映画評「高地戦」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2011年韓国映画 監督チャン・フン
ネタバレあり

朝鮮戦争に材を求めた韓国映画。トーンが前半と後半とで全く変わるといった、韓国大衆映画固有の粗が殆ど見当たらない戦争映画・反戦映画の佳作である。

2年前からの停戦協議がもたつく間に両軍疲弊してきた戦争末期の1953年、エロックという高地では、両軍が互いに奪還を繰り返し、両軍の間に一種の友情めいたやり取りが続いている。この高地で戦っている部隊に北との内通者がいるのではないかと偵察に送られた韓国防諜隊中尉シン・ハギュンがそうした事実を知り、幾つも事件を見ることで前線の言語を絶する厳しさを痛感させられる。

というのが基本となるお話だが、眼目は、彼の学生時代からの親友コ・スが休戦協定締結の直前に敵の女性スナイパーに殺されて周囲の兵士に無念な思いを味あわせながらも友情めいたシーンを挟んで暫し気持ちを弛緩させた後、「協定が発効する12時間後まで戦え」という非情な通知により空しい戦闘を強要される両軍兵士の、いや増すやるせない気持ちを厳しいタッチで浮かび上がらせることである。

どの戦争の、どの時期においても多くの兵隊は空しさでいっぱいである筈であるから、ましてや戦争が終る(厳密には休戦する)ことが決まったのに紙の上だけの決まりにより戦えと強制される立場の気持ちはいかばかりであろうか。つまらない僅かな境界線変更の為の戦いに過ぎない。即実的な描写により、戦争を始めた者、地図の上で作戦を立てる者、直接領土には関係がないのに将来の利権の為に関与してくるアメリカや中国の上層人が戦えば良いではないか、という兵士の声が生々しく聞こえるようだ。

韓国の戦争映画では「ブラザーフッド」(2004年)と甲乙つけがたい出来映え。

一般国民の出征は暫くないにしても、来年以降、自衛隊がアメリカ軍のお供で中東やアフリカに行って前線で戦うことになりそう。すると、日本もイスラム系テロリストに狙われかねない国になるということだなあ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2013年11月06日 02:42
戦争を知らない世代が出てくると暴力による解決を図ろうとする傾向が出てきますね。
第一次世界大戦の終了は、ドイツ側の疲弊だけでなく連合国側の疲弊により終了したといえます。
それにより新興国であるアメリカの台頭を観たわけで、第二次大戦後に日本が台頭したのは、本土での戦いがなかったことも大きな一因でありましょう。
イスラム諸国も馬鹿な戦争(テロ)を続けている限り成長することはないでしょうね。
オカピー
2013年11月06日 20:35
ねこのひげさん、こんにちは。

>戦争を知らない世代が出てくると
核兵器の発明が昔とは違う心理を為政者に与えているとはいえ、日本の現政権を見ると、どうしてもアメリカと共闘したいみたいですね。昔から犠牲になるのは為政者ではなく、若者ですから、腹が立ちます。
作家の澤地久枝さんは秘密保持法案を「戦時中よりひどい」と言っていますし、今日覗いたあるサイトを斜め読みしましたら「日本は明治時代以前に戻る」と書かれていました。戦争協力だけでなく、TPPなどで不平等を強要されることを指しているようです。

>イスラム諸国
キリスト教もかつてはイスラムと似たようなものだったはずですが、人権への思いが人々の宗教に対する意識をも変えてきて今日の西欧の繁栄があるのだと思います。
日本も儒教的制約を乗り越えて現在に至ったはず。
イスラム諸国でテロリストが生まれる土壌については理解しなければならないと思いますが、その一部には原理主義者が嘘を教え込んでいるという側面もあるのでしょうね。

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