映画評「崖っぷちの男」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督アスガー・レス
ネタバレあり

ひねり方は21世紀の映画らしいが、性格はクラシックなサスペンスである。

元刑事サム・ワーシントンがあるビルの縁に立って自殺をほのめかし、前に同じケースで交渉に失敗したことのある女刑事エリザベス・バンクスを交渉相手に選ぶ。実は彼は脱走した囚人で、この騒動で当局や関係者の気をそらせ、弟ジェイミー・ベルと恋人ジェネシス・ロドリゲスに向かいのビルに保管されている“ある宝石”を奪わせる算段、泥棒冤罪を着せられた宝石を発見することでその冤罪を晴らすのが目的である。

サスペンスとしては飛び降り騒動を陽動作戦にした宝石泥棒が眼目で、ワーシントンの時間稼ぎに始まり、展開が進むに連れ、警備担当を含めた警察側が迫る中いかに犯行を成功させるか、という古典的な時限サスペンスの様相を呈してきてなかなか楽しめる。
 宝石の持ち主である大実業家エド・ハリスがリーマン・ショックでの負債を返す為に警察を交えた強盗事件をでっち上げ、宝石は持っているわ、宝石にかけた保険金が入って来るわで経営を立て直したという変な背景があり、それに巻き込まれたワーシントンが宝石を発見することで無実を証明するというのも実に強引な手法で、とても誉められるお話ではないが、コンパクト(正味97分ほど)でスピーディーに展開しているから観ている間は気になりにくい。本作のようなタイプの娯楽映画はそのくらいの嘘があって丁度良いのだ。

ワーシントンが最初の罪においては無罪になっても新しい罪が幾つかあるし、宝石泥棒の実行犯お二人は確実に逮捕されるはずだが、この手の映画らしくそうした現実的側面に全く拘らない鷹揚さが却って微笑ましい。

無罪を晴らす為なら何をやっても良いというお話。日本にも昔から目的が正しければいかなる行為も正当化される精神論的バックボーンがあるけれど、映画の中だけにしてよね。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2013年11月04日 02:41
エド・ハリスは軍人のほうが似合いますけどね。
むかし、銀行強盗にはいられた銀行の頭取が盗られた現金を水増しして差額をちょろまかすという話がありました。
なんだったかな・・・・・?
オカピー
2013年11月04日 17:28
ねこのひげさん、こんにちは。

>エド・ハリス
江戸に交渉しにやってきたハリスさんを描いた映画は「黒船」ですが、こちらのハリスさん、少々痩せましたね。

>頭取
あったような気がしますが、灰色の脳細胞が限りなく衰えているので、無駄なあがきは止めて考えないことに致します(笑)
突然思い出したら、コメントに残します・・・

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