映画評「ペーパーボーイ 真夏の引力」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督リー・ダニエルズ
ネタバレあり

プレシャス」を作ったリー・ダニエルズ監督らしい一筋縄で行かないミステリー風南部ものである。原作はピート・デクスター。

フロリダ州、水泳部員として活躍していた大学から放逐された若者ザック・エフロンが、父親スコット・グレンの発行する地方新聞を配達するある日、近くの刑務所に服役している死刑囚ジョン・キューザックが冤罪ではないかと詳しく調査するために、大新聞の記者として働く兄マシュー・マコノヒーが黒人記者デーヴィッド・オイェロウォを連れて帰郷、若者は彼らの手伝いをすることになる。
 その過程で沼地に住んでいた野卑そのもののような死刑囚に不釣り合いな中年美人の婚約者ニコール・キッドマンと関わり合いが出来、母親に出て行かれてマザコン気味のエフロン君は彼女に傾倒してしまうが、とてもまともな女性とは思えない。しかもマゾの同性愛者という兄の性癖を知って衝撃を受けた挙句に、冤罪の可能性が高いとして釈放されたキューザックの狂気を目の当たりにする。

時代背景は黒人の扱いが少しずつ変わり始めたが故に南部では寧ろ混沌としている様相を示す1969年である。死刑囚の冤罪問題は若者が強烈な個性を持つ人々と知り合う過程を描くための狂言回しとして機能しているだけで、映画的ムードとしては「夜の大捜査線」(1967年)のミステリー色を薄くしてその代わり人物の言動を21世紀的に過激化したと思えば当たらずとも遠くない。
 ダニエルズもその時代の映画をなぞるような見せ方をしていて、特に、エフロン君が、この世に生きる人々の汚濁を全て飲み込んでいるような、実際には葦が茂り毒蛇やワニがうろちょろする恐ろしい沼地を去っていく幕切れのロングショットにエンド・クレジットが挿入される部分など正に1970年前後の映画を観るようである。その時代に正に映画を観始めた僕は妙に嬉しくなったりもした。

このブログの映画評では余り俳優については触れないことにしているが、本作ではそういう訳にも参らぬ。大物俳優ニコール、マコノヒー、キューザックがこれまで演じたことのないタイプの人物を強烈無比に演じているからである。この三人が初めて相見(あいまみ)える刑務所でのシーンはこれほどの大物連が絡む場面としてはちょっと例がないと言っても良いくらい過激。

ここを筆頭に内容的にご挨拶に困る部分もあるが、人間の嫌な部分をこれでもかと見せる意味では一見の価値あり。挨拶にも採点にも困るです。

連日最高気温が36~37℃。日本も亜熱帯化しているね。こんな映画を観たら、汗が余計に吹き出すよ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年08月03日 18:18
1960年代・・・・ディープサウスの暗く陰鬱とした雰囲気がよく出ていたと思います。
男はプレスリー、女はマリリン・モンローを思わせるスタイルでありますね~
黒人差別は、南アフリカを非難できないひどい時代でありましたからね~
まったく、うだるような暑さで、冷夏とか言っていたのが嘘のようであります。
いまに、多摩川あたりでワニやピラニアが普通に見られるかも・・・・(*_*)
オカピー
2014年08月03日 20:29
ねこのひげさん、こんにちは。

僕はこの手のドラマを「南部もの」と称しています。若い頃のポール・ニューマンがよく出演していました。テネシー・ウィリアムズの戯曲などはほぼ「南部もの」と言って良い葛藤ドラマで、必ずしも南部ではなくても良いのですが、大概舞台は南部です。

当時は、黒人と女性とではどちらが早く大統領になるかということがぎりぎり想像するのが許されたくらいでしょうね。

>冷夏
個人的には、期待したんですが。
経済上は万々歳でしょう。安倍さんは運が良いな。

マラリアの発生北限が大阪くらいになる可能性があるとはだいぶ前から言われていますよね。いやですね。
僕が何年か前に写真に収めた蝶は、20年前までは近畿が北限、10年前に静岡でやっと確認された蝶でした。それでも驚かれたようですが、もう群馬まで。驚きです。

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