映画評「ザ・マスター」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督ポール・トーマス・アンダースン
ネタバレあり

ポール・トーマス・アンダースンの作品は概してテーマが判然としないこともあってもう一つ趣味に合わない。大作「マグノリア」など典型だが、前回の「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」は割合交通整理がよくされている中に彼独自の力感があり、かなり評価してみた。今回はいつもの面倒くさいアンダースン(世間では他のアンダースンと区別する為にPTAと呼ぶ人が多い)に戻り、やはり苦手な印象を覚える。

太平洋戦争後、軍隊のストレスでアルコール中毒になったホアキン・フェニックスが酔いに紛れて或る船に勝手に乗り込む。船の中にいた新興宗教教祖フィリップ・シーモア・ホフマンは彼の自家製麻薬入りアルコールが気に入り、輪廻転生思想をベースにしたような教義を彼に教え込んで助手のような存在にしていくが、フェニックスは完全に克己することはなく、故郷に戻って別離になったままの恋人に会いに行く。しかし、恋人は既に結婚、フェニックスは再びホフマンのもとに戻るが、ホフマンは自分の力不足に気付いていて、その後の行動については彼の判断に任せる。

お話のベースには人間をダメにするという意味で、反戦というより反軍隊思想があるようである。その改善に寄与すべく運命に導かれて(?)登場するのがホフマン教祖であり、二人の関係は師弟関係を超える友情めいた絆あるいは同性愛に近いところまで進展する(言葉のやり取りは疑似セックスか?)。それが気に入らないのが実権を握っているようなホフマンの妻エイミー・アダムズであり、子供たちである。新興宗教の無力を別にしても、彼の家族の存在がフェニックスの立ち直りを妨げた一要因であるかもしれない。
 フェニックスの立場から考えれば遠回りしたような人生行路であっても、こうした経験が彼の立ち直りに寄与しないとも限らない。しかし、何を言いたいのか結局よく解らないというのが僕の正直な感想。

Allcinemaにフェデリコ・フェリーニに言及した人がいるように、反カトリック的な(と僕には思える)フェリーニがアメリカ人ならこんな映画を作ったかもしれない。

そうそう、僕より一回り若いホフマンの逝去の報には驚いた。近年これだけ迫力のある役者は稀であるから実に惜しまれる。死因はいかにもアメリカ人らしいものであるらしいが、才能のある人にも他人には解らない苦労があるということだろうか。合掌。

先般、戦没学生手記集「きけ わだつみのこえ」を読んでみた。きな臭いことを政府が考えて色々とアイデアを打ち出しているが、あっても局地戦であろうからとりあえず一般人が参戦することはないだろう。しかし・・・

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年04月13日 17:12
各国の状況を見てもわかるように局地戦だからといって一般人が巻き込まれないということはありえないわけで、戦争は映画の中だけにしていただきたいですが・・・

ノーベル平和賞候補に憲法九条が候補に挙がっているそうで・・・・なんらかの効果がありますかね~
オカピー
2014年04月13日 17:37
ねこのひげさん、こんにちは。

怖いのは幾つかあって、その中で最たるものは、中国との戦争の場合とちがって、イスラム地域に米軍と一緒に出かけた場合、日本人がテロに遭う確率が一気に増えるということですね。
外国にいれば勿論、日本にいても安心できない。
政府は秘密保護法により安全は強固になると言っていますが、アメリカほど融通が利かない日本は公開した方がベターな、例えばテロ情報まで抑えてしまうでしょう。
福島の原発事故後の情報も逃げてはいけない方向に移動させて、結局被曝を増やしてしまった・・・何という愚かさ。そんなこともまた起こりかねませんなあ。今度はそのミス自体も明らかにされなくなりそう・・・国滅びて山河あり、なんてことになりかねません。

中国との関係では武器の抑止力に期待するしかないのですが。民度という点では、日本を含めてアジアはやはり欧州各国に少し足りないようです。
一人一人には立派な人が多くて、地震の時の対応には各国(あの中国の新聞さえ)が評価したものですが。

>憲法九条
日本は北朝鮮より国際機関から人権についての指摘が多くされている、先進国では最悪の人権無視国らしいから、どうでしょうかねえ。
北朝鮮が日本より少ないのは情報が余りにも少ないせいでしょうが、それにしても、そんなことになっているとは知りませなんだなあ。

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