点中)
2010年日本映画 監督・中村義洋
ネタバレあり

荒木源の同名小説を中村義洋が映画化したタイム・スリップもの。新作(WOWOWを主なソースとする僕の基準では2年内外に公開された作品)かと思いきや、そうではなかった。

夫と離婚、6歳の息子・友也(鈴木福)を保育園に預けてIT会社で奮闘するシングルマザーひろ子(ともさかりえ)が、180年前の文政年間からやってきた木島安兵衛と名乗る侍姿の若い男(錦戸亮)と出会う。行き場所もなく彷徨している彼を見かねて家に連れ戻り、友也君にも大いに好かれたことから、暫し生活を共にすることにする。謝礼のつもりで彼は友也君の面倒を含めた家事一切をやると宣言、おかげでひろ子は残業に精を出すこともでき会社でも優遇されるようになる。
 が、彼が友也君の為に始めたプリンやケーキ作りが評判になり、コンテストに参加したことからパティシエとして引き抜かれ、その依存関係は元の木阿弥になってしまう。

その後エトセトラエトセトラのお話があるのだが、つまらなくはなかったものの、もう一ひねりあれば最低でも小傑作にはなったと思われ残念。

最大の面白さはカルチャー・ギャップである。儒教の支配する男社会であり封建社会の男には、女性が家を守らず外で働くなど言語道断。ここまでは誰でも想像がつくが、その儒教による男女分業思想でいっぱいの男が現代社会をかなり理解して家事をしようと言うのが面白いのである。ここに現代の日本社会への風刺がある。頑迷なはずの江戸男にできることが現代の男に何故できないのだという、軽い皮肉がある。逆に礼を重んずる儒教の精神を持っているからそういう転換もできるのかもしれないし、そこにも礼を失する現代日本社会への揶揄があるような気もする。

個人的に思うのだが、封建時代の考えの一部には見習うべきところがあり、現代社会には勿論それ以上の利点がある。本作を見ていると、自由な現代社会に封建時代の良い面がうまく合体して機能すればかなり理想的な社会になるだろう、という愚見に近い社会観を感じる。そこは良かった。

安兵衛がパティシエになって折角ヒロインが得た自由が失わてしまう【塞翁が馬】的な展開にも皮肉な面白味がある。しかし、これを筆頭に上述した風刺や皮肉の面白味に留り、SF的な着想がさほどでないのはかなり不満。作者もSFとしては作っていないでしょうけれどね。
 そのマイナス面は終幕の和菓子屋で少し挽回できているかもしれない。その代わり、元の木阿弥になったヒロインの未来が放置されてしまった感が残るので痛し痒しだろうか。

但し、友也君の卒園式での台詞「大人になったらサムライになりたい」は大いに効いている。

当方のジャンル分けもコメディーとするでござる。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2016年06月12日 16:27
現代社会のほうがうるさい気がしますね。
江戸時代は侍が盆栽や傘はり、料理を作って生計を立ててましたからね。
絵を描くのがうまい家老がいて、その絵をわいろとして幕府の重役に渡して藩を救ったという事もありますからね。
オカピー
2016年06月12日 20:33
ねこのひげさん、こんにちは。

特に最近面倒くさいですよ。
個人的には、言葉狩りがひどくて。
僕は天邪鬼だから、西部劇においては「インディアン」と言うし、女性の場合は「看護婦」「スチュワーデス」と書く。実際誰にも迷惑をかけていないと思う。

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