映画評「ラスト5イヤーズ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督リチャード・ラグラヴェネーズ
ネタバレあり

ジェースン・ロバート・ブラウン作のオフ・ブロードウェイ・ミュージカルをリチャード・ラグラヴェネーズが映画化した作品。

お話は単純至極で、売れないミュージカル女優アナ・ケンドリックと若手ユダヤ系作家ジェレミー・ジョーダンの夫婦の5年間のパートナー関係が破綻するまでを描いている。
 そんな単純にして“面倒臭い”お話をミュージカルにするという発想が大胆と言えば大胆で、通常なら没になる企画であるが、未練を持つ妻が別れた時から過去に遡り、未来に前向きな夫が恋人時代の過去から別れるまでを語るという変則話術にしたところが実験的で興味深い。最後に本来は辛いはずの妻に笑みさえ見えるのは、恐らく夫側の視点で語られているからなのであろう。

全編ほぼ歌唱による進行というのは(意外にも・・・但し僕の勝手な解釈・・・)アンチ・ミュージカル・ファン対策でもあるはずなのだが、実際には、その為に歌曲にレシタティブ(セリフのように歌う)調の歌曲が多くなって単調化を避けられず、間断なく歌われるので、僕のようなミュージカル好きにさえ、飽き(疲れ)が来る弊害をもたらす。

恋心を歌う曲を愛聴する同じ人が、ミュージカル映画で恋心を歌で表現すると「突然歌い出すのは変」と言うが、そんな意見こそ変であって、画面では歌っているように見えるが実は内心で思っているだけのことである。歌謡曲とどこも違わない。
 映画は総合芸術であるし、舞台もそれに準ずるわけで、歌だけ独立させれば問題と感じないものを、映画は現実そのものを描くと決めつけているからそんな変なことを言い出すのである。ミュージカルのナンバーは大半が内面モノローグである。

好きか嫌いかは個人の好みであるから僕の関知するところではないが、その理由を現実と結びつけるのは物事(芸術)に対する理解が単純に過ぎると言わざるを得ない。
 “突然歌い出すのが変と言うなら、最初から歌いっぱなしならどうだ”という逆転の着想が、傑作「シェルブールの雨傘」(1963年)を生んだのであろうが、いつも上手く行くわけではなく、本作ではもっと歌曲にヴァリエーションが欲しいし、たまに歌のない時間帯があったほうが疲れない。

タモリのような頭の良い音楽好きまでそんなことを言うのだからねえ。タモリのマンションに行って、彼のライブラリーのレコードを聴きたいなあ、と思っている僕です。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

ねこのひげ
2016年05月01日 16:45
タモリさんの場合は、半分はジョークのようなところがありますね。
たぶん、タモリさんが嫌いだったら注目が集まるという意図があるんではないかと・・・・
うがちすぎかな?
オカピー
2016年05月01日 21:00
ねこのひげさん、こんにちは。

まあ、そういうこともあるかもしれませんね。
船が好きだけど恋愛映画が嫌いなので「タイタニック」を観ようかどうか迷ったという話も聞いたことがあります。結局観たかどうか忘れましたが(笑)

この記事へのトラックバック

  • 15-151「ラスト5イヤーズ」(アメリカ)

    Excerpt: そばにいる私はその一部  ニューヨーク。アパートでひとり傷心のキャシー。  5年前に運命の出会いを果たしたジェイミーとの結婚生活は破局を迎え、彼はここを出て行った。新たな人生を歩むために。そう、い.. Weblog: CINECHANが観た映画について racked: 2016-04-30 14:20
  • ラスト5イヤーズ

    Excerpt: 【概略】 キャシーとジェイミーの5年間の愛の軌跡を、別れから出会いまで、出会いから別れまでのふたつの時間軸でたどる切ない物語。 ラブストーリー ラブストーリーといっても悲恋です、そ.. Weblog: いやいやえん racked: 2016-04-30 17:56
  • 「ラスト5イヤーズ」

    Excerpt: アナケン歌いまくり! Weblog: 或る日の出来事 racked: 2016-05-02 09:15