映画評「危険なメソッド」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2011年イギリス=ドイツ=カナダ=スイス合作映画 監督デーヴィッド・クローネンバーグ
ネタバレあり

ヤン・シュヴァンクマイエルの「サヴァイヴィング・ライフ 第二の人生」では、精神分析学の第一人者であるジグムント・フロイトとカール・グスタフ・ユングの不仲が間接的によく解るように作られていたが、本作では師匠に当たるフロイト(ヴィゴ・モーテンセン)が、精神分析に神や神話を近づけたユング(マイケル・ファスベンダー)と不仲になる過程が具体的に描かれている。

と言っても、眼目はそれより、チューリヒの病院に勤務していたユングが患者として迎えたユダヤ系ロシア美人ザビーナ・シュピールライン(キーラ・ナイトリー)を分析するうちに彼女の優れた精神分析の能力に気付いて妻帯者でありながら恋に落ち、妻からの密告が基で優秀な彼女がフロイトに師事することになると、安心と失意とを同時に抱える心境に陥ってしまう、というユングの立場から恋愛映画的な過程を見せる部分にある。

この二つの事情が干渉し合いつつ進行する様子を登場人物自身による精神分析を大量に交えて進ませるところに、ただの恋愛映画を超えた面白味があるわけだが、監督をしたデーヴィッド・クローネンバーグとしては品良く作られすぎて、逆の意味で、少し気味が悪い。

ユングが治療しながら逆に影響を受けてしまう薬物中毒の精神分析学者オットー・グロス(ヴァンサン・カッセル)まで交えた、これだけの要素を100分という尺の中に収めてしまい、こちらが色々と考える間もなくお話が進む感じになっているのが一番の問題だろう。

不必要に長い邦画もこれくらいスパッと進めてくれると有難いという気はします。

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この記事へのコメント

vivajiji
2014年01月25日 13:00
この監督さんお持ちの、独特の“匂い”が
全く感じられず「何ですかコレ」で帰宅。(笑)
プロフェッサーさらりとお書きですけれど
本作から何も得られずの私でした。(- -)

似ている題名「危険なプロット」。^^
もしかしてプロフェッサーあまりお得意では
なかったような(笑)F・オゾン作品。
これはなかなかでございましたよ。
きっと近日放映されると思いますが。

オカピー
2014年01月25日 20:23
vivajijiさん、こんにちは。

実際に存在した人物が著名ですので、そうした点からの興味は持てましたけどね。
物足りなかったです。

>F・オゾン
「8人の女たち」は洒落っ気たっぷりで凄く好きですが(笑)
WOWOWさんはオゾンの出る確率が非常に高いので、多分早めに出ると思います。
なんだかんだ言って、オゾンは無視できない監督ですから。
ねこのひげ
2014年01月26日 07:27
そう、もう少し下品でもよかった気がしますね。
相手が有名人だからというので遠慮したとも思えませんが、もうすこし突っ込んで書いてもよかったですね。
あまり危険とも思えなかったし・・・・・
オカピー
2014年01月26日 17:46
ねこのひげさん、こんにちは。

マゾヒズムなんかも出てきますが、本当に上っ面をなぞっただけのような描写に推移して、人間が表に出てきませんでしたなあ。
クロネンさんの作品はたとえ出来が悪くても、もう少し刺激があるんだけど、普段なら。

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