映画評「ジャンゴ 繋がれざる者」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督クエンティン・タランティーノ
ネタバレあり
北島三郎に「続・荒野の用心棒」主題歌を歌わせた「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」に出演したクエンティン・タランティーノがあの作品のマカロニ・ウェスタンへのオマージュぶりにあき足りなかったと見え(笑)、自ら「続・荒野の用心棒」の主題歌を使うオマージュ作品を作り上げた。殆どおふざけに終始したかの三池崇史作品に比べれば、遥かにきちんと出来ていて相当面白い。長尺のタランティーノ作品の中では一番気に入った。
(観ているうちは全然気づかないが)デニス・クリストファーとかラス・タンブリンとかベテラン映画ファンには懐かしい面々も出て来る配役がなかなか嬉しい。特に、一見して解る元祖ジャンゴのフランコ・ネロが意外に若々しく登場する場面はマカロニ・ウェスタン全盛時代に子供をやっていた僕にはゴキゲン。当時の僕のヒーローはジュリアーノ・ジェンマだったわけだが。
南北戦争勃発の2年前、ドイツから来て4年の元歯医者の賞金稼ぎクリストフ・ヴァルツがお尋ね者の正体を知っている黒人奴隷ジェイミー・フォックス(即ち題名になっている主人公ジャンゴ)を買い取る為に素直に渡さない持ち主にいきなりライフルを発砲する、というところから物凄い勢い。馬も倒してしまう。
奴隷制度が大嫌いな賞金稼ぎはフォックスの才能に気付き賞金稼ぎの相棒とするうち、彼の愛妻ケリー・ワシントンがどこかの農園で働いていることを知る。調査した結果お坊ちゃんレオナルド・ディカプリオに買われたことを突き止め、マンディンゴ(格闘奴隷)を買う振りをしてケリーを奪還することにする。
が、お坊ちゃんを大いに慕っている老黒人執事サミュエル・L・ジャクスンがそれに気づいて、遂には敵味方相乱れる銃撃戦に発展していく。
バイオレンス場面は少なそうで結構多い。カタルシスには大半のマカロニ・ウェスタンに通ずるものがあり、暴力描写の多さの割に後味が良い。他の人はともかく、僕はタランティーノ映画の後味は必ずしも良いと思っていなかったから、その意味で収穫であり、気に入った一番の理由と言える。マカロニ・ウェスタン調のカメラワークを一部取り込んだ絵作りにも貫禄が感じられる。
演技陣もなかなか好調。ヴァルツは“言わずもがな”で、ディカプリオはもう少し評価されて良い。サミュエル・L・ジャクスンが最初に主人公を観る目つきの厭らしさにはぞっとした。差別主義の白人の味方をする黒人は本当に厭らしい。黒人が黒人相手に「ニガー」と言った時の侮蔑度は白人の比ではないそうだ。
マカロニ・ウェスタンが登場した時にはその残虐味にびっくりしたわけだけど、昨今の作品は遥かにそれを超える。僕は刺激に麻痺したくないね。「マンディンゴ」という映画もあった。ベテランの方々、憶えています?
