映画評「フォーカス」

☆☆★(5点/10点満点中)
2015年アメリカ映画 監督グレン・フィカーラ、ジョン・レクア
重要なネタバレあり。鑑賞予定の方はご注意を。

タイトルからは内容は全く解らない。ふたを開けて見れば詐欺師のお話である。

グループ詐欺では、先日何回目かの再鑑賞をした「スティング」(1973年)が断然の代表作であるが、本作は「黄金の指」(1973年)を思い出させる分業スリからスタートする。
 リーダーはウィル・スミスで、彼に美人局(つつもたせ)の罠を張ったのに軽く見透かされてしまう美人マーゴット・ロビーにスリの手ほどきをするのである。
 「黄金の指」は確か4人だったか、こちらは両手の指の数にも及ぼうかという大所帯で同時多発的に犯行を行うのが面白い。

スリでも億単位の大金を稼ぐのだから大したものだが、次なるはアメ・フトのスタジアムで繰り広げる賭けゲームである。スミスとマーゴット嬢が他愛ない賭けをしている。それを観ていた中国の富豪B・D・ウォンがスミスにゲームをしようと誘いかけて来る。互いに勝ったり負けたりするうちに掛け金がどんどん上がり、後半負け続けたスミスはとても勝てそうもないゲームを申し出る。ウォンが心中思った選手を当てるというのである。
 これはマジックの応用みたいなもので、後で種明かしされる。そうとは知らぬ観客はヒヤヒヤするわけで、この辺りから映画は「スティング」同様に観客も騙そうとしているということが解って来るという仕組み。

3年後マーゴットと縁を切っていたスミスはF1のサーキットへやって来て、強豪チームのオーナーである富豪ロドリゴ・サントロに接近、チームの持つ技術のまがいものを他のコンストラクターに売りつけるという詐欺を持ち掛ける。サントロにしてみれば大嫌いなライバル・チームをギャフンと言わせることができ、スミスは両方から大金を得られるという取引内容だ。若い富豪は懐刀ジェラード・マクレイニーに徹底的に見張らせるが、その間隙をついてサントロを出し抜いて大金を得る。

しかし・・・という内容で、徐々に詐欺のスケールを大きくしていく展開は楽しいが、マクレイニーがスミスを撃った為にがっかりすることになった。
 一つは余りにも定石的すぎること。この手のコン・ゲームや詐欺映画を少なからず観てきた映画人種には「撃った人は身内」という図式が見えてつまらなくなるのである。素直に観られる人は幸いなり。
 もう一つは、もっと悪い映像の嘘である。常々僕は「観客を騙す場合、一人でいる場面で嘘をついていけない」と言っているのだが、二人(以上)でいる時もコンビを組んでいる場合は同様で、マクレイニーがホテルの住居にスミスを訪れる場面がある時に二人はそのそぶりを全く見せないから、これは完全に【映像の嘘】に相当する。このインチキがなければ★一つくらい余分に進呈できたのだが。

エンディング・ロールの後半「華麗なる賭け」(1968年)の主題歌「風のささやき」The Windmills of Your Mind がかかる。恋愛心理を交えながらコン・ゲームを繰り広げる男女を描いたかの秀作を意識したのだろう。しかし、ハードボイルドに徹底しつつ切ない後味すら残したかの作品に対し、こちらは主人公が恋愛に埋没して、僕をしてそんな状態で詐欺ができるのかいなと心配させたほど、恋愛心情に作劇が傾きすぎてなまなかになっている気がする。実際にはその恋愛心情も詐欺に利用されているのだが、完全にすっきりと見せつけるところまで行かず、物足りない。

WOWOWさんよ、NHKさんよ、画質が悪くても良いから、もっと昔の映画を放送しておくれ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2016年04月03日 09:39
いまの人は、ハイビジョンだ!4Kだ!8Kだ!と内容より画質にこだわっているようですから放映する側としても悩んでしまうのでしょう。
『エイリアン』『スターウォーズ』でさえも「それなに?」と知らない子供がいますし、あまり関心がないようです。
そのため『プロメテウス』も『エイリアン』の前の話であると宣伝をすることをあえて避けたそうです。
おっさん世代はどんなに雨が降っていても観に行ったものですがね。
雨が降っているも死語でありますから、傘をさしていけばいいじゃんと言われそうですけどね(≧◇≦)
オカピー
2016年04月03日 21:10
ねこのひげさん、こんにちは。

>内容より画質
それがあると思いますねえ。
たまにDVD画質の映画を見ると、これが放映できるのならもっと蔵から出せば良いのにと思ったりもしますが、解像度が低かったり、フィルムに傷のある作品は基本的には遠慮しているようですね。

>雨が降っている
デジタル映画には雨が降りませんし、フィルム交換のマークも出ません。
時代を感じますねん。

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