映画評「インターステラー」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督クリストファー・ノーラン
ネタバレあり

今、ガリレオ・ガリレイの著作「天文対話」を読んでいる。引力という概念がなかった為にそれまでの哲学と数学的知見を駆使して地球が自転しているかどうか延々と議論する様にイライラさせられもすると同時に、科学が発展してきた過程を知る上で大変興味深い著作である。

さて、チャンバラSFが多く作られすぎて有難味が減っている昨今、そのチャンバラSFの個人的最高峰「ダークナイト」を作ったクリストファー・ノーランが発表した本格宇宙SF、ガリレオが想像だにできなかった地球人移住をテーマにしたお話である。

世紀末映画流行の昨今らしく、地球は環境悪化で植物が枯れ始め酸素量の低下の結果人類の生きられるのもさほど長くないと思われている。他方、元宇宙飛行士のクーパー(マシュー・マコノヒー)は12歳の賢い娘マーフ(マッケンジー・フォイ)が騒ぐ“ポルターガイスト”絡みで落下した本の隙間などを調べるうちにそれが何かのロケーション情報であることに気付き、NASAの秘密基地に辿り着く。
 ここで再会した旧知の科学者ブランド教授(マイケル・ケイン)の勧めで彼が人類が住める惑星を探すプロジェクトに参画することになり、まだ幼い娘が引き留めるのも聞かず、人類の存続のために宇宙へ旅立つ。

というのが全体の4分1位を費やしたところまでのお話で、その後TARSという「2001年宇宙の旅」(1968年)のHALを意識したようなロボット(AI)とのやり取りを含め、重力差による時間進行における激しい格差を考慮して迅速に作業をせざるを得なかったり、最初の選択が失敗に帰した後燃料に限界がある為に次の選択肢に悩むといったサスペンスを中心に宇宙SFらしい進行ぶりで楽しませる。
 同時に、その途上クーパーと対立しがちな教授の娘で乗組員のアミリア(アン・ハサウェイ)が任務における“愛の効能”を説く箇所がある。実はこれが本作のモチーフであるようで、終盤はそれをベースにお話が収斂していく。

それが、科学的な理解はともかく、哲学性という点で「2001年」と比較するとぐっと解りやすい大衆的な作りという印象を産む所以で、かなり成功していると思うのである。
 この“愛”と、父の出発23年後にNASAの要員となっていたマーフ(ジェシカ・チャスティン)が指摘する方程式における“再帰性”とが組み合わさって、“ポルターガイスト”を起こしたのがクーパー本人であるという終盤の回帰的展開に結びつく。あるいは「2001年」のモチーフになったニーチェによる「ツァラストラはかく語りき」の永劫回帰思想の要素を持ち込んだとも言えるのかもしれない。

そして時計を使ったモールス信号により彼の教授を得たマーフは移住計画の大恩人となり、再会した年下の父親に人類移住の可能性のある惑星の一つで孤軍奮闘しているアミリアの許に行くよう勧める。これが本当の人類の未来の始まりであり、ノーランは“アダムとイヴ”を意識しているような気がする。上述したように本作が“愛”をモチーフにして成功したと思う理由なのである。

「2001年」や「惑星ソラリス」(1972年)のように徹底した哲学SFではないにしても、本格SFとしての余韻を十分残す。宇宙に関する描写の迫力については言わずもがな。

ノーラン投手、ノーヒット・ノーランまであと一歩。

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この記事へのコメント

2015年10月17日 22:06
「愛」をからめると、やはり感情に訴えてきて感激度が上がるんですよね。
ノーラン作品はどこかしら目を見張らせてくれます。
ねこのひげ
2015年10月18日 04:45
コミックSFが大量に作られた反発ですかね。けっこうまじめに作られたSFでいいですね。
映像もCGの発達でよりリアル感が出てうれしいかぎりです。
オカピー
2015年10月18日 15:18
ボーさん、こんにちは。

>「愛」
は生活感情的にも、哲学的にも、人間存在の根源ですからねえ。

>ノーラン作品
メジャー・デビューしてからまだ20年も経っていないと思いますが、すっかり対策の監督になりましたし、もう大ベテランみたいな印象を僕らは持っていますね。年齢を調べたら今年やっと45歳。若い!
オカピー
2015年10月18日 18:29
ねこのひげさん、こんにちは。

>まじめに作られたSF
完全文系の人間がハードSFを読むのはなかなかしんどいものがありますが、ハードSFの映画は断然良いですね。
本作は大衆的SFとハードSFの中間くらいで、見やすい中に手ごたえがありました。余り相対性理論とかワームホールとか五次元に拘らなくても楽しめます。

>CG
ありえない映像には有難いものがあります。
CGありきでお話をでっちあげると碌なものができませんが。

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