2012年アメリカ映画 監督クエンティン・タランティーノ
ネタバレあり
北島三郎に「続・荒野の用心棒」主題歌を歌わせた「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」に出演したクエンティン・タランティーノがあの作品のマカロニ・ウェスタンへのオマージュぶりにあき足りなかったと見え(笑)、自ら「続・荒野の用心棒」の主題歌を使うオマージュ作品を作り上げた。殆どおふざけに終始したかの三池崇史作品に比べれば、遥かにきちんと出来ていて相当面白い。長尺のタランティーノ作品の中では一番気に入った。
(観ているうちは全然気づかないが)デニス・クリストファーとかラス・タンブリンとかベテラン映画ファンには懐かしい面々も出て来る配役がなかなか嬉しい。特に、一見して解る元祖ジャンゴのフランコ・ネロが意外に若々しく登場する場面はマカロニ・ウェスタン全盛時代に子供をやっていた僕にはゴキゲン。当時の僕のヒーローはジュリアーノ・ジェンマだったわけだが。
南北戦争勃発の2年前、ドイツから来て4年の元歯医者の賞金稼ぎクリストフ・ヴァルツがお尋ね者の正体を知っている黒人奴隷ジェイミー・フォックス(即ち題名になっている主人公ジャンゴ)を買い取る為に素直に渡さない持ち主にいきなりライフルを発砲する、というところから物凄い勢い。馬も倒してしまう。
奴隷制度が大嫌いな賞金稼ぎはフォックスの才能に気付き賞金稼ぎの相棒とするうち、彼の愛妻ケリー・ワシントンがどこかの農園で働いていることを知る。調査した結果お坊ちゃんレオナルド・ディカプリオに買われたことを突き止め、マンディンゴ(格闘奴隷)を買う振りをしてケリーを奪還することにする。
が、お坊ちゃんを大いに慕っている老黒人執事サミュエル・L・ジャクスンがそれに気づいて、遂には敵味方相乱れる銃撃戦に発展していく。
バイオレンス場面は少なそうで結構多い。カタルシスには大半のマカロニ・ウェスタンに通ずるものがあり、暴力描写の多さの割に後味が良い。他の人はともかく、僕はタランティーノ映画の後味は必ずしも良いと思っていなかったから、その意味で収穫であり、気に入った一番の理由と言える。マカロニ・ウェスタン調のカメラワークを一部取り込んだ絵作りにも貫禄が感じられる。
演技陣もなかなか好調。ヴァルツは“言わずもがな”で、ディカプリオはもう少し評価されて良い。サミュエル・L・ジャクスンが最初に主人公を観る目つきの厭らしさにはぞっとした。差別主義の白人の味方をする黒人は本当に厭らしい。黒人が黒人相手に「ニガー」と言った時の侮蔑度は白人の比ではないそうだ。
マカロニ・ウェスタンが登場した時にはその残虐味にびっくりしたわけだけど、昨今の作品は遥かにそれを超える。僕は刺激に麻痺したくないね。「マンディンゴ」という映画もあった。ベテランの方々、憶えています?
この記事へのコメント
「マンディンゴ」含めた拙記事2コお持ちしました。
今年のオスカー授賞作品賞はまさにマンディンゴ的
その手の差別映画のようですね。(近日鑑賞予定)
歴史歴史というけれど
差別と迫害と戦いの人間史ですからね~
狭量な日本人、続々入ってくる移民さんたちとの
兼ね合い、うまく乗り切れるでしょうかね~
あ、話、それましたですね。(- -)^^
タラさんはいつもですけど、
本作もちと長く感じましたです。
去年、「絞殺魔」「ソイレントグリーン」観て
ひとりR・フライシャー祭りしてたり(笑)
先週観たトンデモ映画「room237」の影響で
暫くぶりに「シャイニング」観ましたが
恐怖の質が今とじゃまるで違うんですよね。
今は「ショック」与えることだけに
浅知恵振り絞っては下品になるばかり。
ショックとサスペンスに関するヒッチさんの
至言が今また的を得てふつふつと蘇ります。
>狭量な日本人
アジアを別にすると、先進国で民族差別についての意識が一番低いのは日本だとか。
国のトップが思い切った経済政策をとって所得格差を広げ、そこで不満を持つ低所得者層が隣の国への差別で鬱憤を晴らしている。意図的とは言わないまでもそういう流れができて、高い支持率を維持しているようです。
まして仰るように人口が減っているのに、移民・難民を排斥し続け、将来税金を納めてくれる人を締め出す訳の解らない日本の官憲。確かに僕も個人的には在日を別にすると外国人は怖いし、治安の心配をしたくなる心境は解りますけどね。
>タラさん
「レザボア・ドッグス」を別にすると、本当に長い。本作は飽きずに観られたほう。
マカロニ・ウェスタンでは一番がっちりした映画を撮ったセルジョ・レオーネも負けず長かったですよねえ。
>「room237」
タイトルから言ってまたフェイク・ドキュメンタリー式ホラー映画ですか?
この手はほぼ100%つまらないので、金輪際観ません。
>ショックとサスペンス
そうですね。
ショックなんて突然びっくりさせれば良いのだから、極端に言えば僕にだってできる(実際はできないけれど)。
シカシ、タラちゃんはだんだんうまくなるようですな~('◇')ゞ
>拍手喝采
その気持ちも解らないではないけれど、そういうのは余り品が良いとは言えませんねえ。
本文でも書いたように絵は貫禄が出てきました。
お話のほうをもう少し整理して貰いたい、というのは相変わらずですが。