映画評「欲望のバージニア」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督ジョン・ヒルコート
ネタバレあり

ギャングの台頭を招いた天下の悪法【禁酒法】時代(1919~33)の後期にヴァージニア州フランクリンで密造主製造販売で活躍したデュポラント三兄弟の実話。密造酒で大儲けしたシカゴ・ギャング、アル・カポネほど有名ではなく、映画化も恐らく今回が初めてであろう。

共に周囲が倒れても生き残ったという不滅伝説のある長兄ハワード(ジェイスン・クラーク)と次兄フォレスト(トム・ハーディ)に憧れる二十歳前後と思しき三男ジャック(シャイア・ラブーフ)が、牧師の清楚な娘バーサ(ミア・ワシコウスカ)に憧れて足しげく通う一方、兄たちを真似て密造酒の販売に手をかけようとしてそれなりの成功に終わることもあるが、バーサを秘密の場所即ち密造製造所に連れていくのを、都会から来た悪徳補佐官レイクス(ガイ・ピアース)を見られるという大失敗をやらかす。彼の賄賂要求に応じないのでやっつけてやろうと付け狙っていたところへ飛んで火にいる夏の虫といったところで、結果的に親友クリケット(デイン・デハーン)を殺されてしまう。怒り心頭に発した三兄弟はレイクス率いる官憲に攻撃を仕掛ける。

シカゴ・ギャングと違って退廃というより猥雑なムードが濃厚で、その中で展開するジャックとバーサの可憐な恋模様がアクセントになり、かつお話の展開に大きく絡んで面白く、結局地元の保安官などは町から来た厭らしい補佐官より親しみのある兄弟の味方に走るという終盤が興味をそそる。代表作と思しき「ザ・ロード」を未だに観ていないので今回初めて触れるジョン・ヒルコート監督のタッチはドライなのに、こうした人情絡みで少々ウェットなムードを漂わせる部分があるのだ。原作のタイトルが「世界で一番ウェットな(高湿度の)郡」というだけのことはある(無論、冗談)。

ジョン・レノンが"Old Dirt Road"という曲の中で使い、文学でも時々見かける、リンチの一方式"tar and feather"が実際に観られたのも収穫。

翻って、時代ムードの再現が良く全体として近年の本格ギャングものとして収穫と言って良い出来栄えである一方、アクションのカット割りに問題を感じる部分がなくもなかった。例えば、誰の手が誰を殴っているのか碌に解らないシーンなど、格好良さだけを追わないベテラン・ファンなら意気消沈するだろう。こうした点が昔の映画並みなら★一つ余分に進呈できたのになあ。

また、幕切れをナレーションと場面でだらだらと説明する代りに、ジャックがレイクスを倒したところで断ち切るように劇を終了し、エンド・クレジットの部分で字幕により補足的に説明すれば、ちょっと田舎くさいが酷烈なギャングものという印象をもって終わることができたものを、締まらない終幕部分によりあたら長蛇を逃した。

禁酒法時代末期に作られた「暗黒街の顔役」が久しぶりに観たくなってきましたぞ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年07月03日 02:52
あの時代にはこんな連中がゾロゾロといたんでしょうね。
ちょっとした田舎の兄ちゃんたちが儲かるぞ!というので、作っていたようで。
いかにもそれらしくてよかったです。
エリオット・ネスが禁酒法が無くなった時、「これからどうするんだ?」と聞かれて「帰ってワインでも飲むさ」と言った映画がありましたっけ。
オカピー
2014年07月03日 20:50
ねこのひげさん、こんにちは。

今の映画の中では感じが出ている気がしましたなあ。
これ、1960年代のニューシネマ時代に扱われても良い素材で、足の悪いクリケットという少年は「当時ならマイケル・J・ポラードがやったらぴったり」と思って観ておりました。

>エリオット・ネス
実際に言ったかもしれませんね^^
2014年07月03日 22:39
これは題を覚えておいて、ぜひ見たいですね。
ギャングものだし、アメリカの田舎が舞台の映画が好きなのですよ。
オカピー
2014年07月04日 21:19
nesskoさん、こんにちは。

最後のシークエンスを別にすれば、なかなか良いギャング映画と思います。
どちらかと言えば、1930年代版西部劇という印象ですが。ジェームズ兄弟を想像すると当たらずとも遠くないでしょう。

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