映画評「アンツィオ大作戦」

☆☆★(5点/10点満点中)
1968年イタリア=アメリカ合作映画 監督エドワード・ドミトリク
ネタバレあり

最近戦争映画は欧米で人気がなく、アングルを付けたもの以外はとんとお目にかかれないが、僕が映画を観始めた1970年代には1950-1960年代に大量に作られた洋画がTVで連日のように観られた。当方も男の子なので戦争映画は好きだったが、反面教師としての効果絶大で厭戦的になった。画面で作り物を観る分には結構でも、実際の戦争なんか真っ平御免である。
 安保法案に反対する人は平和ボケしているという意見には疑問ありで、実際には映画や本で嫌になるほど戦争に触れている人が多く反対していると思う。中国の脅威がそこにあることくらい誰も解っている。

前置きはともかく、昔風の戦争映画、それも少し大作風のものが観たくなったので、図書館で偶然見かけたこのシャシンを選んでみた。40年くらい前に観たものの記憶に余り残っていない為、印象としては初見に近いが、記憶に残っていないということは出来栄えも推して知るべしであって、エドワード・ドミトリクの監督作品としては余り面白くない部類に入る。しかも、期待した“大作風”でなかった。

1944年、アンツィオ上陸作戦の一環で、従軍記者で通信兵のロバート・ミッチャムが、属する小隊と共にアンツィオとローマを繋ぐラインに沿って偵察、将軍に進軍を進言するが、将軍が兵隊の被害を抑えようともたもたしている中やがてドイツ軍が防衛ラインを建設しようとしていることを知るが時既に遅く、結局味方の大隊は尽く全滅し、小隊のメンバーも次々と戦死していく。
 上陸作戦は成功したものの多数の被害を出した将軍は「兵隊の生死を気にしては戦争に勝てないといったナポレオンは正しかった」と言って更迭され、ミッチャムは「人が戦争をするのは楽しむ為だ」とシニカルに言い放つ。

かような戦争観はひねくれていて興味深いが、それが本当に面白くなるには、戦争映画としての結構をもっときっちりと整える必要がある。実際には「史上最大の作戦」(1962年)や「バルジ大作戦」(1965年)などと違って戦略を見る面白味が全くなく、敢えて言えば幾つかの戦闘を見る面白味に留まる。
 特に、前門に火炎放射する戦車(珍しいですな)という虎、後門に地雷原という狼がいて苦慮し、中国方式という大きな石を投げて地雷原を通り抜ける道を作り出す、というところはスケールは小さいものの具体的で楽しめる。これが実際の戦闘に役立つかどうか知らないが、この程度の嘘っぽさは映画らしくて良い。

しかし、この戦争映画も言語がダメであった。製作がイタリア(ディノ・ラウレンティス)であるから、イタリア人はイタリア語を話すが、ドイツ人は英語を話す。アメリカ人しか出て来ないと信じて観ていた為、実はドイツの将軍が電話で作戦の話をしている場面を1分ほどアメリカ側と思っていた。どうも会話が変なので軍服に着目したらドイツ軍であった。
 持論通り、複数の言語が交錯する戦争映画ではその国の言葉で話されないといけない。混乱してつまらなくなるだけである。字幕を読みたがらないアメリカ人をターゲットに映画を作るとこういうことになる。

本作が作られた時代とはまた違い、映画がグローバル化され個性を失う一方で、アメリカ市場が映画関係者の専らの関心となりつつある。見た目がアメリカナイズされただけでなく、英語をしゃべる欧州映画が増えて来た。アラン・ドロンの全盛期には、フランス語版と英語版を各々別に撮影する(吹き替えではない吹き替え)なんてこともあったが、英語オンリーなのである。そこにあるのは金儲け主義であって、自国の矜持などどこにも見当たらない。

世界はアメリカを中心に回っている・・・か。イスラムにおける“パンドラの箱”を開けたのは、アメリカに他ならない。日本で自爆テロが起きたら、アメリカを恨むよ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年06月28日 12:22
いまいちな映画でありました。
『史上最大の作戦』などがヒットしたので作ったのかな?

いずれは日本国内でも自爆テロがあるでしょうね。
どうしようもない鬱々として気持ちを持った人間が増えてますからね。
あの宗教に被れたバカがやりかねませんね。
オカピー
2015年06月28日 21:41
ねこのひげさん、こんにちは。

この作品が作られた頃が戦争映画のピークで恐らく洋画だけでも数十本公開されているのではないですかね。
 原理主義者は名前に反して少しも原理を守らず、それを曲解しているんですけど、困ったものです。

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