映画評「オブリビオン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督ジョセフ・コシンスキー
ネタバレあり

ジョセフ・コシンスキーなる人物が自らのグラフィック・ノヴェルを映画化したSF映画。

未来、はっきりしないが確固たる女性の記憶を持つトム・クルーズが美人の同僚アンドレア・ライズボローと、宇宙人の侵略で荒廃し誰もいなくなった地球で、ドローンと呼ばれる無人偵察機を使って監視している。天空にはテットと呼ばれる司令塔(宇宙ステーション)があり、彼らはその指示に従い、いつ襲いかかるか解らない宇宙人の攻撃に備えているのである。

という前半は、静謐に淡々と進行するので娯楽性を期待する向きには退屈かもしれないが、「2001年宇宙の旅」(1968年)といったハードSFの高級感が漂い、なかなか良い。
 ところが、中盤彼が墜落した宇宙船の生き残りオルガ・キュリレンコを睡眠カプセルから救出してから徐々にアクション化が進み、敵と思っていた相手が実は地球人であったと判明する最後の三分の一になるといかにもハリウッド調のありふれたSFアクションになってしまい、かなりがっかりさせられる。

また、クローンがご本尊を殺してハイタッチとは何事かと僕を怒らせた「アイランド」(2005年)を思い出しつつ観ていたら、クルーズとクルーズが戦う場面が出てきて、両者ともクローン人間と判って少々苦笑い。しかし、「アイランド」のようにクローンのアイデンティティというおためごかし主題で鑑賞者をだます作品と違ってこちらのクローンの扱いは大分まともではあるし、クルーズと実は夫婦であったオルガが二人で湖畔の四阿(あずまや)で過ごす場面の捨てがたい美しさ(皮肉なのはそこは放射能に汚染されている)と併せれば、終盤がっかりした分をある程度取り戻せる。

些か気に入らないのは、後発のクローンが夫として後釜に座る幕切れ。彼の“おぼろげながら確かな記憶”という、僕の文才ではうまく表現できない状態は、同じDNAを持つクローン故と理解できるが、クローンと言えども一体一体違うと考えないと命が軽視されている印象が避けられないからである。

細胞関連ニュースが沙汰されておりますが、クローン人間が倫理的に認められる時が来るのでしょうか? 僕が生きている間はあるまいと思いますが。

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この記事へのコメント

2014年05月02日 12:29
全体に、子供の頃映画で観たり本で読んだりしたSFを思い出させてくれて、楽しかったです。主人公が作った隠れ家に並んでいるのが1960-70年代に流行ったロックのレコードなのが、今風でしょうか。ああいうのが、古き良き時代の断片になっているのですね。
オカピー
2014年05月02日 19:16
nesskoさん、こんにちは。

なかなか良かったですよ。
特に前半は、トム・クルーズ主演映画にしてはハリウッド調ではなく、素敵でした。

>ロックのレコード
色々ありましたね。
その時にかかるのがプロコル・ハルムの「青い影」。ちょっと使われ過ぎの感がありますが、名曲なんでしょうね。僕には、バッハ以上にパーシー・スレッジの「男が女を愛する時」の影響を多々感じる曲です。
レッド・ツェッペリンも別の場面でかかっていましたし、この時代が音楽に関しては僕の興味のある時代なので、非常に感興が湧きます。作者も、きっと未来とのコントラストにふさわしいと思って見せたのでしょうね。
字幕にはありませんでしたが、レコードの中にはローリング・ストーンズもありました。
ねこのひげ
2014年05月04日 04:58
前半のまま行ってほしかったですね~
そうはしないのがハリウッドたるところですが・・・・
オカピー
2014年05月04日 18:55
ねこのひげさん、こんにちは。

しかし、アメ・コミの通常の映画化と違ってSFムードが濃厚、トム・クルーズ主演映画のイメージを覆す感じに捨てがたいものを覚えたのは、一応の収穫でした。

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