映画評「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」

☆☆★(5点/10点満点中)
2013年イタリア=フランス合作映画 監督ジャンフランコ・ロージ
ネタバレあり

ヴェネチア映画祭金獅子賞(最高賞)を史上初めて受賞したドキュメンタリーということが売りになって集客したようであるが、先日観た劇映画「グレート・ビューティー/追憶のローマ」とそれほど変わらない気がする。昨今の劇映画の中にはドキュメンタリーに限りなく近い観照的・即実的な作品があり、本作のようにひたすら人間を(に)接写するドキュメンタリーでは区別が難しいくらいである。

ローマの環状線周辺に住む様々な人々を捉えた内容で、言葉は登場する市井の人々からのものだけで、ドキュメンタリーとしても極めて即実的な作りになっている。6組プラスα出て来るようであるが、並行描写で進む為メモをつけていなかったのではっきりしない。

最も印象に残るのは、ヤシに巣食う害虫について講釈をぶつ学者さんの部分で、食い尽くされるヤシは人間の魂のようだという発言が本作のテーマではないかという印象を直感的に受ける。
 その他、トレーラーで過ごす老娼婦(少なくとも一人はオカマ若しくは性転換者)二人組、ビルの窓際で妙な会話を続けるインテリ父娘、老いた母の面倒を見ながら厳しい仕事に励む救急隊員、屋敷を映画撮影などに貸し出す没落貴族、ウナギ漁師夫婦、等。最後のウナギ漁師のエピソードで、昼間ウナギの記事を読む夫の反対側で妻が編み物をし、夜漫画を読む妻の反対側で夫が編み物みたいなことをしているところが余りに何気なく点出されているのが可笑しい。

ナレーションも背景音楽も一切排除、文字どおり市井の人々の人生の断片を切り取るという立場に徹しているので、僕のような凡クラには何を楽しんだら良いか解りませんというのが実際。劇映画の形態で同じような物語を交錯させていったほうが凡人には理解しやすかっただろう。ただ、イタリア一般市民の強烈な存在感は、俳優が台詞を読んでいるのと全く変わらない印象を覚えさせ、これには妙に感心させられた。

邦題は「めぐりあう時間たち」からの拝借だな。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年09月20日 18:50
こういう映画ではフェリーニの『フェリーニのローマ』が最高でありましょう。
渋滞を再現するのにセットを組んだそうですけど・・・見事なものです。
オカピー
2015年09月20日 20:28
ねこのひげさん、こんにちは。

ご本人の若い時の再現も出て来る「フェリーニのローマ」は、ドラマともドキュメンタリーとも言い難いごった煮、しかし鬼気迫る作品でしたねえ。
最近イタリアの芸術指向の監督はぐっとお上品になりました。

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