映画評「ジャージー・ボーイズ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督クリント・イーストウッド
ネタバレあり

「ジャージー・ボーイズ」では何のことか解らないが、「シェリー」で一世を風靡したザ・フォー・シーズンズの伝記映画である。舞台ミュージカルをそのまま映画化したものらしいが、英語で"musical"とあってもミュージカル映画ではない(但し、ラスト・シーンを除く)。"Musical"という単語は音楽が絡めば使われるので、ビートルズの映画も英語ではmusical filmとなる。本国アメリカに比べ日本でやたらに評価の高いクリント・イーストウッドの最新作。

1950年代初め、16歳の床屋の息子フランキー・カステルチオ(=後のヴァリ=ジョン・ロイド・ヤング)はチンピラの悪友トミー・デヴィ―トー(ヴィンセント・ピアッツァ)を手伝ってちょっとした犯罪に絡む一方で、バンドを組んでいる彼のコネでクラブで歌わせてもらう。かくして彼のグループのリード・ヴォーカルに採用され、やがて有望なシンガー・ソングライターのボブ・ゴーディオ(エリック・バーゲン)を引き入れたことから、1960年代“フォー・シーズンズ”として大きく花開くことになる。

ここまでが前半だが、あの爽やかな歌声のフォー・シーズンズがチンピラであったというのは初めて知り、非常に興味深かった。さすがにイタリア系といったところ。

ところが成功の陰で色々な問題が胚胎するのは世の習い、ヴァリはツアーで家を空けがちになって妻がノイローゼに陥り、その影響もあって後年長女フランシーンが麻薬禍で死んでしまう。これに落ち込んだヴァリをゴーディオが励まして贈った曲が「君の瞳に恋してる」Can't Take My Eyes off You である。ヴァリがソロで歌った60年代を代表する名曲中の名曲で、そう知ると余計に胸にじーんと迫るメロディーとして響く。1980年ごろボーイズ・タウン・ギャングがリバイバル・ヒットさせた時もよく聞いた。

60年代後半グループはデヴィートーの借金問題が発覚、恐いおじさんたちが絡んで事実上の解散に追い込まれる。実際のフォー・シーズンズ若しくはフランキー・ヴァリは別のメンバーを加えて色々とやっているが、映画はオリジナル・メンバーにしか興味がないから、その間のお話はオミットして1990年彼らが音楽の殿堂入りする瞬間にスキップする。ここでオリジナル・メンバーが集結し、四半世紀前に切れた絆や友情を確認するのである。

紹介される楽曲は、ゴーディオが別グループで発表した「ショート・ショーツ」(「タモリ倶楽部」の主題歌)を含め大半を知っているので楽しめるが、音楽伝記映画としては半ば型通りで、新味が余り感じられなかったのは残念。
 語りは上手いものの、登場人物が観客即ちカメラに向かって話しかける【第4の壁を破る手法】も伝記映画としてはマーティン・スコセッシが「ウルフ・オブ・ウォールストリート」で試みているので、実は二番煎じだ。ただ、それをメンバーで繋ぐことで軽快さを生み出したのはさすがイーストウッドのご貫録と言うべし。

出来栄えには余り関係ないが、若きイーストウッドが出演したTV西部劇「ローハイド」を出してくるのはお茶目。ヤクザ絡みで有名なフランク・シナトラの名前がやたらに出て来るのも面白い。

「キネマ旬報」に奉じている批評家にはイーストウッド信者が多いな(本作は昨年度洋画部門1位)。

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この記事へのコメント

十瑠
2015年08月24日 11:13
北野武、イーストウッドは過大評価だと思っているし、「キネマ旬報」も読む時はいつも眉に唾しているので、最後の一文に納得。
「キネマ」は世間の評判に流されやすくなっちゃったんでしょうかネ。
イーストウッド作品として、またフォー・シーズンズの裏話としても興味がある作品でしたが、どうやら“裏話としてのみ”で後日レンタルするやもしれません(笑)

>あの爽やかな歌声のフォー・シーズンズがチンピラであったというのは初めて知り

大体芸能人の多くはその手が多いですよね。
でも確かに、爽やかさに惑われますよね。
オカピー
2015年08月24日 21:00
十瑠さん、こんにちは。

上手いと言えば上手いですが、映画雑誌等で1位になるようなタイプの作品ではないと思いました。
洋楽ファンなので、そちらの方面だけで十分楽しめましたけどねえ。

>芸能人
確か、美空ひばりの少女時代の面倒を見たのも、そちら系ですよね。間違っていたらごめんなさい。
2015年08月25日 10:47
>イーストウッド信者
日本には多いですよね。小林信彦もそうで、イーストウッドに関しては持ち上げ過ぎなんじゃないか、でもエッセイの中でお書きになっているので小林信彦はイーストウッドの大ファンなんだなあと思って読めばいいのかな? になります。
映画スターでもある監督としては、ロバート・レッドフォードやメル・ギブソンのほうが正統派に見えますけれども、このお二人は日本ではあまり話題にならないようで、アメリカでは評価が高いのになんでなのかなあ、と。
フランスのインテリが誉めないからなのかな? フランスのインテリはすごいと思わされることも多いですが、アメリカのB級ものをわざと持ち上げてみせる妙な癖もあるんですけどね。
ねこのひげ
2015年08月25日 17:42
過去がどうあれ、『シェリー』『君の瞳に恋している』などは名曲で、いまだにラジオなどで流れてますし、聞くとジ~ンときますね。
今までの作品に比べて明るいのが大衆受けしたところでありましょう。

美空ひばり・・・・○○組の組長を『お父ちゃん』と呼んでましたね。
オカピー
2015年08月25日 20:17
nesskoさん、こんにちは。

>ロバート・レッドフォード・・・正統派
僕は、20年くらい、イーストウッドよりレッドフォードのほうを高く評価してきたのですが、世間はついてこない(笑)

>フランスのインテリ
そうなんですよねえ。
「カイエ・デュ・シネマ」の連中は、ニコラス・レイを高く評価していますが、僕には理解できないんですよ。
B級映画の監督としてずっと無視されていたサミュエル・フラーなんかも持ち上げていますよね。その影響で80年代以降日本でも褒める人が増えましたが、当方の見る限りな~んということなかったなあ。
オカピー
2015年08月25日 20:27
ねこのひげさん、こんにちは。

>過去
僕は、そういうのは余り気にしないんですよね。
その分野における業績・実力があれば、それで良い、という考え方です。

>『君の瞳に恋してる』
は、かなりカバーされていますね。

>今までの作品に比べて明るい
それは間違いないですね。

>美空ひばり
確かTV番組でそんな話を聞いたことがあったので記しましたが、記憶違いではなかったようで、よかった^^

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