映画評「パシフィック・リム」
☆☆★(5点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督ギエルモ・デル・トロ
ネタバレあり
メキシコ人監督ギエルモ・デル・トロは日本発のアニメや怪獣ものがお好きだったようで、本作は「ウルトラ」シリーズの怪獣ものと「マジンガーZ」以降の超合金ロボットものを合わせたような内容である。
ご本人は「模倣やオマージュではない」と仰っているらしいが、模倣でなくても「レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎に捧ぐ」とある以上は怪獣映画へのオマージュでないことはない。まして【怪獣】はそのまま“カイジュウ”と呼ばれている上に、ヒロイン(菊地凛子)の出身は日本である。
ただ、個人的には「ウルトラマン」のファンでも怪獣映画のファンでもなく、「マジンガーZ」がTVに出た頃は中学生でもう基本的にTVアニメを見ていない時期に当たり超合金ロボに関して何の思い入れもないので、前回のハリウッド版「ゴジラ」と違ってきちんとした怪獣映画になっていると思ってはみてもそれだけでゴキゲンになることはないし、日本製の怪獣映画やロボット・アニメなどと比較する資格もない。いつも通り映画としての面白さだけを論ずるのみである。
太平洋の深海から怪獣が現れた為、人類はパイロット二人の操る人型巨大ロボット“イェーガー”により退けるが、怪獣の出現期間が徐々に狭まり、次第に強力化していく為に新たな対策を取る必要が生じてくる。
深海から怪獣が出るという設定は「ゴジラ」への表敬であろうが、ゴジラが地球の生み出した怪獣であるのに対し、こちらは宇宙人の巨大生物兵器、「ウルトラ」シリーズに近い所以である。
人の考えを伝播する形でロボットを動かすのは新しい発想ではないと思う(アニメに疎いのでよく解らない)が、パイロット二人を左脳と右脳とに分けて操縦するというのは新趣向にちがいない。しかし、分けたことによってどういう効果があるのかさっぱり解らず、面白さに繋がっていないのは残念。
ただ、タッグを組み、思考をシンクロさせるという発想が全く違うタイプの科学者二人に応用され、その彼らの活躍により怪獣の思考が判明、地球人滅亡回避への糸口を掴む、という辺りはなかなか面白い。
しかし、眼目である怪獣とロボットの戦い自体には殆ど興味が湧かない。怪獣映画における格闘は、どうもプロレスに通ずるものがあるらしく、プロレスが苦手の僕には観る前から結果が自ずと見えているのでござる。個人的な好みはともかく、画面は、有名俳優を殆ど使わずそれで浮かせた予算をVFXにたっぷりつぎ込んだ成果は出ていると思われる。惜しむらくは、CG多用SF映画の例に洩れず暗い場面が多い。
お話のほうは、宇宙人を相手にする時に必然的に生ずるコスモポリタニズム的内容ながら、同時に、中盤以降の舞台が香港である(中国製ロボットも少し活躍する)ことを考えると、アメリカの立場から現在におけるアメリカと日本と中国のあるべき関係を見せ(られ)ているような感じがし、さらにロボット駆動が原子力に立脚している点も(福島で問題を抱えている今)複雑な思いを抱かせる。
来月オリジナル「ゴジラ」リマスター版がNHK-BSに登場する。アメリカ版公開に合わせた放映らしく、NHKも段々民放みたいになってきたと苦笑。
2013年アメリカ映画 監督ギエルモ・デル・トロ
ネタバレあり
メキシコ人監督ギエルモ・デル・トロは日本発のアニメや怪獣ものがお好きだったようで、本作は「ウルトラ」シリーズの怪獣ものと「マジンガーZ」以降の超合金ロボットものを合わせたような内容である。
ご本人は「模倣やオマージュではない」と仰っているらしいが、模倣でなくても「レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎に捧ぐ」とある以上は怪獣映画へのオマージュでないことはない。まして【怪獣】はそのまま“カイジュウ”と呼ばれている上に、ヒロイン(菊地凛子)の出身は日本である。
ただ、個人的には「ウルトラマン」のファンでも怪獣映画のファンでもなく、「マジンガーZ」がTVに出た頃は中学生でもう基本的にTVアニメを見ていない時期に当たり超合金ロボに関して何の思い入れもないので、前回のハリウッド版「ゴジラ」と違ってきちんとした怪獣映画になっていると思ってはみてもそれだけでゴキゲンになることはないし、日本製の怪獣映画やロボット・アニメなどと比較する資格もない。いつも通り映画としての面白さだけを論ずるのみである。
太平洋の深海から怪獣が現れた為、人類はパイロット二人の操る人型巨大ロボット“イェーガー”により退けるが、怪獣の出現期間が徐々に狭まり、次第に強力化していく為に新たな対策を取る必要が生じてくる。
