映画評「脳男」

☆☆★(5点/10点満点中)
2013年日本映画 監督・瀧本智行
ネタバレあり

路線バスが爆発されて多数の死者が出る。連続爆破事件の一つである。
 江口洋介刑事が特殊な部品を糸口に逮捕した容疑者・生田斗真の精神鑑定をすることになった精神科医・松雪泰子が彼の感情や感覚を持っていないことに興味を持って過去を調べるうちに、彼の特殊な脳を生かそうと祖父・夏八木勲が特別に施した育成方法が判明、刑事と彼女は彼が悪党を仕留める殺人マシーンに仕立てられていたと結論付ける。その間にも殺人マニアの少女カップル二階堂ふみと太田莉菜が仕掛けた爆弾が病院で次々と爆発、一人残されたふみ嬢が痛みを感じない生田君を殺そうと車で襲い掛かる。

序盤の心理試験を見ているうちに僕は江戸川乱歩のその名も「心理試験」を思い出したが、偶然にも原作となった首藤瓜於の同名小説は江戸川乱歩賞を受賞しているそうである。

開巻直後はアメリカのサイコ・ホラー映画を思い出させて苦笑させられる部分も少なくないながら、感情を持たず脳内モルヒネにより感覚(痛み)を持たない異常体質者を“変則的正義の味方”にした点は一応の新味と言って良い。しかし、それが、自分の弟と母親の悲劇があるとは言え、非常に甘い考え方をしている精神科医と結びついた瞬間に極めて日本的な甘さを露呈して大分興が醒める。

本当の連続爆破魔2人のおぞましい関係の描写はともかく、末期癌の少女とヤンキー少女だけで、あのような力も時間も要る大仕掛けができてしまうのも物理的な疑問を感じさせ犯罪映画として弱い。

精神科医が自らの推進するプログラムの成功者と思えた染谷将太が再び未遂事件を犯してプログラムの失敗が明らかになった後母親が「そのプログラムをやってみようかね」と決意する幕切れの皮肉が一番面白いのではあるまいか。

序盤のむごたらしい描写の印象による嫌な予感に反して、展開的には瀧本智行らしく見やすい作品になっているものの、基本となるお話の弱さはどうにもならない。

はったりだねえ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年01月05日 06:48
両親の認知症の治療であった精神科医達は、甘いというか稚拙でどうしようもなかったですね。
連中のほうが痴呆ではないかと疑いたくなるぐらい・・・・
若いというのもあったのでしょうが、たとえ高学歴であっても現実にはこういう甘い考えの人間は多いようですな。

高校生でもネット検索で爆弾ぐらい作れるでしょうが、それを観ている観客に納得させねば映画としてダメですな。

江戸川乱歩の大人向けの小説は不気味でよかったですね。
エロチックでもあったし・・・中学のとき読んでドキドキしましたよ(^^ゞ
オカピー
2014年01月05日 20:37
ねこのひげさん、こんにちは。

>高学歴でも
僕も、現在のふがいなさを考えると、自分の「論語読みの論語知らず」を痛感しておるところですよ。参りましたなあ。

>爆弾
作れてもいつどう運んだかが解らないと、絵に描いた餅みたいなお話に終わりますよねえ^^

>江戸川乱歩
2013年読書録に乱歩もあったのですが、いかが思われました。
ねこのひげさんのお好きなSFや新しい作品は余りないのですが、暫くこの路線が続きます。
多くの古典は生き残っただけの理由があり、かりに途中は退屈しても、最後には納得させられることが多いのですね。明らかにその時代にしか通用しなかったものも見受けられるわけですが。

乱歩はエロとグロで満載でしたね。
今年読んだ(再読した?)「パノラマ島奇談」も相当(良い意味での)変態趣味に覆われていました(笑)
ねこのひげ
2014年01月06日 06:59
読書録・・・・大量に読まれていると感心しました。
たまには古いのも再読しておりますが、新しい人の作品を見るとドレドレと手が行ってしまいます。
乱歩・・・・・エログロですな~
怪人二十面相からはいたので『パノラマ島奇談』を読んだときはビックリしましたよ。
オカピー
2014年01月06日 21:14
ねこのひげさん、こんにちは。

ねこのひげさんと違って時間はかなりありますから、量だけは何とか。
新しいのを手にするのは好奇心が旺盛なんでしょうね。

>『パノラマ島奇談』
読んだことがないと思ったのですが、あの壮絶な幕切れには記憶があるので、遠い昔読んだのでしょう。リストをつけていないので判然としないのです。
来年もやるつもりなので、読むたびにブログに書き込むことにしました。

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