映画評「オール・ユー・ニード・イズ・キル」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年アメリカ=カナダ合作映画 監督ダグ・リーマン
ネタバレあり

序盤は「また、エイリアン侵略ものかい」「また、スーツかい」てな印象で興味が湧きにくかったが、早々に主人公の元少佐で今はしがない二等兵のトム・クルーズが死んでしまい、すぐに最初の部分に戻る、即ちタイム・ループするところから面白くなって来る。
 時をコントロールすることのできるエイリアンの血液を浴びたことから彼にその能力が生まれたという設定で、都合の良いことに前の記憶が残っているので生きながらえる為に次に何をすれば良いか解っている。但し、彼と一緒に行動する女兵士エミリー・グラントの経験から、死なないことには時間をリセットできず、輸血を行うとその能力がなくなることが解っている為、ピンチになるたびにクルーズは殺される道を選ぶ。

だから、正確には、桜坂洋の原作由来の邦題は内容と齟齬するわけで、All you need (to do) is to be killed(殺されさえすれば良い)であるべきだ。
 邦題はともかく、前に死んだ時の経験を踏まえて、これを延々と繰り返すことで少しずつ死を先延ばしし、エイリアン撃退方法を考え出すという発想が抜群に面白い。エイリアン戦闘ものは言うまでもなく、タイム・ループという発想自体も新味はないが、それを組み合わせるハイブリッド方式により新味が生まれ面白くなった典型と言うべし。

同じ部分を繰り返したり、省略したりする画面の工夫も秀逸で、必要性を考えてよく練られている。しかるに、主人公が思いがけず輸血を受けて能力を失い、エミリーや他の兵隊たちと一発勝負で戦わなければならなくなると映画的な面白味が一気に減少してしまう。その原因の一つは、CG時代の映画によくありがちなことに、戦闘場面が具体的に描写されていないことである。

かくして我々がよく解らないうちにエイリアンに勝ってしまったようで、彼が目覚めてみると、少佐として平和を取り戻した町で迎えられる。

この作品の第二の面白さは、机上の戦略や宣伝しか知らなかった将校が、実戦部隊の兵卒の経験をたっぷり味あわされ、その苦労を身にしみて理解するお話になっている点。多分に政治家への皮肉をまじえた隠し味なのではないかという気がしている。

中国の脅威は間違いなくあるが、我が邦与党議員の現在のがむしゃらな態度は彼らが自衛隊を信用していないことを伺わせる。アメリカが協力してくれないと中国とは戦えないと信じ込んでいるのだろう。それは事実かもしれないが、大きな戦争が始まった時には、与党の国会議員から戦場へ行くべし。それが最大の抑止力だ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年06月07日 14:03
これは小説の方も読みましたけどね。
ようは、ゲームで主人公が死ぬたびにスイッチを切りさえすれば、何度でも挑戦できるというところからできたアイデア物語でありますね。
どう見せるかでちょっと失敗している気がします。

地道なる外交努力で日本に対する信用や信頼が築かれていることを忘れないで欲しいものであります。
オカピー
2015年06月07日 17:17
ねこのひげさん、こんにちは。

タイムループが終わるまでは面白かったのですが、その後がいけませんでした。

>外交努力
中国の為に、中東諸国民に恨まれるなんてことは避けて欲しいのですがねえ。
世界のどの民族もそうですが、一度恨み始めたらそう簡単に忘れませんから。ましてイスラム・テロリストは死ぬことを恐れませんから、大変です。
北朝鮮はどうにもならないなあ。

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