映画評「ビッグ・パレード」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1925年アメリカ映画 監督キング・ヴィダー
ネタバレあり

1956年にハリウッド版「戦争と平和」を作ったキング・ヴィダーがその31年前に演出したサイレント時代の戦争映画の傑作で、なが~いこと観たかった一本。「戦争と平和」におけるボロディノの戦いの描出も圧巻だったが、この作品の戦闘場面も凄い。

1914年第一次大戦が勃発、経済的に大成長を続けるアメリカも巻き込まれ、富裕層も中流階級も下層階級もこぞって出征することになる。富豪の息子ジョン・ギルバートもその一人で、土木関係のカール・デインやバーテンのトム・オブライエンと親しくなる。戦場では資産的階層など関係ないのだ。

ギルバートはアメリカに恋人クレア・アダムズを残しつつ、駐屯先のフランスの村で娘ルネ・アドレーと相思相愛の仲となるが、出陣が決まった為に別れなければならない。
 二人が別れる場面がこの映画第一の見どころで、ルネが大部隊の移動していく中からギルバートを必死に探す部分の映画的な鮮やかさよ! 続いて別れを惜しむが余り彼を乗せたトラックに必死に縋りつくも振り落とされた彼女を延々とギルバートの主観を交えて捉える部分も映画的な興奮を禁じ得ない。映画史上の【別れ】の名場面を選ぶなら上位に入れなければならないなあなどと思いながら見ておりました。

それまで前線場面ではないということもあって明朗なトーンで推移するが、この場面を境に酷烈でシリアスなトーンに変わり、この辺りは「チャンプ」(1931年)でも見せたヴィダーらしい絶妙なトーンの扱いと言うべし。

スペクタクルとしては題名にもなっている大進軍の模様にまず圧倒される。先が見えないくらいのトラックの大行列! ギルバートらの歩兵が森の中を進む場面で、二列になった部隊の進攻ぶりを横から、主人公の横や後部の兵隊が倒れていく様子を前面から捉えるところは、サイレントで銃撃の音が聞こえないせいか異様な迫力があり、映画的興奮を禁じ得ない。その他攻撃場面は全て今見ても文句なしの迫真ぶり。

夜の塹壕の場面などに5年後に作られるトーキー戦争映画の傑作「西部戦線異状なし」を思い出させるものがあるが、かの映画の出来る道筋を付けたのも本作と言うことが出来そうだ。これに関しては、戦争を、愛国心や敵愾心といった観念的な態度ではなく、個人との関係において描く、アメリカ戦争映画の転換点となった作品である旨を双葉十三郎先生が述べている。

弁士付きだからということもあるのだろうけど、台詞が最小限で想像力を要するサイレント映画をきちんと理解できた80~100年前の大衆の理解力は大したものだよ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年12月14日 10:26
新しい物に対する好奇心が半端なかったという事でしょうね。
自分で行動しなければなにも手に入らなかった時代でもありますしね。
作りても同様だったんでしょう。
オカピー
2014年12月14日 18:30
ねこのひげさん、こんにちは。

生まれたての商売でしたから当然ですが、映画監督も若手ばかりでした。
しかし、戦前の日本映画は殆どが観られない。小津も溝口も初期の作品は観られない。当時の日本の映画会社は保存のことなんて全く考えていなかったようです。
欧米のサイレント映画を観て驚くのは、観られるだけでなく、綺麗に保存されていること。文化への理解が違うのですね。

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