映画評「百円の恋」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2014年日本映画 監督・武正晴
ネタバレあり

一昨日「0.5ミリ」を観たばかりなので洋画をもっと挟もうかなと思いつつスケジュールの都合で結局観てしまった。

母親の経営する弁当屋を手伝いもしないで生まれてこの方就職したことのない安藤サクラが、子連れ出戻りの妹・早織に批判されて大喧嘩、家を出て自活することになる。
 何とかコンビニ型100円ショップの深夜バイトを見つけ、バナナばかり買う新井浩文に一目惚れする。32歳まで恋の経験もなかった彼女は、新井の出場するボクシングの試合を観戦した直後に会社の金を横領した同僚に強姦され、やがてボクシングを引退した新井と同棲もどきの生活を始めたものの彼はすぐに家を出てしまう。
 彼の試合模様に思うところのあった彼女は、その所属ジムに入って練習を始め、のめり込む。定年ぎりぎりの年齢でプロボクサー資格を取り、遂に廻って来た試合(多分最初で最後なのだろう)で奮闘虚しく敗れる。

それを観ていた新井に「勝ちたかった」と涙ながらに吐露し、二人してご飯を食べに行くところで“ジ・エンド”となるわけであるが、四十数年間少なからず観てきたボクシング映画で僕が一番主人公に勝ってほしかった作品と言っても過言ではない。最初はだらしなさに嫌悪感を覚えさせるヒロインが、曲りなりに人生と戦っていく姿に不思議と感極まり、試合の場面では涙が出てきた。彼女がダメ人間であればあるほどその振幅により感銘も大きくなるという次第。

また、肩掛け若しくは手持ちカメラの効果が絶大で、上手く試合模様を捉えていることにも感心、倒れたヒロインの目に新井が入って来る辺りの感覚に惚れ惚れとする。監督は僕にとっては初めてとなる若手・武正晴。気に入ったので、次回作は必ず観ることにしよう。

さらに、海田庄吾が担当した音楽が非常に面白い。前半のうちは哀愁のあるメロディーや編曲で通し、彼女が頑張り出すと音楽も管楽器を使うなどして元気が出そうになる曲調になる。エンディングの曲も佳曲。

ご面相的には大の苦手の安藤サクラが「0.5ミリ」に続いて大好演、“1年遅れ”の今年の女優賞は文句なしに彼女に行くだろう。

円安の影響で、98円だったバナナが158円になった。痛いなあ。

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この記事へのコメント

ぬんちゃく
2015年09月18日 01:31
こんにちは。以前「はじまりのみち」でコメントをつけさせて頂いた者です。

私もこの作品が大好きなので、オカピーさんもお好きなんてとても嬉しいです。

私は戦うスポーツの映画というと、他には「キッズリターン」や「レスラー」などが好きなのですが、社会的・生活的な負けと試合の負けがリンクする作品は、色々と主人公に共感しやすいのかもしれません。
↑それゆえに、そうした作品を苦手とする人もたくさんいるかもしれませんが…。

個人的には、安藤サクラさんの熱演はもちろんのこと、クズ男を演じた元ジョビジョバの坂田聡さんの怪演も印象的でした。

これからも更新楽しみにしていますね。
オカピー
2015年09月18日 22:28
ぬんちゃくさん、こんにちは。

僕は野球が好きなので、「ナチュラル」「フィールド・オブ・ドリームス」などがお気に入り。
ボクシング映画にも好きな作品が多いですが、やはり「ロッキー」となるかなあ。
これを見ると、僕はぐっとオーソドックスな指向ですね。

本作は、それらの作品に比べるとぐっとインディっぽい、ネガティヴな主人公の性格に立脚した作品では一番好きな作品になったかもしれないです。

安藤サクラは素晴らしかったですねえ。日本を代表する女優になりましたねえ。現在ネガティヴな人生を歩む人物を演じさせたら右に出る者がないと言っても良いでしょう。

>坂田聡さん
存じ上げませんでしたが、見事な怪演でしたね。
ねこのひげ
2015年09月20日 19:11
『ロッキー』はやはり凄いですね。
もうしわけないけど、ねこのひげも安藤サクラさんのご面相は苦手であります。

ガソリンも安くなったと思ったら値上がりで・・・100円以下だった頃が懐かしいですね。
オカピー
2015年09月20日 20:47
ねこのひげさん、こんにちは。

『ロッキー』は上手かったですよ。
スタローンの脚本の出来も良かったですが、監督をしたジョン・G・アヴィルドセンが映画的感覚にあふれ、実によかった。
スタローンはカメラの使い方などアヴィルドセンに学ぶところが多かったと、後の監督作で伺えました。

>安藤サクラさん
想像で悪いですが、お顔に関しては好きと言う方は少ないのではないかなあ。
しかし、演技は達者。参りました。

>ガソリン
それでも輸入価格は一番高い時の三分の一くらいだからこの程度で済んでいますが、高騰したらどうなるんでしょ。
緩やかなインフレを望んでいる日銀は喜ぶでしょうけどねえ。
路線バスも殆どなく車が欠かせない群馬の貧乏人はガソリンが高くなると、他の物を買い控えなくてはならない。

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