映画評「パークランド ケネディ暗殺、真実の四日間」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督ピーター・ランデズマン
ネタバレあり

「ダラスの熱い日」(1973年)「JFK」(1991年)など幾つかの力作に続く、ジョン・F・ケネディー大統領暗殺事件をテーマとする作品。証文の出し遅れと言えばそれまでだが、事件の真相には大して興味を示さず、事件に絡んだ人々を観照的に捉えてなかなか捨てがたい佳品である。

1963年11月22日ダラスに降り立った第35代米国大統領ケネディーは僅か1時間後に帰らぬ人となる。妻と共にパレードの様子を撮っていたザブルーダー(ポール・ジアマッティ)は暗殺の瞬間を捉えてしまい、腰を抜かす。
 シークレットサービスのフォレスト・ソウルズ(ビリー・ボブ・ソーントン)は彼にフィルムの提供を要請し、共有することになる。
 大統領の手当てに当たったパークランド・メモリアル病院の研修医キャリコ(ザック・エフロン)は二日後には暗殺犯と思われたリー・オズワルド(ジェレミー・ストロング)も診ることになる。
 リーの兄ロバート(ジェームズ・バッジ・テール)は奇怪な言動の目立つ母親(ジャッキー・ウィーヴァ―)をよそに終始冷静な態度を維持する。

いずれの関係者からも偉大な人物への尊敬と喪失感が感じ取れ、心を打つものがあるが、映画的には最後のシークエンスのレトリックに感心させられた。
 片や栄光に包まれて葬られるケネディーと片や棺を担ごうとする者もいないリー・オズワルドの葬儀の対照を、同時に、葬儀と捜査資料の焼却という喪失の類似を、同じ文脈の中に描いて誠に鮮やかである。監督のピーター・ランデズマンはジャーナリスト出身でこれが初メガフォンだそうだが、才能を非常に感じる幕切れの処理であった。

リーの兄であるロバートの人物像にも感銘を誘うものがあり、弟が犯行を起こした(と思われる)ダラスに残り続けたという。葬儀の最中に棺を担ぐ協力者を新聞記者たちに求める場面も印象深い。恥じずに声を掛けるロバートが立派であるのは言うまでもないが、それに潔く応える記者も立派である。こういうところにアメリカ人の良さを感じる。

因みに、時の大統領が国防上の必要性を理由に拒まない限り、2017年にこの事件に関して得られた資料が全て公開されることになっている。2039年公開だったのを映画「JFK」が22年早めたのである。アメリカ人は映画を馬鹿にしない。

「JFK」で想起させるのは、秘密保護法。憲法裁判所が日本同様にないアメリカでも違憲として間違いなく廃案になったとアメリカ人は言う。小選挙区制で日本の政治は劣化したかもしれない。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年06月21日 12:08
衝撃的な事件でしたからね。いまだに?がいくつも並びますね。
映画はアメリカが生み出した芸術でありますからね。
誇っていいであります。
オカピー
2015年06月21日 18:10
ねこのひげさん、こんにちは。

2017年に情報が開示されると良いですね。
クリントンになるか、ブッシュ弟、或いは別の人になるか知りませんけれど、変な理由を付けて開示を見合わせるなんてことのないように。
39年になると、当方多分死んでいるから・・・

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  • 「パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間」

    Excerpt: 事件の周囲にいた人々が、その後、どう動いていたのか。 Weblog: 或る日の出来事 racked: 2015-06-19 10:45
  • 『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』

    Excerpt: (原題:Parkland) ----これって、あまりにも有名な話だよね。 確かオリヴァー・ストーン監督も『JFK』を作ってているし…。 なにか目新しい事実でも出てきたの? 「う~ん。 ケネディの暗.. Weblog: ラムの大通り racked: 2015-06-23 14:10
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