映画評「アップサイドダウン 重力の恋人」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年カナダ=フランス合作映画 監督フアン・ソラナス
ネタバレあり

粗製乱造とは言わないまでも過剰供給気味のチャンバラSF(SFアクションのことですな)に食傷気味なので、同じSFでもサイエンス・ファンタジーの方にそそられる。

水平方向に角を突き合わせるような形で向かい合っている双子惑星でのお話で、互いの重力は反作用を起こす。主人公アダム(ジム・スタージェス)側から見て言えば、上の世界に属する物質は、人間を含めて、基本的に“上に落ちる”のである。そして、互いの世界に属する物質は重力を調整する役には立つが相手の世界にあるとすぐに発熱するので使い物にならない。

という基本設定を踏まえて展開するラブ・ストーリーでござる。

アダムが少年時代に知り合って、墜落死したと思っていた上世界に住むエデン(キルステン・ダンスト)が生きていると知り、彼女と再会するために、両社会を繋げているトランスワールドなる会社に入社する。叔母秘伝のピンクの蜜がたるんだ肌を一時的に元に戻す化粧品に有用であるため採用されたのである。上社会の同僚(ティモシー・スポール)の名前を騙ったり、首になった彼のプレゼントを使って時間限定の逢瀬を楽しむうち、やがて少女時代の落下で消えていた彼女の記憶も戻るが、下社会の人間が上社会に入るのは大罪なので官憲に追われ、下の世界でも秘法を手に入れたい会社から脅迫される。

下社会でのプロレタリア映画的要素を徹底して示しながらも、フアン・ソラナスなる監督が見せたかったのは、専ら「ロミオとジュリエット」以上に結ばれる可能性がない二人がいかに困難を克服してその思いを成就するかという経緯のみである。だから、基本設定はナレーションで簡単に澄まし、恋愛模様が一定以上進むと唖然とするくらいお話を端折ってしまう。バランスの悪いこと甚だしいものの、長すぎるよりは多少ましと言えるかもしれない。

その後の詳細は省略するが、アダムとエデンの名前から想像されるようなものであると言えば推して知るべし。エデンの名前をイヴにしなかったのは、それではさすがに身も蓋もないと思ったからだろうか? 

かかる次第で、お話の骨格自体はありふれていると不満を覚えつつ、上と下の世界が間に鏡を置いたように対峙する風景が強い印象を残す。町並みは下の資源を上の人間が搾取する構図なので極めて対照的なのだが、文字通り鏡を置いたようにほぼ線対称と言って良いオフィス風景が実に面白いのである。半分だけ見れば「アパートの鍵貸します」(1960年)にそっくりながら、この会社にもし幇間社員ジャック・レモン氏がいても恐らく下社会に属するので、上司に鍵を貸すことはできないだろう。

1980年頃ダイアナ・ロスに同名の"Upside Down"というヒット曲がありましたね。この曲を主題歌に使えば良かったのに。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年08月03日 08:31
設定がよかったですね。
絵柄としてまさに映画でなければ見れない光景でありました。
小説だと、頭の中で想像するしかないですからね。
これが映画の良い所でありましょう。
チャンバラSF映画の真骨頂の『トランスフォーマ/ロストエイジ』が公開されますね。
全編2時間45分ほとんど戦闘シーンばかりだそうでありますよ( 一一)
オカピー
2014年08月03日 20:07
ねこのひげさん、こんにちは。

正にVFXの威力でしたね。

>『トランスフォーマ/ロストエイジ』
第一作は思ったよりも楽しめましたが、二作目は戦闘シーンが長すぎて飽きました。三作目はもっと極端なことになっているようですね^^;

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