映画評「スノーピアサー」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年韓国=フランス=アメリカ合作映画 監督ボン・ジュノ
ネタバレあり

フランスのコミックを韓国の実力派ボン・ジュノが映画化した、韓=仏=米による合作ディストピアSF映画。キリスト教国の人々の作った内容であるという印象を強く残す。

映画を作った時点では未来であるが、僕が観た今日現在既に過去である2014年7月からお話は始まり、温暖化対策の為にCW-7という冷却物質を散布したところ極端な氷河期状態になってしまい(通常言う氷河期程度では平均気温が数度下がるだけなので生命が死滅しないのは常識)、スノーピアサー号という終始止まらずに地球上を巡っている長い列車に乗せられた人々以外は死滅してしまう。

まず、このスノーピアサー号がディストピア版【ノアの箱舟】みたいだなという感想が浮かぶが、その後の展開からこの列車が現実の全地球の縮図であり、人類史の縮図であることが解るような仕組みで展開していく。

2031年、最下層ならぬ最後尾に閉じ込められた人々は栄養失調状態で革命気運が起きており、その武闘派的リーダー的存在のクリス・エヴァンズが思想的リーダーのジョン・ハートと示し合わせて行動に移す。別の場所には、別車両(社会的階層に準ずる扱いで、先の車両ほど上流階級という設定)の扉を開けることが出来る技術屋の韓国人ソン・ガンホがいて、中毒なっている為一種のアルコールをしきりに要求する。彼にはヨナという名の娘(コ・アソン)がいるが、彼女は鯨に飲み込まれる(聖書の挿話)代わりに列車に閉じ込められたヨナ(但し名前は偶然?)かもしれない。

そうとなれば幕切れは推して知るべしであるが、その前段としてエヴァンズがスノーピアサー号を支配している統治者(エド・ハリス)のいる先頭車両までどう辿りつくかというサスペンスが、ソンとのコンビにより、賑々しく展開する。

最終的に浮かび上がるのは、列車がハリスを神とする地球の縮図であるという哲学的思想。しかし、作者たちは人類の考える古い摂理に満足せず、新しい世界の創造を考える。即ち、気温が上がりつつある現実に気付いたソンが集めたアルコールで列車を爆破、ヨナが鯨ならぬ列車が抜け出し、人類のリセットがここに始まるのである。
 そうなるとヨナは変じて新規のイヴであり、一緒に抜け出した黒人少年をアダムとする、新しい人類史の始まりという風に解釈できる。

ディストピア映画は、それに準じようと、抗おうと、キリスト教的世界観をベースに作られている、ということがよく解る作品である。そんな面倒臭いことはどうでも良いと思うような人でも一応楽しめる娯楽性豊かな作品であるが、やはり聖書絡みで観たほうが興味深く観られる。

欧州哲学の歴史はニーチェまで神の存在との格闘であった。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年12月07日 10:45
あの程度で死滅するのはどうかと思いますけどね。
韓国SF映画ですからしかたないか?
しかし、以前観た韓国のSF映画は酷かったですけどね。
怪獣映画も酷かったな~
ハリウッドの『ゴジラ2014』は、まあまあでありました。
オタクのおっさんがプロデューサーですからしかたないところです。
しかし、『ゴジラ』を作りたくて超大金持ちになる根性には敬服いたしました。
オカピー
2014年12月07日 20:22
ねこのひげさん、こんにちは。

>韓国のSF映画は酷かったですけどね・・・怪獣映画も
僕も3本くらい観ていますが、専門的な言い方をすれば、映画文法も知らない連中が作ったと言いようがなく、本当に酷かったです。
ボン・ジュノはまあ純文学の作家ですから、一応ジャンル映画の形態を取っても、見せる力はありますね。

>『ゴジラ』を作りたくて超大金持ちになる根性
金持ちになれるかどうかもモチヴェーション次第ということですかね。

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