映画評「プロミスト・ランド」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督ガス・ヴァン・サント
ネタバレあり

独特の浮遊感を漂わす作風のガス・ヴァン・サントとしては極めてストレートな見やすい作品である。「エリン・ブロコヴィッチ」(2000年)のアンチテーゼ版(あちらは住民側弁護士が主人公)の感もあるが、世間で言われるほど“社会派ドラマ”とは感じられない。

シェールガス開発会社の幹部候補生マット・デーモンが、ペンシルベニア州の寒村で落ち合った同僚女性フランシス・マクドーマンドと、採掘権を村の行政区域ごと買う為に交渉を始めるが、団体交渉の前に個人攻撃で行くことにする。
 ところが、引退した大学教授で今は高校で教えているハル・ホルブルックが公聴会で問題点を提示し、さらに環境保護団体の青年ジョン・クラシンスキーが反採掘キャンペーンを始めたことから苦戦を強いられることになる。好感を持った美人小学校教師ローズマリー・デウィットも彼に傾いてしまう。
 落ち込んだ彼に届いた裁判資料を見ているうちにクラシンスキーが明白な嘘を言っていることに気付いた直後、待ち受けていた環境青年が不用意に発した言葉から彼が彼を信頼しない会社から送られた同僚であることを知って、最後の公聴会で会社に反旗を翻す。

最終的に主人公が反採掘に転じても、本作は社会派作品として実際に最近問題を指摘され始めたシェールガス採掘反対に立脚する作品ではない。会社こそ悪として置かれているとは言え、そこに所属する主人公が悪に与する人物で、農民が善人といった二元論的には描かない。
 極論すれば、主人公が最後に翻意するのもどうでも良いと言っても良いくらい。と言うのも、主人公が人々と接するプロセスから、人々や物事には正邪の二面が必ずあり、その二面も相対的なものに過ぎないという事実を浮かび上がらせている気がするからだ。そのプロセスが僕にはかなり面白く、その描き方における力の抜けた感じが爽やかに感じられるのが良い。主人公の反採掘への決心を押すのが、レモネード売りの少女の「25セントと書いてあるから、25セント以上は取らない」という直球的態度というのも、味わいがある。

作者がどう考えているか定かではないものの、本作を観ていれば、金や経済や産業を優先させて環境や人心が荒れては元も子もないという考えが自ずと頭をよぎるだろう。20世紀後半から世界は徐々にそういう方向に舵を切ってきたが、まだまだ経済に拘る経済人・官僚・政治家が跋扈しているので、なかなか理想通りには行かない。その結果地球がダメになったら、それも摂理と思う一方、易々と諦めるのも何だか癪ではある。

シェールガスのおかげで、原油価格高騰が抑えられている面はあるね。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年09月23日 06:35
シェールガスの会社を潰すためにアラブの王様が石油の値段を抑えているとか。
日本の周りにはメタンハイドレードなども豊富にあるようですから、そちらの実用化に努力した方がよさそうですがね。
オカピー
2015年09月23日 19:01
ねこのひげさん、こんにちは。

石油がだぶついているのに価格を上げない、若しくは上がっていかないのは、シェールガスへの対抗策と言われていますね。

>アラブ
実は、本作は、アラブの資本が入っているらしいので、本当は「反シェールガス映画」と言っても良いようですが、ガス・ヴァン・サントがそういうプロパガンダ映画に見えないように作ったので、そういう文言は敢えて避けました。

>メタンハイグレード
そうなると良いですね。
“ミドリムシ”もエネルギーになるようで、大量生産化を目指しています。これが実現すると、日本はアラブの動向に左右されず安定した経済が営めるようになるはず。

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