一年遅れのベスト10~2013年私的ベスト10発表~

群馬の山奥に住み、体調も万全とは行かず、WOWOWを中心にした映画鑑賞生活ですので、僕の2013年私的ベスト10は皆様の2012年にほぼ相当する計算でございます。
 初鑑賞なら新旧問わず何でも入れることにしていますが、今年に関しては新作が充実していたので、余りに古い「ドクトル・マブゼ」(1922年)とミュージカル・ファンとして観ていなかったのが恥ずかしいくらいの「ロシュフォールの恋人たち」(1966年)は遠慮いたしました。

2009年の自身の入院事件以来昨年まで事件・事故の連続に加え、どうも面白い新作が減っている為、年々鑑賞本数が減少気味。2013年は376本(+短編3本)と少なく、再鑑賞は34本(+短編1本)でした。しかし、本稿対象となる初鑑賞作品に関しては342本(+短編2本)と、一応例年並みといったところでしょうか。

今年こそ何もない年であることを願って楽しく映画鑑賞の日々を過ごしたいと思いますが、恐らく新作鑑賞が減り再鑑賞が増えることになるでしょう。面白い映画は僕がいくら努力しても増えませんからね。

それでは、参りましょう。

1位・・・終の信託
人間の生の尊厳を扱ったテーマ自体にも心を動かされるものがありましたが、やはり構成の巧さ。回想形式がここまでの必然性をもって使われた映画はそれほどない。映画を判断する時に構成を重視する僕はこの作品の構成にはシャッポを脱ぎました。キネ旬の「周防正行監督が娯楽映画監督というイメージを払拭した」という意見には異論ありで、やはりよく出来た社会派娯楽作と思います。

2位・・・ポエトリー アグネスの詩
韓国映画には厳しい評価をすることが多い僕も、厳しい内容の中に映像詩のようなものを感じ、圧倒されましたね。僕の韓国映画への批判は、あくまで純粋に技術が足りないからであって、民族に対する意識など微塵もありません。本作を作ったイ・チャンドンやキム・ギドクは韓国映画の枠で語ることができない作家性がありますね。「トガニ 幼き瞳の告発」のベスト10に迫る韓国映画の秀作でした。

3位・・・別離
どちらかと言えば、これも構成の巧さで見せるタイプのイラン映画。夫婦の離婚に巻き込まれる少女がどう決断を下すか解らないところで幕切れとなる作りはいかにも現在の作品。この手の観客任せ型というのは概して好きではないのですが、どちらにしても物凄い重圧を強要される少女の心の中を察すると胸が引き裂かれそうな気分になり、考え込んでしまうのです。

4位・・・アーティスト
サイレントの面白味を現在に再現した秀作。ピストル⇒"Bang!"の字幕⇒車の衝突と流れていく部分が最高でした。これはトーキーではなかなかできない味。アカデミー作品賞を獲ったのは不思議ではないが、実はフランス映画。サイレントである利点が生かされて外国映画で初めて外国語映画賞ではない作品賞を獲った作品。しかし、アメリカ映画界は何故こういう映画を作れない。情けない。

5位・・・裏切りのサーカス
ややこしいので、ジョン・ル・カレの原作も読んだけど、こちらはこちらで解りにくさがあり、「こりゃ相互補完せにゃあかんなあ」と関西人でもないのに思いました。でも、スパイものと言っても華美さとかけ離れたフィルムノワールぶりが良かった。ホモッ気がなければもっと良かった。因みに、僕が読んだのは古い訳で、新しい訳はぐっと解りやすいと聞きました。

6位・・・東京家族
「小津安二郎なんか大嫌い」と松竹入社当時は仰っていた山田洋次監督が遂に「東京物語」のリメイクに挑戦したのが本作。リメイクと断言しているサイトは少ないけれど、これをリメイクと言わず何をリメイクと言う! しかし、後味はまるで逆でしたねえ。こちらは最後に希望が持てる作りになっていて、実際には崩壊していくとしか感じられない今の日本にいながら元気を貰える気になりました。とにかく面白かったですよ。

7位・・・ソハの地下水道
例年一本は必ず入るホロコーストものが昨年はなかったのですが、今年はこれで復活。利益のためにユダヤ人を助けていた主人公が次第に本気で動くようになる。アンジェイ・ワイダ以来の「地下水道」ものと言ってもよい切り口の面白さからこの位置。「サラの鍵」も甲乙つけがたい出来でした。

8位・・・最強のふたり
ここ数年フランス映画強しの感あり。純粋のアメリカ映画がなかなか入ってこない。シリーズか、リメイクか、型どおりの作品しか作れないのでは無理もないのでありますが。
 人種も環境もすべて違うからこそ、不具の富豪と貧乏な健常者が心を通わせていくことができる。その模様に味わいがありましたねえ。基本は実話というから実話の強さも感じる21世紀映画界です。

