映画評「人生はマラソンだ!」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年オランダ映画 監督ディーデリック・コーパル
ネタバレあり

マラソンで思い出す映画は「マイ・ウェイ」(1972年)である。当時誠に珍しかった南ア製の映画で、型通りを絵に描いたような凡作であったが、それなりに感動させられる部分もあった。本作はその「マイ・ウェイ」が主題歌として使った名曲「マイ・ウェイ」を少しだけ使っていて、やはり人生ドラマを基幹としてこしらえられているが、時代も流れてかの作品のような品行方正一本で作られているわけではない。

税金を滞納するほど追い込まれている自動車修理工場経営者ギーア(ステファン・デ・ヴァレ)が、援助金を得る為に雇ったエジプト青年ユース(ミオン・オアイッサ)の経験談から、ロッテルダム・マラソンに参加しスポンサーについてもらうことで借金返済を為そうと考え、中古自動車屋を経営しているユースの伯父さんにスポンサーになって貰うために好条件を提示する。参加する中年四人が全員完走を果たした時にスポンサー料を払って貰い、出来なかった場合には修理工場を譲渡するというのだ。
 ギーアは実は末期癌で、マラソン完走などとても無理。しかし、残る人生を好きなように生きると決意していた彼は妻や古株社員3人に末期癌であることを告白せずにマラソンに臨むことになる。

人生をマラソンに例えるかのように、主人公だけでなく、古株社員三人にも色々な出来事に遭遇する様子を見れば、配給会社の担当者ならずとも「人生はマラソンだ!」と言いたくもなるというもの。前半の彼らの様子は正にやる気のないぐうたらで、それを象徴するのが体型であるが、目標を持つことで彼らが何気なく変わっていくことは周囲の人間の話から証明される。社員の一人のキリスト教原理主義的な細君まで最後にゴールラインに駆け付けるほどに。

「マラソンをなめている」というご意見を目にしたが、ロッテルダム・マラソンは大規模な市民マラソンである。僅かな参加料を払えば誰でも出られる筈。規定で5時間30分を超えると競技続行が不可となるだけだ。「誰でも参加できる」ことに着想の元があることに気付かなければならない。少し練習しただけで、或いは、末期癌の人が走り切れるほど甘くないということなのであろうが、科学的にはそうであっても、うまく嘘をついて観客を楽しませることを眼目とする映画は科学的な正しさに立脚せずとも許される場合もあるだろう。或いは、【火事場の馬鹿力】ということもあるのではないか。これは科学的にもありうると聞いたことがありますぞ。ただ、練習模様の描写が少なすぎることは否めない。だから、そうした否定的意見が出されるのだ。

全体として、主人公が完走しないまま死に、死んだ後四人の社員たちが車椅子でゴールさせてあげるという展開が少し変化球であると言えるだけで、友情と成長(再生)絡みの王道物語の域を全く出ない。それでも、序盤適度の不真面目さがあるが故に最後の友情には感銘を誘うものがある。

野暮な邦題でも配給会社の人は一生懸命考えているのだ!

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年08月09日 08:12
付けようがなかったので、単刀直入にしたんでしょうね。
オカピー
2015年08月09日 10:11
ねこのひげさん、こんにちは。

前半は「こりゃ、あかん」と思ったのですけど、最後まで見たらそれなりに感銘しました。極めて大衆的というか、通俗的な内容ですが、気分の良いときに観れば良い作品と思えるかもしれません^^

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  • 人生はマラソンだ! ★★★

    Excerpt: 経営難の自動車修理工場を救うため、スポンサーを得てロッテルダム・マラソン完走に挑む中年男4人の奮闘を描くヒューマンコメディー。健康不安に息子との確執など、それぞれに問題を抱える登場人物たちが愛する家族.. Weblog: パピとママ映画のblog racked: 2015-08-08 21:48