映画評「エクソダス:神と王」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督リドリー・スコット
ネタバレあり

今年中盤に観た「ポンペイ」は事実上リメイク、正確にはリットン卿「ポンペイ最後の日」の何度目かの映画化と言えたが、「ローマ帝国の滅亡」(1964年)の事実上のリメイク「グラディエーター」(2000年)を作ったリドリー・スコットが「十戒」(1923年/1956年)の事実上のリメイクとしてこしらえたのが本作。つまり、旧約聖書の【出エジプト記】の本格映画化でござる。こういう体裁のリメイクはCG普及により増えた。それが言いたかったわけ(笑)。

エジプト王セティ(ジョン・タートゥーロ)の庇護の下に成人したモーゼ(クリスチャン・ベイル)は、兄弟同様に過ごしてきた新王ラムセス(ジョエル・エドガートン)により追放処分に付される。「救った者(ここではモーゼのこと)が民を率いる」という予言の意味を誤解し、彼のヘブライ人である出自を加味したのである。
 モーゼは紅海沿岸の村の娘(マリア・バルベルデ)と結ばれ子を設けた9年後、啓示を受けて突然自分の同胞であるヘブライ人を救う為に首都に戻る。子供の姿でモーゼの前に現れる神(若しくは神の遣い)はモーゼの要求を呑もうとしないラムセスを窮地に追い込む為に様々な災難を国民に加え、遂には新生児を尽く殺してしまう。さすがの国王もヘブライ人の解放を決めるが、腹の虫が治まらず皆殺しにしようと紅海に向った彼らを追いかける。

ここで有名な海が割れる場面が再登場するかと思いきや、誠に現実的に引き潮を利用するだけの肩すかし。アメリカン・ニューシネマ以降アメリカ映画も完全な講談調は抑え気味だから予想されることとは言え、CGを使って華美に再現してほしかったというのがオールド・ファンの偽らざる心境なのだ。本作の見せ方では、奇跡というより運に近い印象を覚えさせ、余り有難味がない。
 その代わりエジプト人たちに襲い掛かる津波のスペクタクルは、お釣りは来ないまでも迫力満点。

その前のワニ、イナゴ、蛙の大群も見せ場で、少々気持ち悪いデスが、キリスト教の考えを背景にした映画(「イナゴの日」「マグノリア」など)でたまに観られるスペクタクルをパワーアップした形。
 以前「ドッグヴィル」についてヒロインのニコール・キッドマンは神若しくは神の遣いだろうと言ったら、純情な人に「神はあんな残酷なことはしない」と反論されたが、旧約聖書の神が非常に非情であることを本作はよく描いている。

宗教ではGodとGodsは全く違う概念であるので、邦題は「神々と王たち」とでもすべきであったが、本作のGodsはエジプトのような多神教の神々(Gods)なのか、一神教(ユダヤ教)の神(God)と多神教の神々を合わせたものか判然としない。後者なら確かに神でも良いような気がする。

クリスチャン・ベイルは奮闘しているが、さすがにチャールトン・ヘストンの迫力には及ばない。良くも悪くも現在の俳優は理に落ちるのである。

「情無用のコルト」(無名のマカロニ・ウェスタン)ならぬ「情無用のゴッド」でした。

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vivajiji
2015年12月27日 11:38
海割れは誰だって期待しますよね〜^^
おカネかけた最新CG駆使してね。
スコット兄はあえて外したかどうかは
三等外野席にはわかりませんが。
ところで名作「十戒」の海割れの模型って
びっくりするくらいチャチくて小さいって
聞きましたが撮影編集の巧さで
後世にこれだけ印象残したんですね〜
ちなみに
エクソダスと聞くとエクソダス・ソング、
「栄光への脱出」のテーマソングを彷彿と
いたします、長生き映画ファンは。(笑)
ねこのひげ
2015年12月27日 16:42
火山噴火により津波が発生した時に海が引いて砂浜が出現したのでそこを渡ったのだろうと書いている学者がおりました。
その説を採用したのかな?
でも映画的には海は割れて欲しかったですね~
オカピー
2015年12月27日 21:08
vivajijiさん、こんにちは。

>スコット兄
あえて外したのでしょうねえ。
狙いは全く解りませんが。

>海割れの模型
そのようですね。
僕はそういう手仕事が好きでして、今の目には貧弱に見えても興奮するのですよ。
それはそれでCGで観たかったですね。
今年邦画でちょっとした海割れがありましたので、それで我慢することにしましょう(笑)

>「栄光への脱出」
テーマソング、僕も良く知っておりますですよ^^
この間最初の数分だけ観ました^^;
これを観ていたおかげで、パトリシア・ハイスミス原作の心理サスペンス「ギリシャに消えた嘘」の冒頭がそっくりなことが判って思わぬ収穫でした。
オカピー
2015年12月27日 21:37
ねこのひげさん、こんにちは。

>火山噴火
そうかもしれませんし、旧約聖書のお話もこの辺りになりますとかなり精度のある歴史書ですから、リアルな描写であっても良いですが、信心と奇跡の関連性から言えば、リアルすぎてはつまらないなあと思いましたね。

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