映画評「ムード・インディゴ うたかたの日々」

☆☆(4点/10点満点中)
2013年フランス映画 監督ミシェル・ゴンドリー
ネタバレあり

一昨日観たミシェル・ゴンドリーの旧作「僕らのミライへ逆回転」(2008年)は世評ほどは買えないものの退屈はしなかった。しかし、この最新作はいけません。僕の印象では初めて知った「ヒューマン・ネイチャー」(2001年)など他人の脚本を映画化したほうが個性が出過ぎず良い結果に結びつくような気がする。

勉強不足でその存在すら知らなかった(現代文学には本当に弱い)が、20年くらい前に見た復讐もの「墓にツバをかけろ」(1959年)の原作者ボリス・ヴィアンの小説「うたかたの日々(=日々の泡)」をゴンドリーらしくファンタスティックに(最近の和製英語ならファンタジックに)映像化した異色作でござる。

資産家のロマン・デュリスがオドレー・トトゥと恋に落ち結婚するが、彼女が肺に睡蓮が咲く奇病にかかり治療に財産を使い果たした為、慣れない労働にあくせくするものの、結局彼女は死んでしまう。

といったお話で、最初のうちはCGと実写を合成して人々の足の伸びたり、くねくねしたりするコミカルな画面を面白がって観ていたが、オドレーが病気になってからどんどんつまらなくなり、最後の方は相当じりじりしながら観ることになった。ゴンドリーの映画でこんな印象を持つとはね。
 大体「ミライ」のジャック・ブラック同様、本作のデュリスも抵抗感のある男優で減点要素であるにしても、それだけでは説明しきれない。

乱暴な言い方をすれば、独り合点が目立って観客が置いてきぼりにされているのである。もう少し具体的に言うならば、ファンタジーと言えども現実と或る程度結びつけて有機的にしなければならない一方、その現実が余りに過剰になって直截的若しくは散文的になってもいけない。その間の匙加減が難しく、本作の場合は、前半は甘すぎて胃がもたれ、資産家が貧困に苦しむ姿により経済格差の問題を匂わせている後半は塩味が効きすぎて素材本来の味が消えてしまっている。料理に喩えればそんな感じなのではないかと思う。

まあ、ストップモーション・アニメの手法(実際にはコンピューターによる処理であろう)を使った部分など漫画的で一応は楽しめるし、物語のトーンが暗くなるにしたがって画面の彩度が下がって遂にモノクロになるといった工夫も良いが、ジャン=ポール・サルトルのパロディーの哲学者ジャン=ソール・パルトルと主軸となるお話との関係など解りにくいところが多く、商業映画としては不親切すぎる。

原作を読めば解るかな。しかし、映画は映画単独で解らなければいけないのも確か。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年11月24日 15:54
ねこのひげは、一応原作も読んでみることにしておりますが、まあ、原作も似たり寄ったりでありますね。
かなり変えてある映画というのもありますけどね。
主人公が原作では白人なのに映画では黒人になっている映画もありました。
どちらがよいかは観ている人の主観でありますけどね。
オカピー
2014年11月24日 21:46
ねこのひげさん、こんにちは。

>原作
ヒッチコックは原作通りに作るのが大嫌いで、「レベッカ」は原作に近いし、セルズニックに編集されたので「自分の作品ではない」と仰っていますし、評価の高い「ダイヤルMを廻せ」も舞台劇と余り変わらないのでご本人は余り気に行っていないようです。

>原作では白人なのに
「墓にツバをかけろ」が正にそんな感じではなかったかなあ。あれは白人が黒人をそのまま演じていたような気がしますが。

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