映画評「トラッシュ!-この街が輝く日まで-」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年イギリス=ブラジル合作映画 監督スティーヴン・ダルドリー
ネタバレあり

最近僕が読む欧米の児童文学は戦前の古いものが多いため、子供が正義感をもって行動する作品が目立つ。映画化された本作を観る限り、アンディ・マリガンという人の書いた原作の児童文学もその伝統を踏襲している感じである。

リオデジャネイロでゴミ(トラッシュ)漁りをしている少年フィクソン・テヴェス君が、政治家と公務員と警官の汚職に繋がる訳ありの財布を拾った為に、友達のエドゥアルド・ルイス君やガブリエル・ワインスタイン君と共に、悪徳刑事セルトン・メラに追われ、時には痛めつけられ死ぬ寸前にまで行く羽目に遭いながら、連係プレイでピンチをかいくぐり、結局ブラジル全土を驚愕させる事件解明に貢献する。

この最後の部分で活躍するのは、少年たちをボランティアで面倒見てきた神父マーティン・シーンと米国人の美人先生ルーニー・マーラ。

聞くところによると原作では場所が特定されていないらしいが、脚本を書いたリチャード・カーティスはリオに定めて社会派映画としての側面を打ち出した。本作が「シティ・オブ・ゴッド」のマイルド版の印象があるのは偶然ではなく、同作監督フェルナンド・メイレレスを製作者に加えている事実により、明確にそのような社会派作品を作ろうとした意図が裏打ちされる。たとえ場所が特定されていないにせよ、児童文学が賄賂をめぐる攻防を扱っていることに驚かされる。

反面、特にこの映画版は、「シティ・オブ・ゴッド」流のリアリズム指向と、本作の中で白眉である少年たちが暗号の書かれた聖書をめぐって繰り広げる争奪戦における娯楽指向とが、バッティングして少ししっくり来ない部分がある。「シティ・オブ・ゴッド」のつもりで見れば甘いし、冒険もののつもりで見ると陰鬱と思われる。我儘な要求と分ってはいるが、最初から児童文学の映画化らしく娯楽に徹してくれた方が僕には好ましい。

かかるトーンの問題を別にすると、彼らが不当に投獄された弁護士に逢ってから暗号の聖書を手に入れ解読し、大金が隠されている現場に到着するまでのサスペンスフルな冒険ぶりに怒涛の勢いがあり、子供を扱うのが抜群に上手いスティーヴン・ダルドリーの実力発揮と言ったところ。最後に残る印象が“爽快”に尽きるのが良い。

情ないことに、児童文学の映画化の方がYA小説の映画化より大人の鑑賞に堪える。

昨日読み終えた「後撰和歌集」1400首余りのうち半分近くが掛詞を用いている。本作タイトルでは、ゴミとゴミ拾いをする少年たちが“トラッシュ”の一語で扱われている。優雅とは程遠い掛詞なり。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年12月21日 02:40
同じく娯楽に撤した方が良かったと思いますね。
変に啓蒙敵なのは戦前の作品のせいですかね。
オカピー
2015年12月21日 18:37
ねこのひげさん、こんにちは。

今は、昔とは逆に観客に、リアリズムが価値を上げるという誤解がありますからねえ。

この記事へのトラックバック

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