映画評「47RONIN」

☆☆★(5点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督カール・リンシュ
ネタバレあり

かの「忠臣蔵」の物語をハリウッドが映画化したと聞いたのでどんなものになっているとかと思って観たら、竜やら大型の鹿もどきが出て来るダーク・ファンタジー仕立てでとんでもないことになっていた。勿論ファンタジーとして面白ければそれでOKであるが、ダーク・ファンタジー自体に食傷気味の僕が楽しむには余程のアイデアが必要だ。

赤穂藩の浅野内匠頭(田中泯)が将軍徳川綱吉(ケイリー=ヒロユキ・タガワ)を迎えた日に、彼に嫉妬する隣国藩主の吉良上野介(浅野忠信)が妖術使いのミヅキ(菊地凛子)を使って内匠頭に幻覚を催させ、丸腰の上野介に斬りつけるという失態を演じて切腹の憂き目に遭う。将軍は浅野の娘であるミカ姫(柴咲コウ)を人質として上野介に藩を任せることになる。主君を失った大石内蔵助(真田広之)以下46名が仇討を誓って1年間雌伏、内匠頭がかつて助けて今は長崎の出島で見世物に出されていた異人とのハーフであるカイ(キアヌー・リーヴズ)の力が必要と気付いた内蔵助が彼を救い出す。かくして47人となった赤穂義士はミカ姫との祝言で油断している上野介の城に侵入、襲い掛かる。

人物こそ日本人だが、画面のムードや衣装は多分に中国調だったり韓国調だったり、落着かない。また、昔から竜の出て来る映画は僕と相性が悪く、本作も余り楽しめなかった。これなら若い時に真田広之が出演した「里見八犬伝」のリメイクでもしたほうが良かったのではないかとさえ思う。

しかし、作者たちが切腹が観たい(若しくは見せたい)のでパラレル・ワールドの「忠臣蔵」になったことは想像に難くない。かくして俎上に上げたいのは武士道であるが、先日観た「最後の忠臣蔵」の幕切れのように、時に理不尽ささえ覚えさせる武士道自体に現在の日本人の理解を超える部分が多いので、僕にこの作品で打ち出される武士道をとやかく言う資格はない。それどころか、最後に大石内蔵助が「敵と同じ世界に生きていけない」と言う言葉は、現在鋭意勉強中の「礼記」の「父の讎(あだ)はともに天を戴かず」との文言に見事一致している。

武士道についてはこれで良しとしても、徳川体制の厳しさについては西洋的合理主義で処理している為全く厳しさが足りず、アメリカ映画と解りつつ、何だかがっくりしてしまう。この厳しさを描かずして武士道の理不尽さは解りにくいからである。尤もその理不尽さを描く気が作者側にないので現状で良いのかもしれないが、「最後の忠臣蔵」を観た後ではすっきりしないものを覚える次第。

キアヌー・リーヴズのカイは殆ど劇の中で意味を成していないが、境遇が「眠狂四郎」にそっくり。

儒教の考え方が、控え目な日本人には合ったのだろうなあ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年12月07日 10:14
自来也なんかでガマが出てきたりしているから、忠臣蔵に龍が出てくるのはいいかな?と思っていたんですけどね。
いくら龍好きのねこのひげでもこれはなかったです。
これだけの情報社会にあって、日本を描く時に、あいもかわらず中国と韓国が入り混じるのは何なのでしょうね。
人種的偏見があるのかな?
オカピー
2014年12月07日 20:39
ねこのひげさん、こんにちは。

>自来也
戦前版を見ましたが、なかなか面白かったです。

>日本を描く時
尤も日本人も映画にでも興味がない人は、欧米各国の区別が出来ないでしょうけど、昨日今日作り始めたのではないのだからもっと真面目に作れとも言いたくなるのが人情。
一部に正しい日本の扱いをしているから、却ってそうでない部分が目立ちましたね。

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