9位・・・007 スカイフォール
ダニエル・クレイグにボンドが代わってから監督を問わずリアリズム傾向が出てきた。それ自体は良し悪しなのだが、この作品はショーン・コネリー時代の007を強く想起させる細かな要素を繰り出して原点回帰を目指しながら、しかも、コネリー時代の劇画には戻らないよ、という屈折した主張を感じ取ることができて非常に面白かった。従って、古い007をよく知らない人が観た場合どの程度楽しめるか保証できません(笑)。
 2013年度はこうしたジャンル映画に幾つか観るべき作品があり、「アルゴ」もベスト10候補でした。

10位・・・キリマンジャロの雪
「同胞(はらから)」を作っていた頃の山田洋次を思い出す。実際この作品を作ったロベール・ゲディギャンは山田監督と連絡を取ったらしい。フランスの労働問題を背景に、リアリズムと寓話との間を縫いながら進むヒューマン・ドラマで、親に見捨てられた子供2人に関わる主人公夫婦の扱いは甘いのかもしれないが、嫌なことが多い実際の世の中、映画の中くらいはほっとさせられる場面に出会いたいと思わせるものがありましたねぇ。

次点・・・ニーチェの馬
厳しいモノクロ映像による凄い馬力の哲学映画。終末論映画のようで、実際は人生観照映画だろう。ベスト10の上位に置いてもおかしくはないけれど、この記事を書いている時点での僕の心境が厭世ではなくヒューマニティを求めている。


画像


ワースト・・・「エイリアン・ビキニの侵略」
韓国のSF映画の作り手は、余りにも映画文法を知らなすぎて、呆れ返ることが多い。そうした一本。


****適当に選んだ各部門賞****
監督賞・・・イ・チャンドン~「ポエトリー アグネスの詩」
男優賞・・・タハール・ラヒム~「預言者
女優賞・・・ユ・ジョンヒ~「ポエトリー アグネスの詩」
脚本賞・・・周防正行~「終の信託」
撮影賞・・・フレッド・ケレメン~「ニーチェの馬」
音楽賞・・・「フラメンコ・フラメンコ
特別賞・・・三國連太郎~長年の業績に対して追悼の意を表すべく

この記事へのコメント

オカピー
2014年01月20日 21:17
実は推敲中に間違って送信してしまった。
ひっこめるのもどうかと思ったので、現在少しずつ直しているところ(笑)
ねこのひげ
2014年01月21日 01:49
最強のふたりは近年まれに見るフランス映画の最高傑作でありましたね~
ユーモアと皮肉とやさしさと・・・まさにフランス映画でありました。
先日、フランスで行われた冬季オリンピックの映画を観る機会がありましたが、これもまさにフランス映画でありました。
オカピー
2014年01月21日 19:24
ねこのひげさん、こんにちは。

その他に「アーティスト」「キリマンジャロの雪」は純フランス映画、「裏切りのサーカス」もフランスとどこかの合作ではなかったかな。
とにかくアメリカ映画が誠に弱くて入選0本。その意味では「アルゴ」を入れても良かったのだろうけど。

フランス映画は面倒くさいのも多いのだけれど、アメリカ映画低調に対してかなり頑張っていますね。

>冬季オリンピック
「白い恋人たち」ですかね。
サントラを持っていましたし、アルペン三冠のジャン=クロード・キリーなど選手も良く憶えています。
小学生の時昼食中にスピーカーから流れてくる曲について、先生から題名は何で作ったのは誰かと言われ、「『白い恋人たち』で、フランシス・レイ」と答えてから先生のお気に入りになった小生でした^^
2014年01月22日 09:11
だんだん文字が大きくなるので、故意なのか、事故なのかと思いながら読みましたが、事故なんですね?
私が見ていないもの、見ても上位にしなかったものが多いので、違うもんだなあと実感。
「サラの鍵」が書かれていたのは嬉しかったです。
2012年のマイベストをTBしちゃいましょうか…。
オカピー
2014年01月22日 19:38
ボーさん、こんにちは。

>文字が大きくなる
???
順位と邦題が大きいのは意図的ですが^^

>違うもんだなあ
そうですね。
僕は年を取ったせいもあって、人間を見ますね。
人間の機微が出ていない作品は、つまらなくて仕方がないのです。近年アメリカ映画はそういうのが多くなってきました。
一昔以上前の「スピード」なんてああいう純サスペンスでも人間の機微が基調にあるから面白い映画になっていたのであり、今は恰好だけでしょ?

>「サラの鍵」
捨てがたい作品でした。

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