映画評「ATM」

☆☆(4点/10点満点中)
2012年アメリカ=カナダ合作映画 監督デーヴィッド・ブルックス
ネタバレあり

ソリッド・シチュエーション・スリラー「[リミット]」を書いたクリス・スパーリングによる脚本。前作の棺桶に代わって今度はATMが舞台である。

北部アメリカ、投資信託会社の社員ブライアン・ジェラティが会社を辞めた同僚女性アリス・イヴを送るつもりが、足もお金もない同僚ジョッシュ・ペックを同乗させる羽目になる。これが運の尽きで、腹の足しにする食料を買う為お金を下ろすという彼を人里離れたATMまで連れて行く。三人中に入ったところで、外で怪しき人物が現れ、眼の前で散歩中の人を惨殺する。恐怖の為外に出られなくなり、その間男が色々と小細工を施すので益々苦境に陥ってしまう。

さあ、三人はどう地獄のATMから脱出するか、というお話で、幕切れの付け方は前年作られたカナダのホラー映画「388」に似ている。ちょっと参考にした可能性はある。

そもそもペック扮する同僚がどうしようもない我儘男で、嫌な予感がするのだが、この脚本で一番阿呆らしいのは、車をATMから遠く止めることである。他に止めるところがないのならともかく、すぐ前に止めれば良いものをわざわざ遠くに止める。ペックも言う「俺に歩かせるのか?」と。後段で主人公たちが簡単に難を逃れられなくする為の設定だが、そこで止まらなければならない必然性を用意しておかなければただの馬鹿らしい設定というだけに終わってしまう。車にさえきちんと乗れれば何とかなる可能性があるのだから全く戴けない。
 携帯電話の扱いも相当不自然。三人もいて結果的に誰も持っていないから助けを呼べない。その後の警報を鳴らす際の大騒ぎも登場人物に誠に知恵がなくがっかりさせられる。

結局、スパーリングが何を見せたかったかと言えば、三人がATMに幽閉状態になってしまう理不尽とジェラティが殺人犯にさせられてしまう不条理(人間の行為が原因であるので理不尽で良いか?)である。

最後にATM内のカメラで録画された映像をまとめて見せることで、犯人がATM内に入って来なかった理由が判るというのは一応のアイデアながら、犯人がいかれた殺人狂か何かとしか推測できないのではとても評価できない。
 シンプルなシチュエーションの代表格「激突!」でも偏執症と推測される犯人に大した動機はないが、ちょっとした怒りが殺意に変わる瞬間を描いて(しかも人間としての犯人を消してしまって)面白いのとは極めて対照的。極限状況にしか興味のなさそうなスパーリングと、多彩なアイデアを持つリチャード・マシスンとの差である。

監督は若手デーヴィッド・ブルックスで、脚本通りに処理しました、という印象。

恐怖映画に登場する一般人物は大概おバカ。尤も実際の人生でこんな目にあった時バカにならないという保証はない。但し、映画と実生活はまた別問題。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2013年12月22日 08:19
『リミット』は面白かったですけどね。
二番煎じは否めないでしょうな~
映画の中ではバカすぎるのは興ざめですな~
幻日正解では、事件現場でVサインをしているバカは大勢おりますがね。
オカピー
2013年12月22日 15:44
ねこのひげさん、こんにちは。

『リミット』も屋上屋を重ねるようなところがあったり、いくつか問題はありますが、一応考えましたなという印象はありました。

>バカすぎる
映画の中では、登場人物がある程度知恵を絞ってくれないと冷や冷やできないですよね。
この程度の作品に☆二つも進呈する僕は、お人好しと言うか、バカすぎるという噂もありますが(笑)

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  • 12-236「ATM[エー・ティー・エム]」(アメリカ)

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