映画評「アンディフィーテッド 栄光の勝利」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2011年アメリカ映画 監督ダニエル・リンジー、T・J・マーティン
ネタバレあり

日本未公開だが、2011年度のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞している。2005年に作られた実話もの「コーチ・カーター」をそのままドキュメンタリーにした内容と思えば【中(あた)らずと雖も遠からず】。違うのは扱われているのがバスケットではなくアメリカン・フットボールということだが、これは違ううちに入るまい。一番の違いはコーチが白人であるということである。白人だからこそ本作の狙いにちがいない“教育の意味”がより鮮明になったと思われる。

この白人コーチはビル・コートニーさんと言って、ボランティアで落ちこぼれ高校の落ちこぼれアメフト部のコーチをしている。彼は白人であるが、父親に恵まれなかったということで、余り恵まれた環境で生活して来なかった黒人の教え子に対して深い理解がある。
 体格が立派で動きが速く選手として有望なO.C.は成績が悪い為に大学への進学が危ぶまれている。コーチが尻を叩いてその気にさせる。
 “マネー”は好青年だが、怪我をした為に後半戦を棒に振る。コーチは絶望せずにリハビリに徹して最後のチャンスを生かせと説く。最後の試合に漸く出場することができた彼は、その頑張りに感激し全額学費を払ってくれる篤志家に巡り逢い、O.C.と同じサザン・ミシシッピ大に進むことが出来る。
 もう一人は一番の不良で少年院帰りのチェイヴィス君。気が短く周囲と上手く折り合えず遂にアメフト部から去ってしまう。が、コーチの親身の声掛けにより復帰し、最終戦の前にマネーを称える言葉を贈るまでに成長する。

「コーチ・カーター」でも環境に恵まれない少年たちが教育水準の低さ故に犯罪に手を染めていくことが指摘されていた。本作では犯罪云々の言説は出て来ないまでも同様のことが感じられる。

とにかく、このコーチの指導ぶりには感心。説教が上手くて生徒が次第にその気になっていく。多分このコーチに教わった少年たちは犯罪に手を染めることはないだろう、などと無責任にも考える。勝ったことがないチームを負けることのないチームにまで強くしたことより、そのことのほうが重要である。
 また非常に正直でもあり「生徒より自分の子供たちの方が可愛い」と言う。「子供たちはそう思っていないだろうが」などと言いつつ、結局コーチを務めたメンフィスのマナサス高校が初めてプレーオフに出場を果たした年を最後に高校を去っている。

最近のドキュメンタリーの良い傾向として、勿論素材の性格による部分があるとは言え、インターヴューイーの顔を漫然と映し出したままという作品が減っている。昨年大いに楽しませてくれた音楽ドキュメンタリー「バックコーラスの歌姫たち」しかり、本作しかりである。

出て来る少年たち、とても少年には見えません。しかも、似たように見え、誰が誰だが殆ど区別もつきません。悪しからず。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年02月15日 07:17
実話物が増える傾向があるのはアイデアがないということでありましょうか・・・
日本の方がオリジナルな話が多いような気がしますが・・・・
ただ予算上作品が酷くなるようで…
オカピー
2015年02月15日 20:27
ねこのひげさん、こんにちは。

>日本の方がオリジナルな話が多いような
断然そうでしょう。
その昔日本人はオリジナリティーがないと言われたのが嘘のようです。

他方、実話ものが作りにくい風土という背景もあるかもしれません。
明治以降の天皇が主だった人物として作られた映画がないのが論より証拠でしょう。
桑田佳祐が天皇の形態模写をしてなんたらかんたらできる「日本は何と自由な国だ」という人がいましたが、英国ではエリザベス女王が喜劇に出る、半ばダイアナの敵役のような形で出るのに比べれば、大したことはないです。
自由でないというより、皇室に関しては「恐れ多い」という思いが強いのでしょうが、戦後の政治家を風刺・批判目的で実名で描いたドラマ映画もありませんし、風刺でも何でもない学者たちでも実際の名前とは違う名前を用いられることが多い。配慮と言えばそうなんでしょうが、ちょっと歯がゆいです。
現役大統領の人となりを面白く描いた「ブッシュ」という映画が作れるアメリカ映画がうらやましくもあります。

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