映画評「パッション」(2012年フランス=ドイツ)

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年フランス=ドイツ合作映画 監督ブライアン・デ・パルマ
ネタバレあり

同名邦題の映画が多くあり、紛らわしい。

日本での劇場公開が2013年10月なので多分以前からWOWOWに登場していたのだろうが、何故か見落としていた。ブライアン・デ・パルマが監督をしていると知っては観ないわけには行かない。日本では劇場未公開に終わったアラン・コルノーの遺作(WOWOWで放映済みらしい)「ラブ・クライム」の2年後のリメイクで、監督はアメリカでは干されている感のあるデ・パルマなので、製作はフランスとドイツの合作である。

ベルリン。ニューヨークに本社のある世界的広告会社の女性幹部レイチェル・マクアダムズが、有能な部下である女性ノオミ・ラパスがジーンズ会社の仕事に成功すると、その手柄を横取りして本社への復帰を勝ち取り、歯向かおうとする彼女に嫌がらせを加え、彼女と親しいアシスタントのカロリーネ・ヘアフルトをも辞職するように仕向ける。
 そんなタイミングで、ノオミがバレエ鑑賞に出掛けた夜半にレイチェルが喉を切られて殺される事件が起き、死体現場でのマフラーの一部の発見からアリバイのないノオミが逮捕される。

身に覚えのない彼女がいかにこの苦境を乗り切っていくかを描くミステリーで、「はっきりした状況証拠があればあるほど実は犯人から遠い」というミステリーの定石を巧みに利用してなかなか面白い。半分だけ事実ではないという風変わりな夢落ちの積み重ねも興味深いが、大衆映画の観点からはこの手法を繰り返しすぎる点が少々気に入らない。その結果肝心の最後が曖昧になって締まらない印象をもたらしているのが特にヨロシクない。
 ただ、夢を軸とした作劇を真っ向から否定するとデ・パルマの作家性の否定にも繋がりかねないので、塩梅の問題であると誤魔化しておこう。

が、デ・パルマの演出自体はなかなか好調で、殊に布石を忍ばせじっくり進行する前半はまるで彼が師匠と仰ぐアルフレッド・ヒッチコックのタッチを思い出させ、非常に嬉しい。デ・パルマ自身の意識はともかく、僕は「ダイヤルMを廻せ!」やティッピ・ヘドレン(主演のヒッチコック作品)を思い出しながら観ていた。髪の毛の色の扱いについては、「マーニー」「ファミリー・プロット」のヒッチの拘りに近いものを感じさせる。
 映画サイトを覗いたら、バレエ・シーンを「引き裂かれたカーテン」と関連付けるコメントがあり、大いに頷いた。

いずれにしても、オリジナルを観ないことにはデ・パルマがこの作品で見せようとした狙い、フランス本国でのスパンを置かないリメイクの意義が解りにくい。チャンスがあれば観たいものだ。

それにしても、じっくりと冗長・だらだらの区別がつかない映画ファンが増えたのは残念ですなあ。

デ・パルマは日本での評価の方が欧米よりぐっと高いみたいだね。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年07月12日 06:43
同名映画・・・たしかに!
検索すると、他の映画が引っかかって来て困ります。
誰かさんのキリストの映画も引っかかります。
ブライアン.デ.パルマはよほどヒチコックが好きなんでしょうね。
随所におっ!これは!?というところが観られますね。
オカピー
2015年07月12日 17:19
ねこのひげさん、こんにちは。

>他の映画
キリストの映画も、ゴダールの映画も。他にもありましたなあ。

>デ・パルマ
大作を任されるようになるまでは、それこそヒッチコック・ファンが泣いて喜んで観る作品ばかりでした。
僕にとってのデ・パルマは正にこれであって、この「パッション」はその時代のムードが戻っていてなかなか良かったと思いますね。

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