映画評「許されざる者」(2013年版)

☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年日本映画 監督・李相日
ネタバレあり

1992年にクリント・イーストウッドが「許されざる者」を発表した時、僕は1960年のジョン・ヒューストン監督作品のリメイクかと思ったのだが、全然違った。

本作は1992年版の日本翻案リメイクである。最近はアメリカ映画が日本映画の作り直しをするケースが多いが、1960年代くらいまでは逆だったのだよ、若い諸君。「シェーン」(1953年)を筆頭に西部劇の無断借用が多かった。
 本作には当時の日活アクションみたいな無国籍映画色はなく、明治初頭の北海道を舞台に殆ど違和感なく作り直されている。広大で厳しい大地があり、屯田兵など開拓時代と言う意味で西部劇に通ずるところがあり、インディアンに相当するアイヌ人もい、そして、明治以降のお話で騎馬が似合うのは北海道くらいしかない。

負けて賊軍になった幕府軍の残党・渡辺謙は、追ってくる官軍を斬りまくって逃亡を続ける生活を経て、1880(明治13)年の現在、3年前に亡くなったアイヌ人の妻との間に儲けた二人の子供と共に野良仕事をして平和に生きている。
 そんなある日かつての同志・柄本明が現れ、娼妓を傷つけた兄弟を仕留めると賞金が出ると誘いをかける。妻との約束を守って一度は固辞するが、大地から食べるものも碌に採れない現状を顧みて、話に乗って旅に立つ。若者・柳楽優弥も強引に加わって来る。
 娼館を中心とした部落では兄弟を碌に罰しないなど、不正や残虐行為を繰り返す悪徳署長・佐藤浩市が幅を利かせている。柄本は弟に発砲するが殺し切れず、仕方なく渡辺が止めを刺す。彼は兄殺しを柳楽に任せる。しかし、先に別れた柄本が署長の拷問に遭って死んだと知ると、若者と被害者の少女・忽那汐里に子供たちに渡すお金を預け、復讐の為に署長の許に向かう。

というお話は、国を変えた翻案の割に、オリジナルと大差なく北海道の広大な大地の上にじっくりと場面を構成して、近年の日本映画としては割合重量感を感じさせる出来栄えとなっている。テンポが悪いという人がいるが、展開がゆったりしているのと鈍重なのは少々違う概念である。本作はテンポこそゆっくりしているが、鈍重ではない。ムード醸成や個人の情念を表現する為にはこれくらいの長さが必要と思われる。

かと言って、手放しで褒められる作品とも言いにくい。主人公の考えが曖昧すぎて解りにくいところがあり、すっきりしないのである。「人殺しは金輪際しない」という亡き妻との絶対的と思われた約束を、戦友の復讐の為にあっさり反故にする心理が特に解りにくい。逆に、観た通りに解釈すれば今度は西部劇の定石的構図を打破できていないという問題が浮上する。オリジナルにも似たような弱点があったと思うが、渡辺謙の内にこもった演技がそれを助長しているような気がする。

署長の佐藤浩市は、オリジナルのジーン・ハックマンと比べて迫力なし。西部劇を意識しすぎた彼の風采も少し違和感を残す。

幸いにも、和人に差別されるアイヌ人姉弟(母が和人、父がアイヌ人)を丹念に描いた児童小説「コタンの口笛」を読んだ後だったので、アイヌに関して理解しやすかった。多分監督さんも読んでいるね。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年07月06日 13:29
可もなく不可もないという作品ではありますが、うまく時代の転換期に持ってきて、西部劇を日本の時代劇(?)に置き換えてますね。
佐藤浩市・・・・もう少し歳を取れば・・・・・かな?

オカピー
2014年07月06日 21:26
ねこのひげさん、こんにちは。

翻案としてはなかなか上手いですよ。
現代日本で馬に乗ってやって来る日活アクションとは違いまさあ(あれはあれで良いのですが^^)
西部劇は、歴史のないアメリカでは時代劇ですからね。

>佐藤浩市
ちょっと軽い人物造型という気がしました。父親の三國連太郎よりは署長のタイプですが。ただ、迫力で父親に大分及ばず。

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