映画評「王になった男」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年韓国映画 監督チュ・チャンミン
ネタバレあり

李氏朝鮮は1392年から1910年までおよそ500年続いた世界でも稀に見る長期体制である。大体一つの体制が持つのは250年が限界で、ローマ帝国(東西ローマ帝国に分裂後も含める)や漢(前漢・後漢を合わせる)などは考え方次第では相当長く持ったと言えるが、300年きっちり維持できた体制とは言い難い。
 尤も李氏朝鮮も色々ゴタゴタがあり、本作の主人公となる第15代国王・光海君の時は結構大変な時期だった。日本から朝鮮征伐があり、直後に末期明国から後金(清)と戦う為の兵力を要請されてもいる。いずれにしても中国への朝貢外交で大変なのが李氏朝鮮なのであった。

本作は、光海君(イ・ビョンホン)が大麻(当初は毒と思われた)で体力消耗した為、王への取次ぎを担当する実質NO.2の高官である都承旨(リュ・スンリョン)の計らいで、王にそっくりな道化師ハソン(イ二役)を影武者に仕立てる。ハソンは物真似をするうちに貫禄もつき、疑いを持ち始めた卜武将(キム・イングォン)の疑いを誤魔化した末に自刃しようとした彼に「刀は余(よ)を守る為に使え」と威厳のあることを言う。
 これが最終盤に効果を発揮して本作最高の見せ場を生み出しているのだが、それとは別に憂い顔の王妃(ハン・ヒョジュ)を喜ばそうと奮闘し、本来庶民であるから悪徳役人の為に売られてきた毒見役少女(シム・ウンギョン)の為に一肌脱ごうとする。

本作では李氏朝鮮が明に反旗を翻し後金に協力したのは偽光海君のおかげという扱いになっている。朝鮮において光海君は暴君として知られているようだが、別の説もあって判然としない部分がある為、影武者がいたという形で、庶民の味方をし、強欲な明に反旗を翻した名君として興味深い史劇に仕立てることができたという次第。

尤も歴史劇として興味深いのは韓国国民だけであって、我々日本人は王様のその立場故の苦労や成りすましを巧みに駆使した権謀術数の面白さを楽しむということになる。言わば大衆映画ならではの面白さが盛り込まれているので、韓国で1200万人も観客を動員(日本の人口に換算すると3000万人に近い)したというのも解らないではない。黒澤明の「影武者」(1980年)の貫禄には及ばないが、大衆映画としての面白さでは優るかもしれない。

平安時代は約400年。安定していたと言えるかどうか?

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年04月01日 02:50
李氏朝鮮も独立していたとはいいがたいですがね~
どこも似たり寄ったりで・・・
安定したと思えば崩れていく・・・人間は愚かでありますな~
恐竜のように長く続くか怪しいものです。
オカピー
2014年04月01日 11:44
ねこのひげさん、こんにちは。

現在の領土や歴史認識について、中国や韓国の言っていることが100%正しいとは思いません。
かと言って、日本政府が言っていることが100%正しいわけでもないでしょう。
自虐史観・・・そんなことはどうでも良い。
地球をきちんと保つには、自虐も被虐も加虐も関係ない。
現在の日本政府は、平和ということを生徒に教えることを消極的になっているような気がします。
民間にいれば立派なことを言う人が政治家になると、狭量なナショナリストになる。世界の利益を守るかどうかが今や日本の利益でしょうに・・・
今のまま経済ばかり追っていたら500年後には人はいませんよ。しかし、世界史を見れば人間もかたつむりのようにゆっくりですが、少しずつ利口になっている感じも致します。
どちらしても長くて四半世紀、下手すれば明日死ぬかもしれない僕には関係のない話ですが、本や映画くらい自由に鑑賞させてくださいよ、官憲殿!

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