映画評「君と歩く世界」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年フランス=ベルギー合作映画 監督ジャック・オーディアール
ネタバレあり

昨年観た「預言者」が気に入らない点がありながらも手応えのある秀作と感じ入ったジャック・オーディアール監督の新作である。

5歳の息子を持ちながら定職もないマティアス・スーナールツは、姉も許に転がり込んだ後、警備やナイトクラブの用心棒といった仕事で僅かな給金を得る。彼はナイトクラブで喧嘩に巻き込まれたシャチの美人調教師マリオン・コティヤールを自宅に送り届ける。暫くして彼女は仕事場のマリンランドでの事故で両足を失うことになって絶望にのたうち、スーナールツに連絡を取り、粗暴に見える彼の優しさに心打たれ、やがて結ばれる。
 が、彼は支配人に頼まれ従業員を監視するカメラをこっそり取り付けた結果スーパーのレジ係の職を失った姉に追い出され、子供を置いてどこかへ消えてしまう。彼の心底にある優しさを知っている彼女は姉に「彼はそんな人ではない」と言い、果たして彼は帰って来る。

三か月前に観た英国映画「思秋期」と男女の補完関係が似ている。近い年齢の男女が互いの傷を癒し合うのである。特に、見かけは粗暴なのにその心底に優しさが横たわっている男性の性格造形はほぼ同じと言っても良いくらい。ただ、スーナールツ氏はあちらの初老の主人公ほどの絶望感は抱えていないようである。

一方、場面の見せ方や繋ぎには結構不満がある。例えば、マリオンが両足を失うことになる事故はどうなっているのかよく解らない。あるいは、男性主人公が欲望を満たすために色々な女性と性交渉を重ねる場面も、マリオンと知り合った後だけに相手が彼女かと思っていたらその後二人が初めて結ばれる場面があって少々びっくりする。結果から判断すれば、二人が信頼関係をじっくり築いていくことを示す過程だけに、相手の女性をはっきり見せないのはまずい。映倫対策のぼかしが解りにくさを助長しているかもしれないが。

反面、再生する人間を描いてもハリウッド調の甘さに陥らないのはさすがはオーディアールといった感あり。比べるのもどうかと思うが、「思秋期」より面倒くさい印象がある分だけ落ちる。

ところで、映画サイトのストーリー紹介を拝読すると、女性をめぐるお話のように書かれているケースが多く、男性が主人公、若しくは男性に傾きつつも二人が主人公であるという僕の理解と齟齬がある。当方、ボーイ・ミーツ・ガールものとして理解しすぎていますかな?

さすがに題名・邦題における「君」「僕」ブームは去ったようでありますが・・・この甘い恋愛再生映画のような邦題は本作の人生観照的なタッチに全く合致しない。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年05月12日 02:17
確かに、青春純愛映画を思わせるようなタイトルで・・・
『出会い』とか『交差点』とか『失ったもの』とか・・・・もうすこし練ったタイトルにしてほしいですな~
オカピー
2014年05月12日 09:52
ねこのひげさん、こんにちは。

邦題に余る拘るほうではないですが、「君」「僕」はうんざり。
映画自体は割合気に入った「きみに読む物語」から流行が始まったように思います。
まして、この映画の場合は、内容と合わないから、見に行って気に入らなかった客から文句が来そう。大きなお世話ですがね(笑)

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