深海から怪獣が出るという設定は「ゴジラ」への表敬であろうが、ゴジラが地球の生み出した怪獣であるのに対し、こちらは宇宙人の巨大生物兵器、「ウルトラ」シリーズに近い所以である。
人の考えを伝播する形でロボットを動かすのは新しい発想ではないと思う(アニメに疎いのでよく解らない)が、パイロット二人を左脳と右脳とに分けて操縦するというのは新趣向にちがいない。しかし、分けたことによってどういう効果があるのかさっぱり解らず、面白さに繋がっていないのは残念。
ただ、タッグを組み、思考をシンクロさせるという発想が全く違うタイプの科学者二人に応用され、その彼らの活躍により怪獣の思考が判明、地球人滅亡回避への糸口を掴む、という辺りはなかなか面白い。
しかし、眼目である怪獣とロボットの戦い自体には殆ど興味が湧かない。怪獣映画における格闘は、どうもプロレスに通ずるものがあるらしく、プロレスが苦手の僕には観る前から結果が自ずと見えているのでござる。個人的な好みはともかく、画面は、有名俳優を殆ど使わずそれで浮かせた予算をVFXにたっぷりつぎ込んだ成果は出ていると思われる。惜しむらくは、CG多用SF映画の例に洩れず暗い場面が多い。
お話のほうは、宇宙人を相手にする時に必然的に生ずるコスモポリタニズム的内容ながら、同時に、中盤以降の舞台が香港である(中国製ロボットも少し活躍する)ことを考えると、アメリカの立場から現在におけるアメリカと日本と中国のあるべき関係を見せ(られ)ているような感じがし、さらにロボット駆動が原子力に立脚している点も(福島で問題を抱えている今)複雑な思いを抱かせる。
来月オリジナル「ゴジラ」リマスター版がNHK-BSに登場する。アメリカ版公開に合わせた放映らしく、NHKも段々民放みたいになってきたと苦笑。
この記事へのコメント
「いつも通り映画としての面白さだけを論ずるのみである。」と前置きしておきながら
自分の好みに刺さらない部分へのツッコミに終始してるだけな感じなのが残念ですね。
本音は「このジャンル大好きなのに好みの作りになってなくて不愉快」なのだと読みました。
>映画としての面白さだけを論ずる
と思われなかったとしたら、
1.僕の文章が稚拙であること
2.「映画として論ずる」に対する観念の違い
ということになりそうですね。
1については文才の問題ですので、どうしようもありません。
2については、僕のスタイルです。
僕とて、15000本くらい映画を観ておる映画マニアにつき、人並みに映画の知識があるので知っていることについて紹介・引用・比較はしますけど、本評における他の怪獣映画との比較はハリウッド版「ゴジラ」だけですし、それもこちらのほうが上出来と言っているのですから「不愉快」の理由にはなりません。
画面の暗さについては今作られるSF映画のほぼ全てが暗いので、今更文句を言っても始まらないのですが、毎回書いております。一般論として、画面が明るいのが映画として良いのは当り前の話で、個人の好悪以前の問題です。
>このジャンル
嫌いなジャンルはないと言ってきた僕にとって怪獣映画はどちらかと言えば苦手。怪獣映画の通の方によると、怪獣映画鑑賞はプロレス観戦に通ずる醍醐味があるそうなんですが、僕にはそこが全く解りません。
「ゴジラ」を最初の一本とぞの続編「ゴジラの逆襲」の二本しか観ていない(+ハリウッド版「ゴジラ」)僕が怪獣映画が大好きなどとは・・・。そもそも洋画ファンで、邦画は監督で観ます。
SF映画も、VFXが盛んになって大量に作られるために全体的に有難味が減っています。アメ・コミものなど5年に一度くらい作られたらもっと楽しめると思っております。これはアメ・コミの映画版の批評を書くたびに書いているくらい。
とりあえず、そんなところです。
コメント有難うございました。
画集なんかで確かめなおしましたよ。
さまざまな意見や評論があるとは思いますが・・・
ねこのひげは、ゴジラは自然の象徴と思っております。製作者の意図は知りませんが・・・もともと日本の神々は破壊神でありますからね~
こんどの作品がわかって作っていることを期待しておりますが。
NHKはけっこうミーハーが多いです。
官僚的と思っているのは外の連中ですな~
>画集
この映画の画集など出ているのですか?
闘っている最中は僕は「心ここにあらず」という感じでした。そうでなくても、色々と問題を抱えている最中ですので。
>NHK
女子テニス選手のシャラポワが絶好調の頃日本の選手よりシャラポワばかり追っていた時期がありましたよ。
また、2~3年前にやっていた「山田洋次の選んだ方が100本」みたいな特集を組んでほしいです。今度は洋画でね^^