映画評「ハワイ・マレー沖海戦」

☆☆★(5点/10点満点中)
1942年日本映画 監督・山本嘉次郎
ネタバレあり

「永遠の0」の放映に関連してWOWOWが放映した戦争映画である。戦後のそれとは違って戦時中に作られた戦意高揚の為の国策映画であるが、多くの方が仰るようプロパガンダ色は案外薄い。
 ただ、予科練に志願する一応主人公とされる少年(伊藤薫)らに対する上官たち(藤田進ら)の親しみやすさは、戦争を経験した当事者により戦後書かれた小説や作られた映画で描かれたものとは全然違う。これは今自衛隊が募集の為に取っているソフトなアプローチと似たようなものであろう。

銃後の人々特に母親(英百合子)の「子は国に捧げたもの」という達観は木下恵介監督の「陸軍」(1944年)の母親(田中絹代)とは大分差がある。勿論本音でそんな達観の境地に至った母親は殆どいなかったと思う。だから、国策映画なのにあの幕切れを撮った木下恵介の反骨精神は実に見上げたものであったと思う。

翻って、30年くらい前に観た時に注目したのは専ら円谷英二が担当した後半の戦闘部分の特撮である。これは碌にお金もなかったであろう戦中に作られたことを考えると相当上出来。飛行機がハワイの崖を巡っている部分は飛行機ではなく、崖の方を回したと聞いたような気もするが、どちらにしてもかなりリアルだ。建物や軍艦はミニチュアではやはり不自然に感じる部分があるものの、これとてSFXという条件下では現在のものと大差がない。大したものである。

内容に関わらず国策映画には批判的にならざるを得ないし、実際ドラマとして描写のバランスが甚だ悪くて弱体であるが、SFXの出来に免じてこれくらいの☆は進呈しておきたい。

十年もすると日本でも徴兵制が始まるかもね。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年10月14日 17:32
空母や戦艦は実物大模型とミニチュア模型を作ったそうで、後にこれを観たGHQが実写と勘違いして、フイルムの提出を強要したそうです。
プールに寒天で作った海面を作り、ミニチュアの艦船を浮かべ、その後ろに航跡を描いたり、精密な真珠湾模型を作ったりし、実物大模型の飛行甲板の上を実物の飛行機を走らせて撮影したりしたそうです。
ハリウッド映画『トラ・トラ・トラ』『パールハーバー』に多大なる影響を与えたそうです。
オカピー
2014年10月14日 19:40
ねこのひげさん、こんにちは。

ミニチュア模型のところでは波の大きさが不自然になってしまうので、今の観客にはばれてしまいますが、当時の人なら本物と思うかもですね。
地上の模様は、日本人らしく、実に精密に作っていて感心しました。

>『トラ・トラ・トラ』『パールハーバー』
VFXのない時代の前者の迫力は凄かったですねえ。勿論本物も交じっているわけですが、人物が飛行機に轢かれそうになる場面のスタントには驚きました。あれっ、本物ですよね。
『パールハーバー』は内容的に日本では評判が悪かったものの、戦闘アクションは相当優秀でした。

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